支えられて気づく、世間と人の温かさ
不動産屋さんとコンタクトを取った。
最初は、どんなことを言われるか戦々恐々としていた。
でも、意外と優しく対応してくれて、少しホッとした。
こんな条件の悪いお客さんでも丁寧に接客してくれるものなのね。
私のようなケースは、あまりウェルカムではないはずなのに。
それをおくびにも出さずに説明してくれるところに好感が持てた。
私が懸念していたことを伝えた時の反応は、
「全然大丈夫ですよ~。今はシングルマザーの方も珍しくありません」
これが最大の懸念事項と言っても過言ではなかったので、本当にホッとした。
聞くところによると、もっと幼い子どもを連れて部屋探しをしている方もいるという。
中には出産直後に離婚というケースもあるそうだ。
我が家の場合はまだ籍を抜いていないので、それも少し心配だったが、
「全く問題ありません」
と断言してくれた。
もし良さそうな物件が見つかったら、オーナーに事情を伝えて確認してくれるそうだ。
昔よりも、母子家庭に対する偏見はずいぶん減ってきているのだと思う。
数十年前だったら、きっとこんな風に堂々と部屋探しなんてできなかっただろう。
世間の風当たりも厳しかっただろうし、子どもだって嫌な思いをしたかもしれない。
そう思うと、今のような環境でまだ良かったなぁとしみじみ思った。
電話で話している時、ふと『誰かに似てるな』と思った。
口調や声のトーンが、会社の先輩に似ているのだと気づいた。
会社でも、みんなが親切で安心して働ける環境を作ってくれている。
部屋を間借りさせてもらっている先輩だって、ただの以前の後輩というだけなのに優しい。
そうやって、いろんな人に支えられて前を向くことができた。
なのに、夫が一番つらく当たるなんて、本当に皮肉なことだと思う。
希望と現実のはざまで、母としての選択
不動産屋さんと話して、現実を知った。
私の挙げた条件だと、予算内に収めるのがかなり厳しいらしい。
それほど多くの条件を挙げたつもりはなかったのだが、最低限これだけは外せないというものがいくつかあった。
子どものことを考えると、ある程度は環境の良いところにしたいという思いもあり、その部分にはこだわった。
でも、希望に見合う物件は考えていたよりも家賃が高くなることが分かり、私は考え込んでしまった。
「予算をもう少し上げようか。でも毎月のことだし…」
迷っていると、不動産屋さんに
「もう少し家賃の上限を上げられませんか?」
と言われ、計算してみた。
すでに手取りの3分の1を少しオーバーしている状況。
それ以上は現実的ではないと判断した。
結局、
「もう一度条件を考えてみます」
と伝えて電話を切った。
夫が居座り続けるあの部屋は、借りてから数年が経過していた。
借りた当初は家賃も希望範囲内に収まっていたが、その間に物価が上がったのかもしれない。
一瞬、ダブルワークも頭をよぎったが、躊躇してしまった。
決して働きたくないわけではない。
ただ、子どもを一人にする時間が長くなってしまう。
もう小学生とはいえ、夜間に一人で居させるのは怖い。
できるだけ一緒にいてあげたい――そう思うと、ダブルワークは断念するしかなかった。