これは随分と変わったバンド名だなあ、と最初思った。72年にラジオから流れてきた1曲のアップテンポのナンバー。曲の中で繰り返される「ドゥールル。ドゥールルル。ラン、ラン、ラン」というフレーズが妙に耳に残った。これがジョ・ジョ・ガンのデビュー・シングル「ラン・ラン・ラン(Run Run Run)」だった。そして、そのファースト・アルバムがこの「ジョ・ジョ・ガン(Jo Jo Gunne)」。

ジョ・ジョ・ガンというバンド名は、チャック・ベリーの58年のヒット曲「Jo Jo Gunne」から取ったらしい。このファースト・アルバムのジャケットに写った4人のメンバーたちは、如何にもと言った感じのアメリカの不良(?)のお兄さんたちだ。バンドは1971年にロサンジェルスで結成された。中心となった二人はキーボードとヴォーカルのジェイ・ファーガスン(Jay Ferguson 1947-)とベースのマーク・アンデス(Mark Andes 1948-)。この二人がそれまで在籍していたスピリット(Spirit)というサイケ・バンドを脱退した後、作ったバンドがこのジョ・ジョ・ガン。他の二人のメンバーはマーク・アンデスの弟でギターのマット・アンデス(Matt Andes 1949-)とドラムスのウィリアム・スミス(William Smith 1952-)。そして前述のシングル「ラン・ラン・ラン」は全米27位まで上がるヒットとなった。彼らのサウンドは正統派のハード・ロックという感じだが、カントリーやソウル、ブルースのなどからの影響も感じさせる。

 

本アルバムにはヒット曲「ラン・ラン・ラン」を含めて9曲収録されているが、そのうち6曲がジェイ・ファーガスンの作品。残りの3曲がマット・アンデスとジェイ・ファーガスンの共作と形となっている。特にファーガスンの単独作からは様々な音楽のルーツを感じる。また8曲目の「テイク・イット・イージー(Take It Easy)」はアンデスとファーガスンの共作だが、これ1曲だけは強烈にブルースの息吹を感じる。しかしながらデビュー・アルバムとしては非常に纏まっていて、非常に聴きやすいアルバムだと思う。

 

彼らはその活動中に4枚のアルバムを発表しているが、正直言えば大きな成功を収めることは出来なかった。デビュー・シングルの「ラン・ラン・ラン」こそ全米27位まで上がったが、残念ながらこれが彼ら唯一の全米40ヒットとなってしまった。非常に個性的なバンドだっただけに、大きな成功を収められなかったことは彼らにとっても非常に残念だったことと思う。