新年、あけましておめでとうございます
今年も当ブログを宜しくお願い致します
それは、ユーノが11歳の頃。
なのはが重傷を負ったあの撃墜事故から、暫く経ったある日…
「おい、ユーノ司書。顔色悪いぞ?」
「そ、そんな事ないですよ、ガーニィ司書」
「…最近、見舞とかでマトモに休んでなかったな。後は俺達に任せてゆっくり休め。とにかく睡眠を取れ」
「でも、仕事が…」
「お前がこの無限書庫で一番有能なのは、今更わざわざ言うまでもない事実だ。だがな、お前はまだ11歳の子供なんだ。こればっかりは、何をどうやったって変える事の出来ない、現実だ」
「………」
「偶には大人を頼る事も覚えろ。気が引けるなら、今からまた高町の見舞に行って、そこで寝てろ」
「…分かりました。ありがとうございます」
思えば、ユーノにとって、ここまで親身になって接してくれた大人は、彼が初めてだった。
スクライア族では身寄りの無い孤児であり、管理局では大人と同様に扱われ、どちらでもその能力ゆえに、大人達には腫れ物に触るような対応しかされなかった。
口が悪く、性格にも多々問題があり、他の司書や他部署の人間と諍いが絶えず、なのは達に対しても常に威圧的な、困った人物ではあるものの…
ユーノ・スクライアにとって、先輩司書であるガーニィ・レイザは、いい意味でも悪い意味でも、何処か『父性』を感じさせる存在ではあったのだ。
「というわけで、なのはの実家への挨拶に、ガーニィさんに父親代わりとしてついてきてもらいたいんだ」
「何が「というわけ」なのか理解不能なんですけど司書長ーっ!?」
そして現在。
無限書庫総合司書長であるユーノ・S・高町の唐突な発言に、今や忠実な部下であるガーニィは目を白黒させながら、素っ頓狂な声を上げるのだった…
『夢で会えたら』 異次元旅気分
~君を守りたい~その後
「ほら、なのはと結婚を前提にお付き合いする事になったって言ったでしょ?」
「ええ、ええ、存じておりますとも。誰がどう見てもお似合いのくせに、10年以上も焦れったい関係なのを見守り続けて、「やっとかよ…」という思いで、その報告を聞きましたから」
「な、何か酷い事言われてるような気がするんだけど…」
「とんでもない。心から祝福しているんですよ、これでも?」
ユーノとなのはの交際そのものは目出度いのだが、そこに至るまで非常にヤキモキさせられてきたガーニィである。
嬉しくもあり、その反面、今の今まで待たされた事は腹立たしくもあり、という感情を隠そうともしない。
「…で、その報告も兼ねて、なのはの家に改めてご挨拶に行く事になったんだ」
「それはいいんですが、何故、俺が司書長の父親代わりとしてついていく事になるんですか?」
「司書としては大先輩だし、書庫に来たばかりの頃から色々とお世話になってるし、ガーニィさんが一番適役だと思って」
「幾ら先輩でも、今の俺は司書長の部下ですよ!?そんな俺如きが司書長の父親代わりだなんて、無理・無茶・無謀の三拍子ですって!」
『情報こそが力』
それは、今も変わらぬガーニィ・レイザの信念である。
そんなガーニィが無限書庫に眠る膨大な資料に目を付けたのは、当然の流れと言えた。
当時、若き野心家であった彼は、無限書庫の司書長となり、その情報の全てを掌握して己が力とし、前線主義で凝り固まった管理局をも従えるという野望に燃え、無限書庫司書を志した。
だが、実際に司書となったガーニィを待っていたのは、まさに情報の墓場と化し、整理しようにも何処から手を付けていいものか見当も付かないという、無限書庫の現実であった。
