フェレットじゃなく人間の姿で
なのはと仲良く四期について色々話していた
扱いも悪くない感じ
何だ、別に存在抹消されたわけじゃなかったんだ



…って、ちょっと待てよ?
そもそも四期に絶望してコンプエースも娘TYPEも買っていない私が、何でなのはの四コマを読んでいるんだ?



疑問に思ったところで目が覚めた
そして暫く呆然としていた…



そんな事があった今日の朝
前回までのあらすじ

前編参照。
以上。

ユーノ「とうとうブン投げた!?」



ユータが無限書庫に戻らなかった翌日、無限書庫T区画・aブロックにて、騎士千歌音の正式起動がお披露目される事となった。
ユーノが学会に出席して不在の中、直方体をした大型のコンテナが運び込まれる。

「いやー、何や、えらいドキドキするなぁ~」
「私は不安で不安で仕方ない…」

マシンs制作委員会を代表してはやてと、万が一を想定しての護衛として騎士なのはが立ち会う事になったが、その反応は両極端だ。

「それでは、T-002の起動よ!」
「はい。起動プログラム、入力開始します」

千歌音の指示に従い、乙羽がコンソールを操作し始める。

…と、その時。

ボボーン!!!

「な、何よ!?」
「この、マヌケな爆発音は…!?」

突如、書庫内に響いた、何処か気の抜けるような爆音に、千歌音とはやてが振り向いたその先には…

「ザコザコ~!」
「やっぱり、ガジェット・ザコか~!」

はやての予想通り、爆煙の中からガジェット・ザコの群れが現れる。
その指揮を取っているのは、青い強化ザコ…ザコ三姉妹の次女・青ザコだった。

「またお前達か!今回の目的は何だ?今日はユーノ君は居ないぞ!!」
「知れた事、我々の目的は…そのコンテナの中身ですわ!」

青ザコの言葉と共に、コンテナに殺到していくガジェット・ザコ軍団。
しかし、それに果敢に立ち向かう者達が居た。

「なのっ!」
「なのなのっ!」
「ザコォーッ!?」

量産型のなのマシン達が、レイジングハート・プチを構え、ピンク色の砲撃による一斉掃射でザコ達を次々と撃破していく。

「なのフェ親衛隊もとうとう予算が底を突いたか?今までに比べると、随分とザコの数が少ないな!」
「ふん…調子に乗っていられるのも今の内ですわ!いでよ、アクト・ザコ!!」

ザンッ…!!!

空気を切り裂くような音と共に現れたのは、青ザコと同様に青を基調とした一体のガジェット・ザコ。
他のザコと違い、右肩のシールドも左肩のスパイクも無く、装甲が全体的にボリュームアップされている。

「なのーっ!」
「なのなのーっ!」

突如出現したアクト・ザコに対し、なのマシン達は再び一斉掃射を仕掛ける。
だが…

シュンッ…
ガガガガガッ!!!!!

ほんの一瞬だった。
ピンク色の砲撃が届く前に、アクト・ザコの姿は消え去り、無数の打撃音だけが書庫内に響き渡る。

「なの~…」

その打撃音と共に、なのマシン達は次々と殴り飛ばされ、無重力の書庫内に浮かび、目を回す。

「動きが…見えない!?」
「これぞ最新型のアクト・ザコですわ!マグネット・コーティングによる高機動力は伊達じゃありませんわ!!」

驚愕する騎士なのはに勝ち誇る青ザコ。

「これだからなのマシンは当てにならないのよ…乙羽、T-002の起動を再開しなさい!格好のデモンストレーションだわ!!」
「そうはさせるかザコ!マグネット・パワー、ザコ!!」

