ずっと考えてることがあるんだけど「言葉」とか「文章」とか「音楽」にうまく変換できずに体から出しきれず、出せないものをため込んだ体はただただ重くなって、刺激を欲する頭にだけ忠実に動く。

食べる、寝る、食べる、寝る、食べる、寝る…


何をしてもつらい。何を聞いてもつらい。
「ありがとう」と言われても意味が分からない(届かない)。

命が尽きたときに審判が下され、天国(みたいなところ)や地獄(みたいなところ)へ行くのだろうと、神様も仏様も信じてないのにぼんやりそう考えていた。が、違った。何も感じられない、何もかもがつらい今が、一番の地獄だ。


このトンネルは長い。
暗くて孤独で、先が全く見えない。


視覚を遮断されたとき、聴覚や嗅覚、触覚などが急に優れるわけではないので常に恐怖心がつきまとう。
冷たい壁を触りながら、次にくる道の変化を懸命に探る。
直角に曲がるのか、カーブしているのか、真っ直ぐ進むだけなのか。
不意に何か粘り気のある物体に触れる。
瞬間、触覚から嗅覚へバトンタッチ。
無臭だった場合、手触りで確認する。確認をしなくてもその壁だけ飛ばせばいいのに、触ってないと不安で足が一歩も進まない。
だから嫌でも触る。

臭いがあった場合は、記憶から物体の正体を引っ張り出す。
楽しかった思い出とともに、蘇る臭いの記憶。

どこで嗅いだんだっけ
そのとき誰が側にいた?

記憶はあるのに思い出せない。


体中の神経が緊張しっぱなしのまま、24時間、365日、朝も夜もなく過ごす。

かろうじて人間としての輪郭を保ったまま真っ暗な闇の中でかろうじてある前後の感覚を頼りに、前に前に進む。

目を覚ましても、眠っていても、同じ闇。

いつまで続くんだろう。
もうやめてもいいんじゃないか?

自分の中から聞こえてくる、甘い誘惑の香り。


これまでになかった幸せの匂い。

今すぐこのトンネルから抜け出せるなら…
「「よし!」」

「どうしたの?」

死ぬつもりで出した声に、返事が返ってきた。

開ける視界。

1人だと思っていた世界にはたくさんの人間が住んでいて、暗くて怖いトンネルは運動不足を解消することもできないような円形状のトンネルだった。
同じところをグルグル…飽きもせず歩き続けていたのか。


内に入り込めば内なる自分が見えてくると思っていたが、違った。
外から見て初めて自分が何者だったかが分かった。

出し忘れた声。
意味を持たない音。
ムダだと思っていた全てが必要なもので、それは他人には分からないものだということ。

我慢して、我慢して我慢して、握り潰した自分。

でもそれは外からの圧力に耐えきれ無かったわけではなくて、それらの力を受け流すという経験値がなかっただけだ。



僕らは自由に、大きくなったり小さくなったりできる。
飛んだり跳ねたり、沈んだり浮いたりもできる。

できないことは何もない。


何もないんだ。