千という単位 | 歌う

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万葉集を歌う

出版がかなった作家さんの出版記念講演会に参加した。

 

会場の様子はオンラインでも配信されていたし、会場は多くの参加者で座席がほぼ埋まっていた。

 

今日は作家さんのお父様のご命日、ということを話されていた時に、杖をついてお母様が入って来られた。

 

会場の隅には、春色の着物を着た作家さんの奥様と可愛らしい小さな二人のお子さんが控えておられた。

 

ステージの一段高い場所で、背の高い作家さんは、泣いちゃうんですよね、と時折声を詰まらせる。

 

差が高くて手足が長い作家の彼は、背筋もまっすぐだし、気持ちもまっすぐだからか、弱さをストレートに出す。

 

昨年は奥様から強い励ましを受けて背中を丸めていた姿を拝見したのに、今日はなんと楽しそうに背筋の伸びて闊達なお姿なんだろう。

 

後ろでお子様の面倒を見ている奥様に、思いを馳せた。

 

昨夜の古事記の話で、勾玉から男神が生まれた記述があったことを思い出した。

 

参加していた知り合いのS子さんが、指に嵌めていたキラキラ光る指輪を見せてくれた。

 

作家さんのお父様が亡くなる前にデザインされた指輪だそうだ、家業は宝石業を営んでいたとのこと。

 

輝く宝石で育ててもらった涙脆い男性は、古事記に書かれていた男の神様そのもののようだ。

 

隣に座って講座を聞いていたライターの女性は、作家さんのセミナーに参加したことがあるという。ピュアで自然体な弱さを出すところが魅力だと教えてくれた。

 

弱くて涙もろくて、素直な男の子たちよ、どんどん世の中に出てきてほしい。そして世界を変えておくれ。

 

古事記にあるような刀から生まれた女神たちが迎えてくれるはず。

 

講演会が終わって帰りの電車で、20年ぶりにお会いした大学教授と久しぶりにお話しをした。

 

大学を退官されたそうだ。でもお弟子さんと共著で最近英語で書いた本が千部も売れたんですとニコニコされていた。

 

さっきの作家さんは一千万部目指していると言っていたな〜と思いながら、教授さんが楽しそうに語る世界秩序についてと記号論についての話にしばらく耳を傾けた。