乙羽に騎士千歌音の起動を命じる千歌音に対し、姿を現したアクト・ザコは両腕をコンテナに向けた。

ビビビビビビビビビ…

そして次の瞬間、アクト・ザコの両腕から放たれた七色の怪光線が、コンテナを包み込んでしまう。

「お嬢様、システムエラーです!こちらからのプログラミングを受け付けません!!」
「何ですって!?」

乙羽と千歌音の顔に驚愕の色が走る。

「いや、おかしいやろ!?同じマグネットでもマグネット・コーティングとマグネット・パワーは全然別物やん!?」

はやてがツッコミを入れるのも虚しく、マグネット・パワーに包まれたコンテナが、徐々にアクト・ザコの方へと引き寄せられていく。

「くっ…そうはさせん!」
「貴女の相手は私ですわ!」

アクト・ザコへと向かう騎士なのはの前に、青ザコが立ち塞がる。

「しゃーない、こうなったら私が…」
「ザコザコ~!」
「って、まだ増援がおったんかい!?」

シュベルトクロイツを起動して向かおうとするはやてには、強化ザコの増援が現れて壁を作る。

…状況は、まさに絶体絶命だった…



「…ゆの?」

ユータは、真っ暗なコンテナの中で目を覚ました。
小さかった為に気付かれず、騎士千歌音と一緒にコンテナの中に入れられてしまったのだ。

ガゴゴゴゴッ!
ベキベキィッ!!

「ゆのっ!?」

突如、轟音と共にコンテナの中が激しく揺れ、続いて外壁が割れて光が差し込む。

「…ゆの…?」

ユータはその小さな身体を浮遊させると、コンテナの裂け目から、外の様子を覗き見る。

こちらに向けてマグネット・パワーを放出しているアクト・ザコ。
そのアクト・ザコに蹴散らされ、書庫内を漂うなのマシン達。
青ザコと睨み合う騎士なのは。
強化ザコの大群による壁に行く手を阻まれているはやて。
マグネット・パワーの磁力によって起動プログラムの送信を妨害され、焦りを隠せない千歌音と乙羽。

「これで騎士千歌音は、我々なのフェ親衛隊のものですわ!レイブンに続く、二体目の百合の守護神に改造されるのですわ!!」

勝利を確信し、高らかに宣言する青ザコ。

「………ゆのっ!」

その言葉を聞いた時、ユータは咄嗟にコンテナの裂け目から飛び出していた…



「あれは…ユータ!?」
「昨日から行方不明になっていたユノマシンが、何故T-002のコンテナに!?」
「いやいや、それはこっちが聞きたいですわ!」
「ゆのっ!」

目を丸くして驚く千歌音とはやてを余所に、ユータはアクト・ザコに向けて誘導弾を放つ。
しかし…

シュンッ…

「ゆのっ…!?」
「遅いザコ!」

ドゴォッ!!!

「ゆの…っ!?」

直撃する寸前に高速移動で誘導弾を回避したアクト・ザコは、一瞬でユータの眼前まで迫り、その腹に強烈な蹴りを叩き込んだ。

「ゆ、ゆのっ…」

思いっきり蹴り飛ばされながらも、ユータはアクト・ザコ目掛けて、今度はチェーンバインドを放つ。

シュンッ…

「無駄だザコ!」

バキィッ!!!

「ゆ、の…っ!?」

そのバインドも難無く回避したアクト・ザコは、今度はユータの頭上に現れると、両手を握り合わせた拳を脳天に振り下ろす。
なのマシン達を一撃で戦闘不能に陥れた打撃を二発もくらい、無重力の書庫内を舞いながら、ユータの意識は薄れかけていく。

「梃子摺らせやがってザコ…再び、マグネット・パワー、ザコ!」
「…ゆのーっ!」

しかし、アクト・ザコが再びコンテナに向けてマグネット・パワーを放とうとするのが視界に入ると、ユータは今にも薄れそうな意識を奮い起こし、なおもアクト・ザコに向かっていくのだった…



ザッ…
ザザッ…

初期化された思考回路の、真っ白な意識にノイズが走る。
それは、最初はぼやけた感じから、次第にはっきりとした形の、映像を形作っていく。

最初は、自分の人格のオリジナルとなった人間の記憶だった。
姫宮家の令嬢として、何不自由無く、しかし孤独に育った少女時代。
7歳の時に、弟が生まれた。
嬉しくて、両親に生まれて初めての我侭を言い、悪戦苦闘しながらも弟の面倒を見た。
だが、ある日、突如現れた黒尽くめの男に、まだ赤ん坊の弟が攫われる。

