予約していた、大瀧詠一師匠の「EACH TIME 40th Anniversary VOX」が3月21日にリリースされ、早速ゲットしました。とはいえアナログ再生環境のない僕にとって、2枚のLPは再生しようがないので、お目当てはCDとブルーレイです。それで25,000円というのはいかがなものか、というのは置いといて。

 大滝詠一師匠のアルバムとしては、「A LONG VACATION」に次ぐメロディ・タイプのアルバムですが、僕の好みとしてはこの「EACH TIME」の方です。そして注目のCD1の「40th Anniversary Version」について。手に入れる前は単なるリミックスだと思っていたのですが、これが大きな間違いで、また新たなヴァージョン違いが増えてしまった、ということです。しかしこれはこれで素晴らしいと思いました。

 

 「EACH TIME」といえば、レコード・コレクターズ誌4月号の記事「EACH TIMEリリースの変遷を追う」にも明らかなように、リリースの度に曲が削除されたり、加えられたり、収録曲順が変わったり、ヴァージョンが異なったりを繰り返してきましたが、この「40th Anniversary Version」が最終形態となるのでしょう。しかしながら僕はやはり一番最初のオリジナル・ヴァージョンの印象が強いですね。ですのでこのオリジナル・ヴァージョンがブルーレイでハイ・レゾ収録されているのは得点が高いところです。加えて「EACH TIME Single VOX」と「Singles + Rarities」がハイ・レゾ化されているのも納得の行く部分ですが、肝心な「40th Anniversary Version」がブルーレイに収録されていないのは、画竜点睛を欠く部分ですよね。ブルーレイには5.1チャンネル・ミックスも収録されていますが、これは40th Anniversary Versionではないですから、「Karaoke」を入れるよりはやはり「40th Anniversary Version」をブルーレイに収録して欲しかったところです。

 

 大滝詠一師匠が天に召されてから10年余り。ようやく師匠の残した財産の最後のピースが埋まったようなリリースではありましたが、それだけにこのVOXのコンテンツはもう少し充実して欲しかった、というのが正直なところです。

 

 しかしCD2に収録されている故井上大輔のラジオ番組(僕は初めて聞きました)の大滝師匠の話は目から鱗でした。特にヴォーカルに20トラックぐらい使っている、Single VOXを12インチにしたのは7インチより音が良くなる、特に外側の方だけを使う、という部分はさすがに音にこだわる師匠だけあるな、ととても感心した部分です。ヴォーカルも夏に歌うのと冬で歌うのとでは違うので、1曲の中でいろいろな季節に歌った部分が含まれているとの話は、ある意味驚愕しました。そこまでこだわって一枚のアルバムを仕上げているからこその完成度だと思うのですが、それでもこのアルバムのように再リリースの度に中身が変わるということは大滝師匠がご存命ならば、50th Anniversaryの時はまた異なる中身でリリースされる可能性もあったのでしょうね。ま、こちらも50周年の時は命があるかどうかは分かりませんが。

 

 さて次はキャメルの32枚組ボックスについて書きたいのですが、いろいろあってまだ聞いている途中ですので、時間つなぎで他のアルバムを取り上げるかも知れません。それはまた。

 ようやく時間が取れましたので、約2か月振りのブログ更新です。この2か月の間にCamelの32枚組ボックスや大瀧詠一の「Each Time」の40周年記念VOXなどがリリースされましたが、それらについては後程書くことにして、今回は前回言っていた通り、ライヴ・アルバムを一つ取り上げたいと思います。

 

 もう既に過去のバンドになってしまいましたが、僕の大好きなプロコル・ハルムのライヴ・アルバムを取り上げます。ブログのタイトルは字数の関係から省略していますが正式なタイトルは「Procol Harum Live: In Concert With The Edmonton Symphony Orchestra And Da Camera Singers」です(長い)。

 本アルバムは1971年11月18日にカナダのエドモントンで収録されたもので、オーケストラとクラシック合唱団との共演アルバムです。収録されているのは5曲。B面はセカンド・アルバムで発表された18分の大作「In Held ’Twas In I (邦題:神秘なる東洋の世界)」1曲のみが収録されています。

 

 当時のプロコル・ハルムのメンバーはピアノとヴォーカルのゲイリー・ブルッカー(Gary Brooker 1945-2022)、ギターのデイヴ・ボール(Dave Ball 1950-2015)、ベースのアラン・カートライト(Alan Cartwright 1945-2021)、ドラムスのB・J・ウィルソン(B.J. Wilson 1947-1990)、オルガンのクリス・コッピング(Chris Copping 1945-)、そして作詞のキース・リード(Keith Reid 1946-2023)の6人。こうしてみるとこの時のレコーディング・メンバー6人のうち、既に5人が鬼籍に入っているんですね。そうですよね、既にレコーディングから52年以上経過していますし、時間の経過は時に残酷です。