お飾りの上司、惰性で働いている同僚、管理者の特権で勝手に何やらしているらしい老提督とその使い魔の猫二匹…
彼の野望は無残にも打ち砕かれ、ガーニィもまた、機械的に日々の業務をこなす司書達の中に埋没していった。
管理局が『闇の書事件』で右往左往している最中、一人の少年が無限書庫に現れた。
事件の最前線で戦う友達をサポートする為、書庫の資料を使わせて欲しいと言う。
ガーニィは当初、そんな少年の事を冷ややかな目で見ていた。
出来るものならやってみるがいい、どうせ書庫の現状を前にお前も絶望する事になるだけだ、と内心で嘲笑ってさえいた。
そんなガーニィの思惑を覆すように、少年は『奇跡』を起こした。
高度な検索魔法を巧みに操り、無限書庫に死蔵されていた膨大な資料を、まるで呼吸をするように扱っていく。
それはまさに、若き日のガーニィが夢見ていた姿そのものであったのだ。
少年に夢を奪われた格好となったガーニィだが、不思議と嫉妬のような感情は湧かなかった。
自分よりも幼いながら、自分よりも遥かに有能で、自分が諦めた夢を実現して見せた少年。
ガーニィはその少年、ユーノ・スクライアに深い尊敬の念を抱くようになっていた。
それは常に他人を見下していた彼が、初めて自分以外の存在に見せた敬意であった。
ユーノが司書長となった時、ガーニィは自分の事のように喜び、以後、ますますユーノを敬愛し、献身的にサポートするようになっていく。
そして現在、今や総合司書長であるユーノに心酔していると言ってもいい古参司書、ガーニィ・レイザの姿がここにあるのだ。
「…そんな器の小さい俺が司書長の父親代わりとか、畏れ多いにも程があります!」
「…ガーニィさん…あの時、そんな風に思ってたんだ…」
「申し訳ありません…」
「まあ、当時の無限書庫の状況じゃ仕方ないけどね…」
「そもそも司書長の父親なら、それこそ司書長のように器が大きく、高潔な人間で…」
そこまで言ってガーニィも、聞いているユーノも、長い沈黙に囚われた。
「………何だろう、ガーニィさんとベクトルは違うけど、同じぐらい困った人しか思い浮かばないんだけど…」
「………奇遇ですね、司書長。実は俺も…」
「しかも、何故か外見がスカリエッティそっくり」
「俺も想像してしまいました…何故でしょうね、あんなヘッポコのなんちゃってマッドサイエンティストのような見た目なんて」
「いやいや、仮にも管理局を震撼させた一大事件の首謀者の広域指定犯罪者だよ?」
「過大評価もいいとこですよ。六課もあんな奴捕まえるのに何で一年もかかるんだか…二週間か三週間もあれば十分でしょうに」
序盤の前後編か、中盤の前中後編か…ともかく、2クールもかけるような相手じゃなかった、というメタ表現である。
「それはともかく…お願い出来る人が、ガーニィさんしか居ないんだ。だから、頼むよ」
「分かりました…不肖ながらこのガーニィ・レイザ、司書長に恥をかかせぬよう、一命を賭して父親代わりを務めさせて頂きます…!」
「大袈裟過ぎるよ…」
後に、ユーノの妻となった高町なのはは、当時の事をこう振り返っている。
「ユーノ君の親代わりでついてきたガーニィさんは、ユーノ君より緊張してて…とにかく凄い脂汗で、集めて煮たら軟膏が出来るんじゃないか、ってぐらいだったよ」
…と。
「俺はガマガエルですか、奥様!?」
「そうだよなのはママ、ガマガエルに失礼だよ!」
「お前は黙っていろクソガキ!」
「え、なのはママは奥様なのに、私はクソガキのまま?」
「お嬢様と呼ばれたかったらお嬢様らしくしろ、この破廉恥娘が!!」
「ガラの悪いオッサンにとやかく言われたくないよ!!」
この時空でも仲の悪いガーニィとヴィヴィオ。