ザザザッ…

その映像が何度も何度も繰り返されるうちに、別のノイズが混ざり出し、違う映像となって映し出される。

仮起動した自分の前に、迷い込んできた一体のユノマシン。
自分は彼に何処か懐かしいものを感じ、彼も自分に懐いてくれた。
一ヶ月の間、彼は折を見ては通ってきて、2人で楽しいひとときを過ごした。
そして訪れる、別れの時。

『ゆ…の…』

その時の、彼の泣き顔と共に、苦しそうな声が聞こえてくる。

『鬱陶しい奴ザコ。このまま捻り潰してやるザコ!』
『お待ちなさい!そのユノマシンは連れて行きましょう。改造した騎士千歌音に、デモンストレーションとして八つ裂きにさせるのですわ!!』
『それは名案ザコ~』

続いて聞こえてきた耳障りな声に、黒尽くめの男の姿が重なる。
男の腕の中に奪われ、泣き声を上げる弟。
その赤ん坊の泣き声に、彼の苦しそうな声が重なっていく。
声にならない声、叫びにならない叫び。
しかし、それが何を言っているのか、今の自分にはしっかりと聞き取れる。

彼が、弟が、必死に呼びかけているのだ。

―――姉さん!―――

と…



「!?…T-002、起動します!」
「起動プログラムが送信出来たの?」
「いいえ、こちらからのプログラムは依然として妨害されたままです!」
「…どういう事!?」

コンソールを覗き込んで混乱する乙羽と千歌音を余所に、ディスプレイには起動開始の表示が映し出される。

ゴゴゴゴゴ…
ドガァァァンッ!!!!!

轟音と共に、内側からコンテナが破壊され、飛び出してくる一つの影。
関節部等に金色の装飾を施された、純白の甲冑のような装甲。
背中には放熱板のような真紅のウイングを広げ、その姿は、北欧の神話に登場する戦乙女<ワルキューレ>を思わせる。
その印象を更に強めるのは頭部の、千歌音を模したデフォルメフェイス。

「あれが…騎士千歌音…」

呟く騎士なのはの見ている前で、騎士千歌音の閉じられていた両目が開かれる。

「………私の弟に…」

オリジナルと同じ空色の瞳が、ユータを甚振るのを中断していたアクト・ザコをキッ!と睨み据えて。

「手を、出すな!」

その、凛とした叫びに呼応するかのように、書庫内の空気がざわざわと震え出す。

「ザコッ…ど、どうするザコ!?」
「こうなったら、破壊して残骸を持ち帰るのですわ!どうせ改造するのだから、多少破損していても問題はありませんわ!!」
「了解ザコ!マグネット・パワー、ザコ!!」

青ザコの指示に従い、アクト・ザコが騎士千歌音に向けてマグネット・パワーを放つが…

「消えた!?」

驚愕の声を上げた騎士なのはだけでなく、その場に居た全員に、騎士千歌音の姿がその場から消えたように見えた。

「ど、何処へ行ったザコ!?」
「!?…う、後ろですわ!」

動揺するアクト・ザコから少し離れた後方に立つ影に、一番最初に気付いたのは青ザコだった。

「ユータ…」
「ゆ、ゆの…」

一瞬で移動していた騎士千歌音の腕の中には、叩きのめされてボロボロの状態のユータが抱き抱えられている。
騎士千歌音は、そのまま騎士なのはの方へと歩を進めていく。

「………少しだけ、この子をお願い…」
「へっ?…え、えぇ…」

騎士千歌音からユータを託され、思わず素っ頓狂な返事をしてしまう騎士なのは。

「馬鹿にしやがってザコ…無視するなザコ!」

再び騎士千歌音の方に両腕を向け、マグネット・パワーを放つアクト・ザコ。
それに対し、騎士千歌音は優雅に向き直りながら、ウイングの基部から棒状の部品を取り外すと、その先端から魔力の刃が伸び、ビームサーベルに変わる。

ザシュウッ!!!

