猫は思った。

寝坊したと騒ぎながら支度をしている主に、いつも(頭だけだが)の毛繕いは良いのか?
天気予報を見たり
(じゃらし遊びがやりたかったぞ)
ベランダの花に水をやったり
(ひなたぼっこタイムがなくなったぞ)
朝一の水は飲まなくていいのか?
(フレッシュな物に変えてくれ)
それより何より、主よ
キサマは食わなくてもいいかもしれんが俺は腹が減ってるぞ。




「ニャー」

と思わず声に出してしまった。




「あ〜!ごめんごめん!…ご飯だして、…水 換えて、オヤツはここ!行ってくるね〜」


ひと鳴きでここまで分かるようになったか。
よしよし。
あとは今日一日頑張って帰ってきたら、俺をたっぷり撫でさせてやろう。


猫は思った。

寝坊だかなんだか知らないが、俺には関係ない。
俺と主と、家でのんびり過ごせれば何も問題ない。
主は外で何をしているのだろう。
たまにオヤツを持って帰ってきたりするから、外には俺のための何かがあるかも知れないが、ひと鳴きすれば主が動く。
それでいい。

あくびをして伸びをしてからクルクルと3回転し、いい感じの窪みを仕込む。
寝坊していた布団から主の温もりを拝借して少し早めの昼寝をするとしよう。
もう一度あくびをする。

外で何が起きても俺には関係ない。関係ないが主よ、絶対帰って来いよ。絶対、絶対 何事もなく帰ってきて、俺をたっぷり撫でるんだぞ。

カーテン越しの柔らかな光を浴びながら目をつむる。
ホカホカの夢を見ながら猫は思った。







オヤツを食べるの、忘れたなあ。