 

 しかし本アルバムは素晴らしいの一言です。オープニングの「征服者(Conquistador)」はシングル・カットされて、米国ビルボード誌で16位となるヒットを記録しています。アルバムも彼らのアルバムとしては破格となる、全米5位を記録します。彼らの音楽性を考えるとやはりオーケストラとの親和性は抜群ですが、オーケストラのアレンジはメンバーのゲイリー・ブルッカーが行っています。僕がこのアルバムを手に入れた当時、その「Conquistador」のシングル盤は日本では発売されませんでしたが、そのB面にはアルバム未収録の「ラスカス・デルフ(Luskus Delph)」のライヴ・ヴァージョンが収録されていました。今は2018年にEsoteric Recordingsからリリースされたヴァージョンにボーナス収録されています。

 

 今はもう過去のバンドになってしまって悲しい限りですが、今でも本アルバムを聴くと当時中学生だった頃の自分が蘇ってしまいます。本当に素晴らしいバンドに出会ったな、感謝するばかりです。

 私のブログの読者の皆様、明けましておめでとう御座います。2024年です。何やら元日から能登の方で大きな地震があったり、羽田空港で航空機が炎上したりと、何かと正月気分を楽しむ状況ではありませんが。平常心を取り戻して今年も拙い私のブログをよろしくお願い致します。

 

 さてライヴ・アルバムを取り上げる前に、"Eternal Grooves"からストーンズの公式録音を全て録音年代順に網羅すると銘打った『The Complete Stones』シリーズの最初の2枚がリリースされましたので、紹介します。題して『The Complete Stones #1』と『The Complete Stones #2』です。

 

 こちらが『#1』のジャケットです。

 これはいい写真ですね。6人目のストーンズ、イアン・ステュワート(Ian Stewart 1938-1985)が写っているごく初期のストーンズの写真です。皆若いですね。恐らくビル・ワイマンとイアン・ステュワートを除いては、まだ10代だと思われます。この写真だけで、このCDは買いかも知れません。

 

 『#2』のジャケットはこちらです。

 こちらは64年~65年頃のストーンズですかね。いずれにせよ、この「Eternal Grooves」のストーンズは意外と珍しい写真をジャケットに使うので、その点では資料性が高いと言えます。

 

 さて内容の方ですが、様々なアウトテイクやオフィシャル・テイクを本当に録音順に収録しています。アウトテイクはこれまで海賊盤に収録されていた中ではベストに近い音質で収録されていると思います。さてオフィシャル・テイクですが。本当にオフィシャル・テイクです。若干ユニバーサル・ミュージックからリリースされているオフィシャルCDと比較すると、ヒス・ノイズが多いような気がします。このCDの批判をするわけではありませんが、正式にライセンスを取ったのではないと思われます。

 

 著作物には著作権と著作隣接権が設定されています。制作物の著作権に関しては現在は制作されてから70年になっていますが、以前は50年になっていました。著作権は制作された年の1月1日から起算されますから、50年とすると例えば今日現在では1973年に制作されたものは著作権が切れた、ということになります。昨年だかピンク・フロイドの72年のライヴが期間限定で配信されたり、ストーンズの69年の録音が2019年暮れに一時的に公開されたのはこの辺りが影響していると言われていました。

 

 著作物に関して著作権保有期間が切れると、パブリック・ドメインとなって誰でも使用することが可能となります。10年程前に昔のディズニー・アニメのDVDがディズニー以外の会社から500円程度で売られたことがありましたが、あれが正にパブリック・ドメインで、画質はディズニー版とは雲泥の差がありました。当時リリースされたパブリック・ドメインのDVDは画質が劣るだけではなく、クレジットが一切省かれていました。さすがにパブリック・ドメインを扱う会社はクレジットを省かざるを得なかったものと思います。

 

 さて今回のCDの場合、恐らく正規にライセンスを取得したものではないでしょう。パブリック・ドメインとして利用していると考えられますね。ところでこのシリーズ、既に#3と#4が今月末にリリースされることが告知されています。私の現在の興味は一体何処までこのシリーズを続けるのでしょう、ということです。恐らくDecca時代まで、つまり69年ぐらいまでは続けるのではないかと予想していますが、果たしてどうなるのでしょう。興味は尽きません。

 

 ところでビートルズの記事で分からない、としていたMALについて、「レコード・コレクターズ24年2月号」の別の記事に出ていました。MALとは"Machine Assisted Learning"の略だそうです。つまり機械を使って学習させる、正にAIのことですね。

 