「ザコッ…!?」

またもや一瞬、アクト・ザコとすれ違いざまに、魔力のビームサーベルが一閃。
アクト・ザコの両腕が切り落とされ、無重力の書庫内にぷかぷかと浮かぶ。

「おおお、覚えてろザコ!」

シュンッ…

両腕を失い、マグネット・パワーを封じられたアクト・ザコは、捨て台詞を残して高速移動で逃げ出す。

「遅い…」
「ザコォ!?」

だが、騎士千歌音はそれを上回るスピードで、既にアクト・ザコの逃げ道を塞いでいた。

「貴方はユータを…私の弟を傷付けた…」

ヴンッ…

まるで剣舞のような動きと共に、サーベルが閃き。

「ザ…コ…」

アクト・ザコは為す術も無いまま、一刀両断にされる。

「………万死に値するわ」

ドゴォォォンッ!!!!!

騎士千歌音が冷たく言い放った次の瞬間、アクト・ザコは盛大に爆発四散するのだった。

「て、撤収~!撤収ですわ~!!」

ザコ軍団と共に逃げ出そうとする青ザコ。

「あいつら…」
「逃がさない…」
「へ?」

ヒュヒュヒュヒュンッ!

騎士千歌音の怒りに満ちた呟きと共に、背中のウイングが四基に分離し、青ザコを追おうとしていた騎士なのはの脇をすり抜けていく。

「ザコッ!?何か追ってきたザコ~!」
「何ですの、アレは!?」

四基のウイングは、青ザコとザコ軍団に追い付くと、彼らを取り囲むように静止する。

「貴方達…これを見たなら、おしまいよ?」

騎士千歌音の言葉と共に、ウイングの先端から、魔力のレーザーが一斉に放たれて。

ドッガァァァァァァン!!!!!

「ア~レ~…」

レーザーに撃ち抜かれたザコ軍団が大爆発を起こし、唯一生き残った青ザコだけが、打ち上げ花火のように爆風に吹き飛ばされ、通風孔に吸い込まれるように消えていくのだった。

「………何も、出来なかった…」

あまりの展開の早さに、騎士なのはが呆然としていると、ウイングを元通りにした騎士千歌音が近付いてくる。

「ありがとう…ユータを、返してもらえるかしら?」
「あ…うん…」

騎士千歌音の言葉に、自分がユータを預かっていた事を思い出し、慌てて再び彼女の腕へと託す騎士なのは。

「………ゆの…?」
「ユータ…大丈夫だった?」
「ゆ、ゆの…?」

騎士千歌音の腕の中で目を覚ましたユータは、記憶を初期化されたはずの彼女が、自分の事を覚えている事に戸惑っているようだ。

「…そうよ。私は、貴方と仲良しだった騎士千歌音…これからは、ずっと一緒よ…」
「ゆの…ゆのっ…!」

先程までの修羅のような表情とは打って変わって、慈愛に満ちた母性を感じさせる騎士千歌音の笑顔と言葉に、ユータは感極まって、彼女に抱き付きながら、泣き出してしまった。

「…お嬢様、これは一体…?」

結局、最後まで起動プログラムを受け付けないまま起動してしまった騎士千歌音を前に、乙羽が釈然としない表情で千歌音を振り返る。

「よく分からないけど…私達の知らないところで、あの二体には深い絆が結ばれていたようね…」

一方の千歌音は、騎士千歌音とユータの仲睦まじい姿に自分とユーノを重ね、何処か納得したような表情をしている。

「奇跡や~!TMV計画の千歌マシンと私らのユノマシンとの間に姉弟の絆が生まれるやなんて、奇跡以外の何モンでもないわ~!!」

そしてはやては、そんな2人の姿を見て、一人で盛り上がりながらハンカチで涙を拭い、チーンと盛大に洟をかんだ。

「………奇跡なんかじゃないわ…」

そんなはやてを尻目に、千歌音はポツリと呟くのだった…



その翌日。

「先日付けで、このT区画・aブロックに配属されました。T-002・騎士千歌音です。以後、宜しくお願いします、ユーノ司書長」
「ああ、姉さんから話は聞いてるよ。こちらこそ宜しく」

