なかなかにひどい状況が続いているように見受けていたため記事に情報をまとめることすらできていませんでしたが・・・ここにきて朗報があったように思います。

 

 

 高市首相が4月30日の記者会見で、 年明けまでの原油を確保、5月の原油調達は昨年比で6割を確保したとの発表がありました。

 

 とはいえこれまでも再々「問題ない」を繰り返している政府発表のこと。残念ながらそれだけで安心材料にはできません。

 

 ただ、このイラン攻撃以降再々叫ばれてきた「ホルムズ海峡ルート以外の多角化」について、日本最大級の物流ニュースサイト、ロジスティクストゥデイさんが29日に発表している下記の記事が参考になるのだろうと思っています。

 

 

 

 記事を読んでいただくことをまずはお勧めしますが、現状の世界情勢の中で、日本に対して以下の原油供給ルートが見えてきたことを示すものです。

 

①アメリカ産原油

②UAE産原油のホルムズ海峡以外のルート

③出光タンカーのホルムズ海峡経由原油

 

 

①アメリカ産原油

 まずアメリカ産原油ですが、当初想定されていた期間よりも短く35日ほどで日本に到着するものとされ、5月の供給日量換算9万バレル程度とのことです。(・・・この数字そのものは過去の日本の一日使用量は300万バレル程度と思っているため微々たるものではありますが・・・?ある程度のレベルまでは今後の上昇も見込めるのかもしれません)

 

 ただしアメリカ産原油は性質がかなり中東産のものと異なるためこれまでどおりの使用法ができないなどの難点などは免れないようです。(同じく、アメリカ産のシェールガスから生成されるナフサ代替物についても先日「アメリカから中国に」大量のエタンを輸出との報道が出ています。シェールガスについては日本では対応施設がないために代替が難しいような)

 

↑4月28日Japan Luggage Express「アメリカ産石油の品質」

 

↑4月20日エネルギーワールド(元記事ブルームバーグ)「イラン戦争は供給の衝撃の中で中国のニッチガス供給への依存を深めるー米国のエタンの出荷量は4月に過去最高となる80万トンに達する見込みで、これは月間平均より約60%高い数字となる」・・・少なくとも現在のトランプ政権は中国を敵国としてでなく、交易国として扱っていると自分には見受けられます

 

 

 

②UAE産原油、ホルムズ海峡以外の中東ルート

 こちらについては、5月1日発効のUAEのOPEC離脱(詳述は避けますが、これまでのドル建て原油取引体制(≒ペトロダラー体制)の転換も含めて中東の石油供給網の再編に近いものかと考えてます。影響は知識不足の自分には予測しようがありませんため「信頼のできる」専門家の予測を探していただけたら)によってそれまで抑えられてきたUAEの原油産出量

が増えることを見込む中で、それがホルムズ海峡を越えた先にあたるフジャイラ港や紅海側のヤンブー港経由のルートによって原油輸送のルートが見込める(ただし原油の日本への輸送可能量は不明)とのこと。

 

 UAEもサウジアラビアも、親アメリカ政権だと自分は見込んでおり(ただしOPEC離脱はサウジとUAEの仲たがいも背景にありそう)、2月にはUAE大統領来日予定に選挙をかぶせて予定をキャンセルさせたことや、3月にはイスラム諸国(40か国以上?)との晩餐会、イフタールを高市首相が風邪疑いで欠席していたことなどの経緯がありましたが、それでもなお先日UAEの駐日大使が「日本に対するエネルギー安全保障の取り組みは常に最優先事項だ」と述べてくれていた経緯があり・・・(ただし、UAE駐日大使からのイランに対するスタンスは変わらず「非難」です。このあたりUAE側に与することはイランに対する日本政府の心象を悪くするものであることは間違いはないのかと。)

 

↑2月2日ヤフー記事(日テレニュース)「【独自】UAE大統領の国賓訪問延期へ 2月8日から来日し天皇陛下との会見や宮中晩さん会、高市首相との会談などの予定だった」

 

↑3月12日産経新聞「高市首相、風邪の疑いで食事会などの公務を取りやめ 公邸で医務官の診察受ける」

 

↑4月23日ヤフーニュース(テレ朝ニュース)「UAE大使 原油輸出減も「日本が最優先」 イランの海峡封鎖は「経済的テロ」」

 

 とはいえ、こちらの紅海ルートもイエメンのフーシ派による攻撃などの可能性が否定できない状況下で3月には商船三井の三井社長が「イラン戦争の終結まで紅海ルートの航行は困難」との見通しを示していたこともあり、先行きはまだまだ不透明です。

 

↑3月26日ブルームバーグ「商船三井社長、紅海配船はイラン戦争終結まで困難-攻撃リスク上昇で」

 

 

出光タンカーのホルムズ海峡経由原油

 

 出光興産は、過去記事にも少し書いた通り「海賊と呼ばれた男」出光佐三氏が創始者です。

 

 第二次世界大戦後のイランはイギリスの影響下にあったものの、石油資源の販売利益がイラン国内に還元されない状況の中で石油資源の国有化を宣言しました。それに激怒したイギリスが、「イランの石油の買付に来たタンカーは撃沈する」とイギリス海軍をホルムズ海峡に展開していた中で出光佐三氏がイラン原油を買い付けて世界を驚かせた日章丸事件と呼ばれる出来事がありました。

 

 そしてイランは今も親日国として知られ、かつ現在の世界情勢でどんどん存在感を増しているアラグチ外相はかつて駐日イラン大使を務めてみえた人物であり、東日本大震災の折などにはイランからの救援物資の手配などのみならず、自ら食糧配給の現場に立っていたことなどでも知られます。

