東日本大震災が日本列島を文字通り震撼させてからというもの、
入っていた旅行の予定、会食予定、全てについて、決行すべきか酷く悩みました。
最初は、日本の多くの方々が同じような思いをされたのではないでしょうか・・・
震源からは離れた、東京の我家でも キュリオケースのガラスは 7割方は割れ、
食器棚も、地震ラッチの効かなかった扉が開いて、多くのものが散乱したので
被害としてではなくても、心の動揺はかなりあった上に、友人とも不通の時間が徒に過ぎ
立て続けの余震にもどうしたらいいのか、何をするべきなのかが、自分で確信が持てずにいました。
でも結局は、私が旅行をキャンセルすることで きっと、経済的に打撃を受ける会社があり、
予定を中止していくことで、他にしわ寄せいくのは、これは違うのではないか・・・・と、思うに至り
結果、旅行も、会合もお食事会にも当初の予定通り、参加することにしたのです。
でも、こちらの店は予約から一年以上は待たされるのが普通なので、
やはり心の健康を取り戻すのには、いいお店だったと、今振り返って思います。
2011年3月某日。
前置きが長くなりましたが、駒込から歩いて10分ほどの、全くの住宅街の中に埋没している如く
控えめに佇む『玉江』さんに会食で訪れる機会に恵まれました。
こちらは、日に限定一組(4人以上10人程度まで)しかお客をとらず、
料理はおまかせの11品の完全お任せコース 5,500円のみです。
実家に帰ってきたように引き戸を開けて玄関で靴を脱ぎますと、
ご主人の中村さんご夫婦が迎えてくださいます。
中も、普通のお宅の居間を客を通す部屋に作り変え、ドアを開けて廊下にでてトイレ、
普通のお家のように台所のありそうな場所に厨房がある形式でなんとなく寛げる。
この日は総勢13名の会食というより、宴会。
お供のお酒は 乾杯がハートランド、その後は出羽桜一耕、にごり酒などを嗜みながら
会した御仁は皆さんも、やはりここのところは鬱蒼とした心情だったのでしょう。
時間と共に 暗い気持ちを振り払うように宴はたけなわになったのでした。
5500円コースのお献立
■焙炉(板わかめ)と味海苔
テーブルに置かれていた電球を仕込んだ照明器具?と思ったものは、実は焙炉でした。
(ホイロ=木の枠や籠の枠に和紙を張り、遠火の炭火で茶、海苔などを乾燥させる道具。)
上部が引き出しになっており、板若布が入っていました。
そのパリッパリの板わかめと味を付けた海苔を乾き物に、早速 宴は始まっていました(笑)
■焼きみそ
杓文字に盛られ、焼かれている焼き味噌は細かい包丁が入れられ、それが非常にいい塩梅に焦がした
香ばしさち歯ごたえ。
蕎麦の実や葱、煎り胡麻が入ってすごく香ばしくて、最初からお酒が美味しい(。ゝェ・´)
■そばサラダ
揚げた蕎麦、蕎麦スプラウトがメインで、ドレッシングは何でしょう?油と馴染むにつれ美味しくなったのが
後から、揚げた蕎麦との相性で美味しいんだ☆と発見。
■そばクレープ
白髪葱、錦糸卵、貝割れ、胡瓜を肉味噌と一緒に、蕎麦粉のクレープに北京ダックのように巻き頂きます。
ありそうなメニューだけど、初めての体験です。和風クレープ風のガレット?
■早そば
蕎麦掻きの中に千切り大根が包まれているなんとも素朴で優しい料理。
ふわふわ~シャキッとした歯応えが面白く、山葵の絡む汁が、全体を引き締めています。
早そばとは、長野県選択無形民俗文化財にもなっているようで
茹でた千切り大根に水溶きそば粉をからめ、簡単に短時間でできる故の料理です。
全国的にも珍しい長野の郷土食だそうです。
■鴨の南蛮漬け
鴨と、焼いた長葱を、酢が効きいた南蛮に漬けた一品。ピリッと鷹の爪でしめています。
何枚でもいけてしまう。
嬉しいのは結構な枚数があること。
精進料理のような献立に、唯一 動物性たんぱく質の品ですw
■そば法度
そば法度は江戸時代に南部藩がそば切りを贅沢品としてご法度にしたところ、
そば切り状に切っていなければいいだろう☆(。ゝェ・´)と 太く切って食べたというもの。
短いきしめん状の蕎麦が根菜やきのこ等と優しく汁仕立てになっています。
心も温か・・・・+。:.゜ヽ(´∀`)ノ .:。+゜。
■そば掻き揚げ
レクタングラー状に素揚げしたそば掻きが可愛く、上には大根おろし。
噛むと、小さく揚げた故に、小気味良い食感で、次にもっちりとした中の食感が続くのが楽しいです。
ん~。そば掻きを揚げたものも初体験(。ゝェ・´)vおいしー。
■なすのそばみそ掛
揚げた茄子に、蕎麦味噌が掛かり、素揚げしたしし唐辛子が添物。
油に蕎麦。蕎麦に味噌。凄いなぁ・・・ベジタリアンの方も喜ぶこと間違いなし!(o^-')b
■せいろそば
こちらの蕎麦は二八だそうで、予約人数分のそばだけを、直前に石臼で挽いていらっしゃるとのことです。
細く端整な蕎麦なのに、しっかり角のある精鋭な表情です。
大根おろしと葱が薬味で、汁は甘くはないさっぱり系なのは、やはり蕎麦の香りを楽しむ為でしょうか。
食べ終わると「おかわりいかがですか?」と訊いてくださり、満面の笑顔でお願いします。
二枚目は、又 違うお蕎麦が用意されているので、更科系に近い蕎麦と二八の両方を味わうことができました。
■デザート
レモンゼリーに蕎麦の実の食感が楽しい、爽やかな締めの一品。
最後に出していただく韃靼蕎麦茶も、ふぅっと心の溜を吐き出すというより、溶かす深い優しさでした。
これだけ蕎麦三昧、蕎麦だけで、これだけ世界を広げられるなんて驚きです。
穏やかで、駆け引きのないご主人のお人柄が、そのままお料理に反映されているような
たおやかで、優しくて、奥のあるお料理と楽しい時間。。。。
動物性の食材が殆どない、精進料理のように素朴で粋な料理達。
それを楽しめる自分になっていたことも嬉しかったり・・・(。ゝェ・´)
気がついたら4時間の滞在で、帰路では、重く伏しがちの心も軽くなっていました。
今度は又何時の日になるのかは分かりませんが
ご主人の優しいお料理に浸りたい願望に駆られる日が来ると思います。
☆☆ご馳走様でした☆☆















