垣谷美雨著

「墓じまいラプソディ」

今回の作品もかなり面白かった。墓じまいという問題を軸に

昨今問題になっている婚姻に当たっての男女の苗字の問題まで

軽いタッチだが、鋭く描いている。

オレの家の墓のことも、今後、考えなくてはならない時期に来たので、

少し参考になったように思う。

 

畑野智美著

「感情8号線」

荻窪、八幡山、千歳船橋、二子玉川、上野毛、田園調布、

環8沿いの街に住む男女の恋愛を奇妙な繋がりで描いている作品。

脚本家の阿久津朋子氏も解説で書いているが、

同じ環8沿いの街ではあるが、それぞれの街の雰囲気は異なり、

直線距離は近いのに、電車では行きづらい遠い場所でもある。

その不便さに着目し、恋愛と人生に例えるという作者は、

流石としか言いようにない。

 

「シネマコンプレックス」

毎月のように映画鑑賞のため、どこかしらのシネコンに行っている。

端から見ていると結構ラクそうな仕事に思えるが、

その実、結構大変な仕事だと認識させられた。

(今時、接客業はクレームなどでどんな職場でも大変だと思う。)

業務内容もフロア、コンセッション、ボックス、ストア、オフィス、

プロジェクションとあり、その業務の担当者の視点で描かれている短編集。

 

「大人になったら、」

作中の一文に心が弾む。

" わたしは結婚したいとも思わないし、子供が欲しいとも思わない。

でも家族が欲しい。ずっと一緒にいてくれて、わたしのことを

「命より大事」と言ってくれる誰かを、わたしも「命より大事」と

思いながら、暮らしていきたい。"

北海道に転勤になった主人公・メイに恋心を寄せる羽鳥先生が

突然現れ、彼女に思いを伝えた後の一文も何気に良い。

" 雪がとけて春になころには、お互いが「命より大事」と

思える存在に少しでも近づけているといい。

この街の春は、東京よりも遅く来る。"

 

青山美智子著

「お探し物は図書室まで」

2021年の本屋大賞第2位の作品。青山美智子氏の作品を初めて読んだ。

町の図書室に訪れた、仕事や人生に悩む5人に、

大柄な女性司書がそれぞれの悩みを聞き、それに対する本と

フェルト素材で出来た付録をプレゼントする。

受け取った5人が、その後前向きにその悩みを自身で解決していく話。

 

小川糸著

「食堂かたつむり」

「ライオンのおやつ」に続き小川糸氏の2作目に読んだ作品。

作者は料理の造詣が深いのか、料理の描写が非常に詳細だ。

実家で飼育していた豚のエルメスを母親の結婚式の披露宴で

料理として提供するため屠殺し、その肉を料理に変えていく場面は

なかなか生々しい。

動物にしろ、魚にしろ、野菜だって、オレ達は他の「いのち」を

いただいて生きていることを忘れてはならない。

 

三條三輪著

「ひとりで生きて99歳」

1時間程で読み終わってしまった。

本のカバーに書かれていた「" 自由気まま "ほど贅沢はない。」

「いくつになっても正々堂々と生きる。」

更に「人の一生は『どれだけ金銭的に豊かだったか』ではなく、

『いかに好きなことに夢中になったか』で決まる。」の

文章が一番しっくりきた。

 

赤松利市著

「女童」

図書館で「ボダ子」と共に借りてきた。

「ボダ子」の前日譚の作品と言う事なので「女童」から読んでみた。

なんとも重い内容。しかもあとがきで知ったが、殆どが真実らしい。

オレだったら、このような状況に耐えらないだろうなぁ。

 

「ボダ子」

「女童」とかなり被る内容。フィクションとあるが、

赤松氏の体験が色濃く表れている作品なのだろう。