学会帰りのユーノに配属の挨拶をする、騎士千歌音の姿があった。

「ゆの、ゆの」
「えぇ。今日も一日、一緒に頑張りましょうね、ユータ」
「ゆのっ!」

その傍らには、先日の傷も修復が完了し、元気一杯なユータが居る。

「…なるほど。騎士千歌音の弟はユータであって、ユーノ君はあくまでも護衛対象というわけね」
「そうみたい」
「これなら暴走の心配も無いでござるな」

そして、その様子を少し離れた所で見守る、なのマシンsの姿も。

「それにしても、姉弟として作られたわけではない、そもそも製造元も規格も違う2人が、偶然出会い、姉弟同然どころか姉弟そのものの絆を育むとは…」
「ちょっとしたmiracleよね~」
「…千歌音さんは、そうじゃないって…」

感慨深げな武者なのはとコマンドなのはに対し、騎士なのはが口を開く。

「………あの後、千歌音さんが言うには…



「T-002には私の人格が、ユータにはユーノの人格がコピーされているのよ。その2人が姉弟として惹かれ合うのは、奇跡でも偶然でもないわ。当然であり、必然よ」



………って」
「あの人も相変わらずねぇ…」

騎士なのはから聞いた千歌音の言葉に、何処か呆れた様子のコマンドなのは。

「しかし、騎士千歌音が何事も無く配属となって良かったでござるよ…」

武者なのはは、まだ見ぬコマンド千歌音や、いつかスペリオルユーノが連れ帰るであろう武者千歌音と共に、なのマシンと千歌マシンが手を携え、ユーノと無限書庫を守る日を夢見て、心の底から嬉しそうに言った。

「…一つだけ、問題が…」
「「………??」」

騎士なのはが静かに指差した方向を見る、武者なのはとコマンドなのは。

「なの~…」

そこには、どよ~んとした空気を背負いながら、輪になって座り込んでいる量産型のなのマシン達の姿があった。

「…騎士殿、あれは一体…?」
「ほら…ユータが、騎士千歌音にベッタリになっちゃったから…」
「あ~…オリジナルと同じ状態になっちゃったわけね…」

こればかりはどうしようもない、と考えを一致させ、なのマシン達に同情しながら天を仰ぐ3人のマシンs。

無限書庫は、今のところ平和だった。



SIDE-K・完



やっぱり戦闘シーンって難しい…
前回までのあらすじ

なのフェ親衛隊の『百合カル計画』の存在を知った千歌音は、はやてのマシンs制作委員会との協力体制による『TMV計画』を発動させるのだった!
以上!

ユーノ「…このシリーズのあらすじは端折らなきゃいけない決まりでもあるの…?」



「…とまぁ、そういうわけなんよ」

無限書庫の未整理区画の一つであり、現在ユーノが陣頭指揮を取って資料の整理が行われている『T区画』。
そのT区画を更に区分けした『aブロック』を浮遊しながら、はやては武者・騎士<ナイト>・コマンドのなのマシンsにこれまでの経緯を説明していた。

「ほー、つまり新しい千歌マシンが我らの仲間に加わるという事でござるか」

『病み将軍事件』において武者千歌音と一時心を通わせた武者なのはは、何処か嬉しそうだった。
だが、他の2人はと言うと、寧ろ浮かない表情をしている。

「…大丈夫なの?また、武者千歌音みたいに暴走でもされたら…」
「しかも今度は二体でしょ?同時に暴れ出したら私達じゃ止めようが無いわよ?」

『病み将軍』を名乗って暴走した武者千歌音に手も足も出なかった事を思い出し、不安を隠そうともしない騎士なのはとコマンドなのは。

「うーん…ま、大丈夫やろ。千歌音さんも、同じ失敗は繰り返さないて言うてたし…ん?」

浮遊しながらの会話の途中で、はやての耳に幾つもの「なの、なの」という声が聞こえてきた。
ふと声のした方向に振り向くと、そこには十数体ほどの量産型なのマシンが、輪になって何やら深刻そうに話し込んでいる。
話し込むと言っても、普通に聞いただけでは「なの、なの」と言っているだけにしか聞こえないのだが。

