居すわる価値の | 卍老人残日録

卍老人残日録

-真剣道継承未完- 

草稿

 

居すわる価値の

はるかな時代に

須臾にすぎた

おとこが

いたとしよう

おぼろげで

雲のような

悲しみを語り

去っていった

 

それは

むかし見たものだ

うしなわれながら

生きてきたものが

見たものだ

 

振りむいて

思い出そうとしても

永久の流れの果てにさえ

たどりつけない

 

やさしい

夕暮れには

彼の名は忘れられたが

私は

知っていたはずだ