福島の子供たちの現状。お母さんたちの悩み。その2 | ロスからの声

ロスからの声

物足りないロサンゼルスについて書いています。

福島の子供たちも家族も普通の夏休みを
過ごす予定だった。

避難する家族、出来ない家族の差が生まれて行く。

現実を知らないデスクの上で作られた避難基準。

家族の生活に変化が生まれて行く。

前回の記事はこちら

【第2回】夏休みだけでも避難の願い

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爆発後の福島第1原発3号機原子炉建屋(東京電力提供)

 文部科学省は当初、年間20ミリSvまでなら福島の学校の安全に問題ない(4月19日付「福島県内の学校の校舎・校庭等の利用判断における暫定 的考え方について」=以下、「暫定的考え方」=注)としていた。しかし、その後、親たちの猛反発を背景に市民団体「子どもたちを放射能から守る福島ネット ワーク」などとの5月下旬の話し合いで、「『20ミリシーベルトまで放射線を受けてよい』という基準ではありません」と、ようやく低減化に努めることを確 認した。
(時事通信社国際室・山本俊明)

1万人超の子どもが脱出

 福島県では既に、児童の「自主避難」という名の事実上の脱出が進んでいる。同県によると、児童生徒数は、平成22年度の学校基本調査報告(5月 1日時点)では約27万人だった(今年度の調査は大震災の影響で行われていない)が、文科省などによると、今年5月1日までに県外に転学した児童生徒は計 9998人に達している。

 県教育庁のデータによると、5月1日現在で、県外に転出したと確認された小学生は5785人、中学生は2014人という。学校経営支援課は「このうち9割は被災地の子どもたちではないか」とみている。

 福島県の人口推計統計(年齢階級別移動者数)でもう少し細かく実態を見てみたい(表、注=昨年秋の国勢調査の影響で2010年9月のデータは欠落。11年4月が最新データ)。

 それによると、県外流出は11年3月と4月で0~4歳が416人と713人。幼稚園から中学2、3年までの5~14歳の児童生徒ではそれぞれ 1056人と1069人。3~4月は平年でも転勤族の移動があると思われるが、震災前の前年同時期と比べても県外への流出は顕著と言える。

 15~19歳は高校卒業後に県外への進学や就職があるのか、超過分では変わらないように見えるが、実数でみると、11年3月は流入が96人に対して、流出が1698人、4月も流入196人に対して流出は1393人で、圧倒的に流出が上回っている。

 10年3月、4月は流入がそれぞれ243人、432人と3ケタを記録しており、原発事故後の子どもたちの県外「脱出」が数字の上で裏付けられた格好だ。


福島県県外人口流出入状況(福島県人口調査結果から作成)

転入から転出を引いた超過分

年 月 総 数 0~4歳 5~14歳 15~19歳 20~24歳
2010年 3月 -5566 -126 -315 -2095 -1787
2010年 4月 855 100 155 -321 34
2010年 5月 14 34 11 -70 -79
2010年 6月 -181 6 2 -36 -74
2010年 7月 -555 -33 -96 12 -170
2010年 8月 -6 58 0 -26 -105
2010年 9月




2010年10月 205 78 8 14 8
2010年11月 -128 7 5 -21 -111
2010年12月 -137 -27 -23 5 15
2011年 1月 -186 10 21 -32 -188
2011年 2月 -420 -27 -37 -41 -227
2011年 3月 -7773 -416 -1056 -1062 -1903
2011年 4月 -7477 -713 -1069 -1197 -882

 (注)10年9月分は国勢調査のため欠落


自主避難という二重基準

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取材に応じる夫妻(プライバシー保護のため一部画像処理しています)(筆者撮影)

 文科省や福島県教育庁は「親の判断で子どもたちが自主避難するのはご勝手にどうぞ」というスタンスだが、ここには「落とし穴」がある。「逃げたくても逃げられない」という現実だ。夏休みだけでも県外へ一時避難という「流行」ともいうべき現象が起きるには理由があるのだ。

 一時的に子どもを県外か放射能濃度の低い県内地区に避難させようとしている家族の例だ。会社員の山川悟さん(42)、妻の恵子さん(39)夫妻=仮名=宅を訪問した。夫妻には2人の小学生がいる。近所では一時、高い放射線量が測定された。

 恵子さんは「仕事を辞めて県外ということも考えたが、主人の年齢では県外で新しい仕事を見つけ、現在のような収入は得られないでしょう。住宅 ローンの支払いもあるし。近所は皆そうだ。私も看護師で、介護の仕事をしており、お世話をしているお年寄りを置いていけない」と、家族そろっての脱出を断 念せざるを得なかった訳を話した。

 「毎日、放射能の影響について不安で何とかしないといけないと思い、知り合いから情報をもらい、子どもを一時的に疎開させるプログラムがあることを知ったので、飛びついた」のだという。

 夫妻は「誰も経験したことのない状態だから、家族が一緒にいることも大事だと考えたが、少しでも子どもの被曝(ひばく)リスクを下げてやりた い。(1986年の)チェルノブイリ原発事故の時は、短期でも転地によって放射性物質が体外に出るとともに精神的にストレスから解放され、健康を取り戻せ たと聞いて決心した」と話し、長女を9月中旬までイタリアに国外脱出させ、次女は夏休み中、北海道にショートステイさせる計画だ。

 一方、児童ら約500人の県外脱出を支援している「ハーメルン・プロジェクト」の志田守代表(60)は「県教育庁に何度も電話し、避難のことを 聞いた。その中で担当者に『あんたは子どもはいるのか。避難させないのか』と聞いたところ、5人中3人がもう避難させたと答えた」と語った。

 「役人は、公式には(「暫定的な考え方」を根拠に)避難しなくても大丈夫と言いながら、自分の子どもだけはしっかり避難させている。これが現実 ですよ」と憤懣(ふんまん)やる方ない。「中には母親が子どもを連れて逃げるために、離婚する家庭も増えているようです」と明かしてくれた。

 経済的社会的優越者やチャンスに恵まれた子どもは県外脱出や一時避難ができるのに、そうでない「弱者」は残留するしかないのが現実だ。原発震災 で日ごろ見えなかった「経済的社会的格差」が子どもたちにも顕在化しているのだ。福島の学校では、安全なので避難する必要はないという建前と、自主避難は OKという「ダブルスタンダード(二重基準)」が堂々とまかり通っているのだ。

(次回へ続く)

※お断り=取材に応じて下さった方々の保護のため、一部の方を仮名扱いとします


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