「何やー?みんな揃って、何かあったんか~?」

なのマシン達の方へと飛んでいくはやて。

「なのっ、なのなのっ」

代表らしい一体のなのマシンが、身振り手振りを交えて慌てた様子ではやてに訴える。

「ユータが居らへん?…って、そもそもユータって誰や?」

念話に近い感じでなのマシンの言葉を聞き取ったはやては、聞きなれない人物の名前に首を傾げる。

「aブロックに配属されている量産型ユノマシンよ。『ユー』ノ君がモデルのマシンで、『T』区画の『a』ブロックに所属してるから『ユータ』って呼ばれてるの」
「ほー、ここのユノマシンはそんな風に呼ばれとったんかぁ」

コマンドなのはの説明に、なるほどと頷くはやて。
確かに『プロジェクト・セカンド』で生まれた個性的なマシンsと違い、量産型のなのマシンやユノマシンは皆同じ姿をしているので、個別の呼び名が無いと紛らわしい事この上ない。

「で、そのユータが行方不明やて?」
「…今日が初めてじゃないみたいね。これまでも、時々居なくなる事があったみたい」

はやてがコマンドなのはから説明を受けている間に、代わってなのマシン達から事情を聞いていた騎士なのはが伝えた。

「何や、それやったら今度もまた戻ってくるやろ。そんな深刻になる問題でもあらへんやんか」
「そういう問題でござるか?」
「マシン言うても男の子なんやし、女の子ばっかしの中には居辛い時もあるて」

ひらひらと手を振りながら、極めて楽天的に武者なのはに答えるはやて。

…しかし、そんなはやてのお気楽な予想は外れ、その日ユータはaブロックに戻ってくる事はなかったのだった…



計器類やコードで埋め尽くされた、薄暗い室内。
機械の部屋とでも言うべきその場所に、話題のユータは居た。

「ゆの、ゆの」
「…そう、今日はそんな事があったの…」

今日あった事を、身振り手振り交えて話すユータ。
そんな彼の話に、優しく答える女性の声。
その声の主は、一体のマシンだった。
頭身はなのマシンやユノマシンより少し高い。
椅子に座るような格好で何本ものコードを接続され、全身の姿は判別し難い。



ユータが彼女と出会ったのは、約一ヶ月前の事だった。
その日の休憩時間、ユータはなのマシン達とかくれんぼをして遊んでいた。
通風孔に隠れたユータは、うっかり足を滑らせ、滑り台かウォータースライダーかといった軌道に乗って、この機械の部屋に迷い込んでしまった。

「ゆの~…」

見た事も無い部屋に迷い込み、心細くなりながらも、早く書庫に戻ろうと自分の落ちてきた通風孔を探すユータ。
と、その時…

「…そこに、誰か居るの?」
「ゆのっ!?」

暗がりの中から聞こえてきた声に驚き、ユータは思わず腰を抜かして倒れてしまう。

「…驚かせてしまったみたいね…大丈夫。別に貴方に何かしようってわけじゃないわ…」
「ゆ、ゆの…」

続いて聞こえてきた声が、何処か懐かしい気持ちにさせる優しいものだったので、ユータは何とか落ち着いて起き上がる事が出来た。

「………貴方、私と同じマシンなの?」
「ゆの、ゆのゆのー」
「…そう、無限書庫のユノマシン…ユータって呼ばれているのね…」
「ゆのー」
「私はT-002…騎士<ナイト>千歌音と呼ばれているわ…」

