自分が家相や風水というものに興味を持った一番はじめの時期、やっぱり最初に考えたのは「鬼門」のことでした。
いろいろネットの情報を見たり家相などの本を読んだりして自分の知人の家やネットで確認できる店舗などのことを考えてみた・・・けれどうまく実態として「北東が悪い方位である」と概念には納得ができなかったところで、そこから中国風水に興味が向いていったという自分なりの履歴があったりします。
そんな北東鬼門(あるいは南西裏鬼門)についてかなり本気で自分が調べた内容、考えている内容をまとめた記事を2年ほど前に書かせていただきました。
この記事の結論だけを簡単に書くなら「いま一般に畏れられる鬼門の概念はもともとは古代中国の古典書にルーツを持つものが日本で独自に進化を遂げたもの。すべての物件で北東や南西を一律に凶方位とする概念は現在の中国風水にはない。だけど一部のインド風水などにおいても類似の概念はあるみたいです・・・。」
というような感じ(この本の読後もこの結論そのものに変化はありません)なのですが、2023年にこの記事を書いた当時、じつは「北東鬼門とはいったい何なのか」という根本的な部分について書かれた書籍はただの一冊も存在しておらず、いろいろな論文などを読んだりして鬼門のことを調べてました。「鬼門を避けろ」、「鬼門除けには~が良い」というような発信内容は恐ろしく多かったですし今も多いですのに・・・。
だったのですが、ぼくの記事中でのいくつか引用をさせて頂いた水野杏紀氏が2025年6月に「なぜ東北は鬼門とされたのか」を刊行されており、この本は少なくとも2025年現在では日本で刊行されている唯一の鬼門の専門書といえるだろうと。
Amazon.co.jp: なぜ東北は鬼門とされたのか―古代中国から平安京へ、文化の伝承とメタモルフォーゼ― : 水野 杏紀: 本
水野氏は「鬼門の時間的・空間的考察ー東北はなぜ鬼門とされてのか(東方宗教第111号、日本道教学会、2008年)」「東北鬼門と東アジア的空間構成ー時間に空間を配すー(日本建築学会大会学術講演梗概集、2009年)」、「新井白石『鬼門説』についてー翻刻と注解ー(人文学論集第26週、大阪府立大学人文学会、2008年)」、「学位論文「東北鬼門」観の成立と展開に関する研究ー中国から日本への伝播を踏まえて(大阪府立大学大学院人間科学博士取得、2012年)」など複数の鬼門にかかる論文を執筆されている方で、古典書などの学術的なベースをもって真正面から鬼門の研究にこの水野氏以上に取り組んでいる方は少なくとも自分は知りません。
この本の内容としては、たとえば古代中国、殷の城の中にみられる北東の隅を隅切りした実例や平安京、江戸城などの日本の鬼門の扱いに関する実例の考察、また風水や歴史書のみならず六壬式盤※や易、道教古典などの関連書、また日本からは土御門家の『陰陽方位便覧』や江戸時代の民衆向けの家庭百科『大雑書』などの記述から鬼門がどのように扱われてきたのかを紐解くというものです。
※六壬(りくじん)式盤・・・中国占術には「三式」といわれる占術があり、それは太乙真数(天式)、奇門遁甲(地式)、六壬神課(人式)、を指します。この六壬神課で使用するのが六壬式盤です。ちなみに陰陽道で六壬は重要な技術として扱われていたようで、かの安倍晴明が六壬を使用していたのは有名なお話です。
本の内容についてあえて詳しい引用はしませんが、個人的には「前漢時代の丑時(AM1時~AM3時)と寅時(AM3時~AM5時)は一日一日の境界であり、その時間的境界とリンクする丑寅の方位※は時間の境界と同じく空間的境界としての一面を持つ」という論や、『大雑書』などに見られるなぜ「北東の隅を欠けさせることでその邪を祓うとされるのか」というお話、また「鬼門は≪貴門≫だから丁重に扱うべし」とする土御門家の『陰陽方位便覧』の記述などとても興味深かったです。
※現在は子時(23時~1時)が境界とされてます、ただし一年の境界はいまも丑月(1月5日前後から2月3日前後まで。つまり立春以前です)と寅月(2月4日前後から3月4日前後まで、つまり立春以降)です。
※丑寅(うしとら。=艮)の方位・・・北東です。「丑三つ時」という言葉が午前2時から2時半の間ころを示し、丑寅の方位が北東を示す(あるいは午前、正午、午後という時間区分と子午線という方位の概念などでも同じです)ように、方位と時間はもともと同一の単位で扱われてきたものです。
「鬼門」を扱う発信などをされている方ならこうした知識は持ったうえで発信はしてほしいとこっそり願ってますし、単純に風水や家相といったものに興味がある方や、あるいは自分のサイト記事なんかを読んでみて面白いと思っていただける方ならきっととても読み応えがある内容だと思っていますよ。
それではこの記事はここまでです。あなたの人生に幸多からんことを。
