居すわる価値の草稿 居すわる価値の はるかな時代に 須臾にすぎた おとこが いたとしよう おぼろげで 雲のような 悲しみを語り 去っていった それは むかし見たものだ うしなわれながら 生きてきたものが 見たものだ 振りむいて 思い出そうとしても 永久の流れの果てにさえ たどりつけない やさしい 夕暮れには 彼の名は忘れられたが 私は 知っていたはずだ