役者さんの演技、特に役所広司さんのしゃべらない、佇まいの演技は圧巻でした。寡黙さと頑固さで周囲を振り回す、見ていてイライラさせられるような部分もある、でありながら純粋で言い訳せず一途に信念を貫く昔気質の親父を見事に演じられていたと思います。田中裕子さんもさすがでした。朴訥でしっかり者で家族の要である母親として静かな存在感を放っていました。新垣結衣さんは震災というつらい体験をきっかけに、故郷への愛を再認識し前を向いて進もうとする若者を真摯に演じ切っていました。こういう、辛い経験を経て理不尽な扱いを受けながらも前を向いて懸命に生きている家族が今もあの地にはいらっしゃるのだろうと実感できました。
脚本については、原作に比べてかなり端折リ過ぎたように思います。特に競馬周りの現実味の無さがかなり引っかかります。
資金力も実績もない生産牧場主が馬主として登録されることはありえません。また、調教師も育成牧場紹介のシーンで出てきただけで、実際にあの調教師に預けることが出来たのかも描写がなく、調教師に預けない状態で中央競馬に出走できないことは競馬に少しでも興味のある人なら知っていることです。そこから考えて誰か有力な馬主に買ってもらい調教師に預けて出走にこぎつけたんでしょうが、あまりにもカットしすぎです。
また、競馬界から完全に離れた元ジョッキーが騎手免許の更新をすることが出来ていたのかも謎です。
最後のレースシーンも、普通に出走し勝ってしまったらあまりにもベタだと考えたのかもしれませんが、あの恐ろしい出遅れでは最下位確定です。それが未来への希望につながるんでしょうか。出走できたことがとりあえずの勝利なのだと言えばそうなんでしょうが、あそこは普通に走るか、少し出遅れて追いつくかでよかったと思います。レースの勝ち負けを見せるかどうかは別として、絶対勝てないシーンで終わるのは奇をてらいすぎでしょう。
(ちなみに原作は全く違う展開です。)
競馬を全く知らないし興味もない、勉強する気もない脚本家に競馬に絡んだドラマの脚本を任せたのはNHKの失敗だと思います。非常に残念に思います。
