イエスセット | 地下の印刷室(サラリーマンの戦い・諦めたらそこで終わり)

地下の印刷室(サラリーマンの戦い・諦めたらそこで終わり)

突然、今までの経験に関係なく、大学の印刷室に異動となった。
通常、人事異動は、4月と10月と決まっている。
なのに、異動が発令されたのは、9月1日の人事異動だった。
これから始まる戦いは、事実に半分基づき、後に引けないサラリーマン人生を語るものである。

今日も相変わらず暑い日が続いている。

まだ、早朝だと言うのに、暑い。

朝礼後すぐに、朝9時過ぎに、ペンシロエに出向いた。

 

ペンシロエの入口で、顔を覗けると、担当の北村さんが、すぐに立ち上がって、私を打ち合わせテーブルの方へ案内してくれた。

座るまもなく、担当課長の水島さんが、手帳を片手に不機嫌そうな顔をして現れた。ただ笑顔のない顔で普通の表情かもしれないが、私には不機嫌のように思えた。

「朝早くから、お時間を頂戴し申し訳ありません。」

そう言って、水島さんが座ってから、正面から少しずらして座った。

「今日も暑いですね。」

(とにかくお願いをするときには、相手からYESを沢山もらってから本題に入らないといけない)

「印刷室への入口のICカードは、酒田さんがお借りしているものをそのまま、私が利用するということで、よろしいでしょうか?」

「そりゃ、構いませんよ。後で管理番号の一覧を変更してメール下さい。」

「ありがとうございます。それから、報告会は、今まで通り、月初の5日までにご都合を確認の上させて頂きます。」

「はい。それで、問題ないです。」

水島さんは、雑談が好きじゃなさそうなので、早いけど本題へ進むことにしよう。

「確認ですが、印刷室の隣の部屋ですが、何かご利用の予定はあるのでしょうか?」

「ええ、急に部屋を準備するように言われることがあるので空けてあります。」

「最近は、そのような利用はないのでしょうか?」

「そうですね。」

さて、ここからが本題です。確実に「YES」を取ってきた。小さな「YES」で十分である。

「相談なんですが、あの部屋を私どもで利用させていただいてもよろしいでしょうか?もちろん、終業しましたら、元の状態に戻します。それから、突然の利用があれば利用は差し控えます。」

「まあ、こちらで利用することが決まれば、すぐに開放いただけるのなら、構いませんけど。」

その後、ここ1年間は、利用していないことを知っている私としては、ペンシロエとして断る理由がないことは分かっている。

結局、ペンシロエが、「使わないでもらいたい」と当初話をして、我々が、その言葉を守っていただけに過ぎなかった。

営業テクニックの「イエスセット」に則って商談したが、意外と、簡単にOKをもらった。

(イエスセットとは、肯定的な回答が返ってくることが予測できる質問を繰り返し、最終的に合意してもらいたい本題を投げかけ最終的に本命の「YES」を獲得するというものである)

 

その後、現場を担当の北村さんに見てもらい、最終的な利用許可がでた。

 

さて、場所は確保できた。次にどうする。