福島の子供たちの現状。お母さんたちの悩み。最終回 | ロスからの声

ロスからの声

物足りないロサンゼルスについて書いています。

疎開などという言葉がこのように使用される事に
なるとは。

集団疎開の提案。

福島エクソダス~原発事故は何をもたらしたのか~





【第4回】「学童疎開」の実情と論理





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何事もないかのように家族連れでにぎわう郡山市内のショッピングモール店内(筆者撮影)



 逃げるに逃げられない子どもたちがいる中で、注目されるのが6月下旬に郡山市で提起された前代未聞の「学童集団疎開」訴訟だ。遺伝子組み換え
(GM)作物の裁判を手掛けた弁護士グループが「放射能は遺伝子に影響する同じ問題」と、同市内の親たちの相談に乗る中で、市教育委員会を相手取り、市内
の児童生徒14人について毎時0.2マイクロSv(年換算1ミリSv)を下回る環境下で教育活動をさせるよう仮処分を求め、福島地裁郡山支部に申し立てた
ものだ。
(時事通信社国際室・山本俊明)




安全に教育を受ける権利




 原告の柳原敏夫弁護士は「国は『暫定的考え方』を事実上撤回しながら、年間1ミリSvを超えることが明らかな学校の児童生徒を避難させようとしない。言行不一致を問いたい」と狙いを明らかにする。



 行政訴訟ではなく、民事、しかも仮処分請求した理由は、「暫定的考え方」は国家権力の行使である「処分性」を意図的に薄めて、裁判所が「門前払
い」できるようにしている仕掛けが見え隠れしていたので、いじめ問題で判例の積み重ねがある民事、しかも子どもたちを救う上でスピードが求められるため仮
処分という異例の形態を取ったと解説してくれた。



 法律の論理としては、まず憲法26条1項の「すべての国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する」により、「安全に教育を受ける権利保障」が含まれることが大前提となる。



 具体的な法律としては、学校教育法12条(学校においては、別に法律で定めるところにより、幼児、児童、生徒及び学生並びに職員の健康の保持増
進を図るため、健康診断を行い、その他その保健に必要な措置を講じなければならない)で、児童生徒と保護者は「適切な保健措置」を講じるよう求める権利が
ある。



 また、児童の権利に関する条約(第3条1項)でも「児童の最善の利益」が考慮される必要があると規定されている。


子どもの生命を守るため





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野球場の外で取材に応じるティーンエイジャー(一部画像処理しています)(筆者撮影)




 これを受けて、国と地方公共団体は「児童生徒の生命・身体・健康を守るために必要な措置を取る『安全配慮義務』」を負うことになる。



 さらに学校教育法では「区域内に学齢児童を就学させるに必要な小学校(中学も準用)を設置」する義務があるとされるが、文科省は「やむを得ない場合には区域外に設置することが可能」という例外を通達(昭和34年4月23日付、初中局長回答)している。



 郡山市の原告が通う学校では、3月12日から5月25日までで既に3.8~6.67ミリSvに達しており、児童生徒の生命・身体・健康に重大な影響を与える状況であり、「やむを得ない理由」に当たる。



 原告側は、地方公共団体の費用により、早急に「危険地域外に学校ごと移転させて学校教育を行う、すなわち集団疎開措置を講じる」ことでしか子どもの生命・身体・健康を守ることができないと結論づけた。



 争点を簡明にするため、外部被曝(ひばく)だけを俎上に載せ、争いのある内部被曝の可能性をあえて外している点も特徴的だ。



 柳原弁護士は「原告の請求が認められれば、差別的取り扱いの禁止から事実上、他の児童生徒にも効果が及ぶことになる。裁判所には真剣に子どもたちのことを考えていただきたい」と語る。


福島エクソダス~原発事故は何をもたらしたのか~







友達も全員一緒に





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自宅の外で放射線を測定する主婦と見つめる子どもたち(一部画像処理しています)(筆者撮影)




 今回、取材に応じてくれた親たちも「自分たちの子どもは県外に一時出られるチャンスに恵まれたが、本当は友達も全員一緒に集団疎開できたら一番良い」という立場だ。



 「中高校生は学校が開いていると友達と離れたくないことや、クラブ活動があり、自分だけ逃げたくない」という事情もあり、国や地方公共団体が避
難を決めない限り、結果的に残留という選択につながるケースもある。首都圏に一時避難したが、再び戻った事例もある。福島地裁郡山支部がどのような判断を
下すのか注目される。





「黒い雨」と「白い雪」




 ある人は「原発事故の直後、福島では情報がなく、給水車を待って高い濃度の放射性物質の含まれた雪が降る中を、親子が何時間も外で何日も待っていたんですよ。福島県民の怒りを分かってほしい」と語り、避難は当たり前と訴える。



 ヒロシマでは「黒い雨」(井伏鱒二)だったが、フクシマでは「白い雪」が人々の被曝への恐怖をかき立てる。



 エクソダスは、旧約聖書に書かれたエジプト王による子殺しなどさまざまな弾圧からイスラエルの民が逃れた大脱出劇だが、決して楽な旅ではなかっ
た。福島の子どもたちが脱出できたとしても、彼らに苦難と試練が待ち受けているのはほぼ確実だ。日本社会の在り方が問われている。


時事通信の記事の転載です。
貴重な報道に感謝いたします。















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