静岡からの贈答
静岡の名刹 ご住持宇佐美師は緋の衣をまとわれる高位の僧であるが、私にとっては大学時代からの心底頼りにしてきた先輩である
本日、先輩に対する礼として貧しい贈り物をしたお返しが届いた
その中に 漢詩同人誌が添えられていた。
心がこもった漢詩に打たれた。
技巧に走らず、身についた素養をしてこの慨嘆を表す有様に脱帽だ。
地球の事態は緊急の様相を呈している。
私もほぞを固めていると言っても、まだまだ半跏なもので、到底問答には耐えられないと思っている。
次に私が20年ほど前に書いた散文を見てもう一度覚悟を決めようではないか。
帰還のとき
展け放った窓外に
翻った夜には
時代が並ぶのではない
綴られた事実が残るのだ
血脈に記されたものが
燈台をめざし闇夜を往くとき
ふりかえったまなざしに
応える用意はあるか
残りしものは遙かな山脈に砦を築き
盾となり 矢となって帰らない
勇気ある幾多のものを待て
百年の後、春夜の風に送られて
声となり、帰還する月下の隊列
栄光の旗を掲げてかれらに見せよ