 さて次はライヴ・アルバムを取り上げます。

 今年もこの季節がやってまいりましたね。本当は何かのライヴ・アルバムを取り上げようと思っていましたが、クリスマス・イヴになったので、今回も恒例のクリスマス・アルバムを紹介しようと思います。と言っても、そろそろネタが尽きていますので、今年が最後かも知れません。

 

 今年もシカゴのクリスマス・アルバムが出ました。といっても今回のはこれまでリリースした中のベスト、という位置付けです。シカゴは1968年デビューのベテラン・ブラス・ロック・バンドですが、このベスト・アルバムの前に3枚(実質的には4枚)のクリスマス・アルバムをリリースしています。

 

 彼らが一番最初にリリースしたクリスマス・アルバムは98年にリリースした『Chicago XXV: The Christmas Album』です。このアルバムには14曲収録されていましたが、その後6曲の新録音を加えて03年に『What’s It Gonna Be, Santa?』というタイトルで再リリースされました。そのジャケットはこちら。

 これには「White Christmas」「Silent Night」「Sleigh Ride」などのスタンダードに加え、トラディショナルやシカゴのオリジナルのクリスマス・ソングなどが収録されています。

 

 次のクリスマス・アルバムは11年にリリースした『Chicago XXXIII: O Christmas Three』です。

 このアルバムは14曲入りで、前作クリスマス・アルバムには収録されなかったスタンダード曲や割とマイナーなクリスマス曲などが入っていますが、1曲だけ65年のアメリカ映画、名作ミュージカルの『Sound Of Music』から「My Favorite Things」が収録されているのが目を引きます。

 

 続いて19年にリリースしたのが、『Chicago XXXVII: Chicago Christmas』です。

 さすがにクリスマス・アルバムも3枚目ともなると日本では殆ど知られていないマイナーな曲が多くなります。それでもクリスマスにちなんだ曲が14曲収録されています。今回のベスト・アルバムはこの3枚のクリスマス・アルバムから13曲が収録されているようですが、余程のシカゴ・ファンでなければ今回リリースされたベスト・アルバムで充分だと思います。

 

 さて今年も余りブログの更新をしておりませんでしたが、当ブログも4年目を迎えることが出来ました。来年もマイペースでブログを更新して行きますので、何卒お付き合いの程をお願い致します。来年はクリスマス・ネタはないかも知れませんが(笑)。

 さて、前回の赤盤に続き、青盤です。ちょうど『レコード・コレクターズ1月号』が特集を組んでおり、的確なリミックスの詳細などはビートルズのミックス分析の第一人者、森山直明氏の記事が詳しいので、私はちょっと異なった感じで書きたいと思います。

 

 まずはジャケット写真ですが、

正に青盤ですね。ジャケットの色から赤盤、青盤と呼ばれているわけですから、当たり前ですが。

 

 今回青盤には9曲追加されているわけですが、まあ「Now And Then」は別とします。また選曲について色々とファンの間に意見があるようですが、私は特にその辺に関しては良しとしています。敢えて言えば、「Free As A Bird」「The Real Love」の立場はどうなるのかとは思います。

 

 青盤収録曲の殆どは既にスーパーデラックス化されており、赤盤ほどリミックスの山ではありません。新たにリミックスされたのはシングルB面曲やアルバム『Magical Mystery Tour』や『Yellow Submarine』に収録されていた曲となります。そしてこれは『レコード・コレクターズ』で森山氏も記事に書かれていますが、最大の問題作は「I Am The Walrus」です。私はこれは全くの別物に思いました。もしオリジナルの雰囲気を大切にしていたら、これ程までの改変(と敢えて書きますが)はなかったのではないかと思います。他の曲に関しては全く違和感がないのですが、この曲だけは違和感ありありで、私はこれは好きになれませんですね。やはり「I Am The Walrus」は後半が疑似ステレオになる、オリジナル・ミックスの混沌さを懐かしく感じてしまいます。

 

 新曲「Now And Then」に関して言えば、これはAnthology Project用にオノ・ヨーコがポール、リンゴ、ジョージに渡した3曲のデモのうちの1曲で、当時の技術ではジョンの声が上手く分離出来ず、完成を断念した曲だったとのことです。そういえば思い当たるのですが、「Free As A Bird」にせよ、「The Real Love」にせよ、ジョンの声がリアルな感じからはちょっと離れていたなあ、と思います。「Now And Then」もジョージの当時のギターの演奏が使われていますので、当時トライしたのは間違いないですが、もし当時この曲が完成していたら、『Anthology 3』のトップはこの曲だった可能性があるわけです。するとこの2023年にザ・ビートルズの新曲が出ることもなかったわけで、歴史としては当時の技術の未熟さに感謝すべきかも知れませんね。

 

 さて、次はライブ・アルバムを取り上げます。