 

 そうした経緯の中でイランから再々、「アメリカとイスラエルにさえ追従しなければ日本向けの輸送は認めるつもりだ」との呼びかけを受けていたと自分は認識をしておりますが、その呼びかけに対しては日本政府は一切の対応をしないどころかイランのホルムズ海峡封鎖を非難していたというのが自分の見えていたところでして・・・(前岸田首相がイランとの関係を継続していることなどはありますが具体的な結果に結びついたかどうかは不明です)

 

 そうした状況下で出光興産のタンカーがホルムズ海峡を通過していることはいまの日本にとってとてつもない救いのように感じます。現場で調整していた方々やタンカーに乗っている方々の苦労を考えるととんでもないことだと思います・・・

 

 このイラン経由の原油については「ホルムズ海峡経由の原油に最適化されている」日本の施設での使用がかなり容易だと思われる(ただし一度止めた施設の再稼働には問題等もあるそうです)ため、ほんとうにありがたい状況だと感じます。

 

 ちなみに、一部報道等で「政府の外交努力によって出光タンカーがホルムズ海峡通過」という文言が散見されますが、イラン駐日大使が「日章丸の恩義」を強調していることと、GW中に首相をはじめとした閣僚11名が計海外21か国(高市首相はベトナムとオーストラリア、茂木敏充外相はケニアなどアフリカ4カ国、林芳正総務相はベルギーなど欧州3カ国、小泉進次郎防衛相はインドネシアとフィリピン、片山さつき財務相はウズベキスタン)に外遊しますが、その中に中東が含まれているとの情報は見たことがありません。

 

(そもそも表立って見えていた部分では、日本政府はずっとイランに対してホルムズ海峡封鎖の非難をしていたことしか自分は知りません・・・)

 

↑3月30日ヤフーニュース「中国はイラン攻撃を非難し停戦を求め、日本はイラン攻撃を非難せずG7にホルムズ封鎖非難声明を出させる」

 

↑4月29日テレ朝ニュース「出光タンカーがホルムズ海峡を通過 超大型、サウジ原油約200万バレル積載か」

 

↑4月29日駐日イラン大使館X(旧ツイッター)

 

 

 ・・・というところでして、こうした状況をまとめて考えてみても冒頭の6割確保、という高市首相の今回の発表にはそれなりの信頼性があるのではないかと自分は考えています。(それが実質は6割なのか5割なのか4割なのかはさておき)

 

↑5月1日ロジスティクストゥデイ「高市首相がナフサ由来品「年越し供給」を表明、実像は」

 

 

 ただ、言うまでもなく各業界に対する今回のイラン情勢からのダメージはまだすべてが判明しているわけですらなく、「供給原油量半分」という状況がもたらす実際のダメージがどうなるのかもわかりません。

 

 また現状でも数々の報道がナフサ不足からの日々の生活必需品の窮乏を訴え始めていますが、それが6月から本格化してくるのではないかとの見込みを示す専門家も少なくないこと、またそうした中で中国からのプラスチック製品などの輸入拡大(このあたりはアメリカからのエタン輸入の経緯もあるのでしょう。ただしシンナーなどは軍用途に使用できうるため中国からは輸入できず)といった動きも見え始めています。

 

↑4月25日東京新聞「ナフサ不足「このままでは6月に詰む」と公言した識者が真意を明かす 政権が反論や対策アピールしても現状は」

 

 

↑4月29日日経新聞「デンソーや豊田合成「ナフサ6月から懸念」 トヨタ系部品に中東リスク」

 

↑4月29日日経新聞「ナフサ不足で中国化学品の輸入急増 プラ原料3割増、6年ぶり品目も」

 

↑4月20日ヤフーニュース(福井新聞)「福井県立病院、重油調達綱渡り 入札不調、緊急の随意契約で在庫確保 テクノポート福井浄化センターも」

 

↑4月14日日経新聞「中東危機で市バス燃料が入札不調、下水処理にも波及 名古屋や横浜で」

 

↑4月24日ロイター「戦争・干ばつ・援助縮小が飢餓助長、食料不安が世界の安定に影響と国連機関」

 

 

 

 アメリカとイスラエルのイラン攻撃、レバノン攻撃などが始まって以降2か月たって日本の実際の生活にここまで影響が見えてきたものなら、どう考えても回復には大きな時間がかかることは明白なもので。

 

 そして、なによりも、今回のオイルショックはアメリカとイスラエルがイラン側のきちんとした同意を得て終戦合意に至るまでは先の見通しが立たないものだと考えています。日本さえ原油を確保できたら問題ないわけはないんですよね。(そもそも日本の食料は輸入に頼りきりですから)

 

 ただそれでも、かなり低いレベルではありますが少し状況が改善に向かっている(あるいは底の底まで行きつくことはなさそうかも)というような希望のもてるニュースを久々に見た気がします。

 

 早くアメリカとイスラエルが終戦に向けた動きを見せてくれますよう、日本政府がそれに向けた適切な対処を取ってくれるようにと切に願います。

 

 最後に少しふれておきますが、この状況下で日本が軍事化などを進めればいま以上にひどい状況が数年続くものだと覚悟する必要があるのかなと自分は考えます。

 

 日本が戦争をした結果国内で餓死者が多数出たのが第二次世界大戦下の日本であって、その時代よりも食料もエネルギー資源も輸入に頼り切っているのが今の日本です。