沖縄、宮古島より海を渡り北へ向かうと、大神島と言う小さな島がある。宮古島北側の海岸沿いにある島尻港という港から、島尻~大神島間を1日4往復ほどするフェリーでのみ行くことのできるこの島は、面積およそ0.3平方㎞、人口はわずか40人ばかりという本当に小さな島で、観光地化はされておらず、島には食料品などを扱う売店が一件あるのみだという。
この島には、旧暦6~10月にかけて『祖神祭(ウヤガン)』という何とも神秘的なお祭りがある。
「50歳以上の老女たちが髪を洗い、身を浄め、黒の装束をまとって海に面した山の御嶽にこもり、神に祈りを捧げるのであるが、この神事は秘密にされ、男たちは見る事が出来ず、犯すことの出来ないタブーとされている。この神事は、5日間一睡もせず、水と塩だけをとって神との交わりを続ける、と伝えられている。なお、この祭りは、祭りに関係のある女性以外は寄せつけない秘祭であるため、祭りの全貌やその本質意義はまだ究明されていない」(琉球放送HP・沖縄の祭事のページより)
この島には島民の住む集落の周辺以外にはいくつかの聖域とされる御嶽(うたき)がある。御嶽というのは琉球古来の文化における宗教施設の呼称で、琉球の神話の神が存在、あるいは来訪する場所とされていて、沖縄諸島のいたるところに点在する。起源は諸説あるらしいが、古代社会においてもともと集落があった場所が、後に祖先を崇める場所として御嶽となったとされる説が有力であるとされる。
大神島の御嶽は島民であっても一切立ち入ることのできない神聖な場所である。以前、あるTV局の女性リポーターが、御嶽を強行取材した後、原因不明の高熱にうなされ、幾日か生死の境をさまよったという噂や、今から約20数年前、御嶽の上を通った島の外周を一周する道路の建設を行ったところ、工事関係者に体調を崩す人間が続出する、ショベルカーの刃が立て続けに折れるというような数々のアクシデントに見舞われ、とうとう道路工事は中断となったらしい。現在でも外周道路は西、東のそれぞれで途切れたままである。
また、海賊キッドの財宝が隠されている場所が、大神島ではないかという噂が今から70年ほど前に流行したらしい。当時、海賊キッドの財宝を巡り、ヨーロッパで様々研究ががなされたところ、とある文献の『東経一二五度の線上にある東シナ海の珊瑚礁の小さな島。その島のデス・オブ・バーレイ(死の谷)』の記述にあたる場所が大神島で、死の谷=御嶽ではないかというのである。
この噂は日本にも広まり、宝目当てに本土や宮古からたくさんの人が大神島に乗り込んだが、お宝は発見されず、宝探しのために御嶽に立ち入ったしたものは、全員が原因不明の病に侵され変死したとされる。
こうした一連の事件で、大神島は一層ベールに包まれた謎多き島として今なお伝説が語り継がれている。
決して見ることのできないお祭りや入ることのできない数々の聖域など、大神島は現在においても神々の島であり、人間の領域のほうが狭いのである。
しかし、現在は島民の高齢化に伴い祭りの担い手が居らず、1997年以降ウヤガンは行われていないらしい。かつては日本中にあったであろうこうした神と人間との交流の世界も、これからは神話の中だけのお話になってゆくのかもしれない。