それがユータと彼女…騎士千歌音の出会い。

今ではユータは騎士千歌音にすっかり懐き、休憩時間の折を見ては通風孔からこの部屋に通い、その日あった事などを話して、2人で過ごすようになっていたのだった。



『どうやー!無限書庫の技術は宇宙一やでぇ!!』

モニターに映し出されているのは、アースラRのブリッジで歓声を上げるスタッフの先頭に立ち、ドヤ顔で高らかに雄叫びを上げるはやての姿。
先の無人世界カルナージにおける、なのフェ親衛隊のガジェット・ギロ及びガジェット・ネコによる包囲網を、強化改造されたYセイバー…『YXセイバー』の活躍によって切り抜けた時の様子を、セイバープランに参加している反六課派の司書が密かにデータに収めたものである。

「…まるで、自分が無限書庫の代表者のような台詞ね…」

アップになったはやてのドヤ顔を、千歌音は秘書室の椅子に腰掛けて忌々しげに見つめていた。
無限書庫の関係者でもない一捜査官とは思えないはやての台詞は、司書長である弟ユーノの秘書として共に無限書庫を切り盛りしてきた千歌音の神経を大いに逆撫でするものであった事は言うまでもない。

「………まぁいいわ。そうやって、調子に乗っていられるのも今の内…乙羽、研究所からの連絡はあったかしら?」
「はい。『シュッテバインEX』及び『レヴィンガスト改』の改修が完了し、現在は『D-D』の新規製造に当たっているとの事。それと、『ハイザッコ』の量産体制も整った様子です」
「順調ね…元・六課の面々が“表の”TMV計画に気を取られている間に、こちらの“裏の”TMV計画は着々と進んでいくわ…」

傍らに控えていた乙羽からの報告に、満足そうにほくそ笑む千歌音。
どうやら、セイバープランを支援するTMV計画の裏で、異なる計画を進めているようだが…

「そう言えば、明日はその表のTMV計画の第一弾のお披露目だったわね?」
「はい。今夜中にT-002の最終調整を済ませ、明日、無限書庫に正式配備となります」



「ゆのー?」
「何だか寂しそう?…ふふ、ユータには隠し事が出来ないわね…」

ふと、ユータは騎士千歌音の表情が何処か愁いを帯びている事に気付いた。
そんな自分の顔を覗き込んで尋ねてくるユータに、冗談交じりに苦笑する騎士千歌音だったが、暫くの間を置き、意を決したように話し出した。

「………実はね、今日でユータとはお別れなの…今夜、私の記憶<メモリー>は消えて無くなっちゃうから…」
「ゆの…!?」

凍り付いたように驚愕するユータに、言い聞かせるように騎士千歌音は話を続ける。
自分は明日、無限書庫に正式に配備される事。
その前夜に行われる最終調整の影響で、今までの自分の記憶が全て消去されてしまう事。
そもそも自分は正式な起動前の状態だったので、最終調整を拒む事は出来ない事…

「ゆの…ゆの…」

騎士千歌音の話が終わった時、ユータは泣いていた。
滅多に他人の前で涙を見せないユーノの人格をモデルにしたユノマシンであるにも関わらず、騎士千歌音の前で止め処なく涙を溢れさせて泣いた。

「泣かないで、ユータ…私の記憶が消えても、私そのものが居なくなるわけじゃないから…」

それが何の慰めにもなっていない事は、騎士千歌音にも分かっていた。
本当は、自分だって泣きたい、それほどまでに、これまでのユータと過ごした日々は、彼女の中で大切な思い出になっていたのだ。
だが、自分は無限書庫を守る為に作られた『T-シリーズ』の千歌マシン。
先に起動し、暴走したT-001こと武者千歌音のようになってはいけないという自制<プログラム>が、彼女に泣く事を許さなかった。

「無限書庫で、また『私』と会う事があったら…その『私』とも、仲良くしてあげてね…」
「………ゆのっ」

それでも、震える声までは抑え切れない騎士千歌音の気持ちを察し、ユータは涙を拭い、コクンと頷いた。

その日、休憩時間が過ぎても、ユータは無限書庫に戻らず、騎士千歌音と過ごした。
この一ヶ月の事を、出会いから、色々な事を思い出して話し、再び泣いた。
そしてとうとう泣き疲れたユータは、騎士千歌音の傍で眠ってしまうのだった…



後編へ続く