今日も今日とてギャーギャーと、火花を散らしていがみ合い。
「………2人とも、高町家的な意味で頭冷やそうか?」
「ユーノ君がやると本当に頭凍りついちゃうから手加減してー!?」
そんな2人を、米神に井桁を浮かべて止めに入ろうとする夫の姿を前に、戦場で見せる勇ましい姿とは別人のようにオロオロするしかないなのは。
とりあえず、この世界は平和だった。
「………」
岩石大首領(ガニアUDクロン?…もうどっちでもいいよ)との最終決戦の末、ニャル滝最後の悪足掻きでオーロラの向こうに消えたVIVID…ヴィヴィオ。
彼女は今、何処とも知れない並行世界に居た。
ブレイカーズやブレイド、シェイドどころか、ジゼルとも離れ離れになり、たった一人で。
しかも、彼女は現在、記憶を失っていた。
「…どうして私、こんなとこに居るんだろ…」
正確には、次元回廊を抜けて以降の記憶が、すっぽりと抜け落ちているのだ。
『まどか☆マギカ』の世界に流れ着き、ブレイカーズに合流し、ジゼルの新たなボディとしてヴィヴィルキスを与えられた事。
『ナウシカ』の世界でヴィヴィルキスの性能テストも兼ね、巨神兵やガニゾンダーとハチャメチャな戦いを繰り広げた事。
思うところあってユーディと2人でジゼルに連れられ、様々な世界の記録から「ヒロインとはどうあるべきか」を学んだ事。
そして、『マブラヴ』の世界で待ち受けていた、ニャル滝の罠…
それらの記憶が失われている為、ヴィヴィオにしてみれば、次元回廊を抜けたらジゼルともはぐれ、独り行き倒れになっていた、という状況。
「ヴィヴィオちゃん、また暗い顔してるよー?」
「あ、アキさん…」
憂い顔のヴィヴィオに駆け寄り、声をかけたのは、ユーノを若く(幼く)したような…ヴィヴィオは知らないが、15歳の頃のユーノと瓜二つな…容姿の女性。
彼女の名は、姫宮アキ。
記憶(の一部)を失い行き倒れになっていたヴィヴィオを発見し、保護してくれた女性である。
「そんな暗い顔してたら、近くまで来てる幸せも逃げちゃうよ?よし、ここはヴィヴィオちゃんが笑顔になれるように…」
「えっ…アキさん、また…!?」
不意にブンブンと右腕を振り回すアキに、ヴィヴィオの顔が青褪める。
「姫宮家秘伝・笑いのツボ!」
グキィィィッ!!!
そのままの勢いで、右手の親指でヴィヴィオの首筋のツボを押すアキだったが、嫌な音と共に、ヴィヴィオの首がぶっちゃけありえない角度に曲がってしまう。
「…あれ?また間違っちゃった…?」
「………っ…!?」
某自称天才のような医療ミスに、アキは焦り、ヴィヴィオは声にならない声を上げて悶絶する。
「秀樹くーん!大変だよ~っ!!」
慌てたアキがヴィヴィオを担ぎ上げて駆け込んだのは、『姫宮医院』と書かれた看板を掲げた建物の中。
アキに保護されたヴィヴィオが居候している家でもある。
「まったく、毎度毎度…私は外科が専門で、整体師ではないのだよ?」
運び込まれて医療ベッドに寝かされているヴィヴィオを前に、呆れたように嘆息しているのは、ジェイル・スカリエッティと瓜二つの男性。
彼の名は、姫宮秀樹。
この姫宮医院を経営する開業医であり、アキの夫でもある。
「でも、毎回ちゃんと治してくれるよね」
「私は天才だからね。『何でもありあり科』と名乗ってもいいのかも知れないな」
などと呑気にノリダーネタをかます秀樹に、ヴィヴィオは何度目になるか分からない生と死の境を彷徨いながら…
(何だろう…私、ここに来るちょっと前にも、こんな人達に振り回されてたような…?)
失われた記憶の断片が、おぼろげな走馬灯のように浮かんでは消えていくのだった…