読了。
全て女性が主人公の短編。ある物語の主人公や登場人物が他の物語にも登場し、「その後」が分かる形式。
月収 (著)原田ひ香
主人公は、
月収4万円の乙部響子(66歳)、収入源は年金だが足りない。どうにかして収入を得なければならないが、ずっと専業主婦で就労経験が乏しい。
月収8万円の大島成美(31歳)、派遣社員をしながら専業作家を目指している。執筆時間を長くするため不動産投資を始める。
月10万円投資を目指す滝沢明海(29歳)、商品開発に携わる会社員、親の介護を背負うため新NISAを利用して理財に励む。
月収100万円をキープしたい瑠璃華(26歳)。高偏差値有名大学卒の専業パパ活の女性。20代のうち1億円を稼ぐことを目標にしているが…。
月収300万円の鈴木菊子(52歳)、会社経営者であったが、物語が進むと株式投資などでひっそりと暮らす。大島成美、瑠璃華、静枝と直接関わる。
月収17万円の斎藤静枝(22歳)。介護士として働いていたが、生前整理の会社を立ち上げる。鈴木成美、瑠璃華、乙部響子と直接関わる。
それぞれの物語で、なるほどなあと思うことがあったが、次のエピソードは今の自分が悩んでいることでもあるので心に残った。(太字部分は本書からの引用である)
大島成美は鳴海しま緒というペンネームで派遣社員をしつつ、小説を書き収入を得ていたが、執筆時間を増やそうと、まず築古物件投資を始めた。次はアパートで収入を増やそうとする。その資金のため、会社の残業を増やしたり、土日もアルバイトを入れたりしている。
鈴木菊子は、収入を安定してから執筆に取り組むという方法もあるが、どんな仕事にも「今この時」しかできないことがあると大島成美に話す。
「何より、仕事の筋肉っていうの?そういうのも衰えちゃうかもしれないよ」
鈴木菊子の語る「仕事の筋肉が衰える」という表現にドッキリした。
そうなのだ。仕事の分量を減らしすぎると「仕事の筋肉が衰える」のだ。勘が鈍るのだ。
その時その時に、それぞれ、程よい仕事量があり、それを超えると過労になってしまう。しかし、仕事が少なすぎると「仕事の筋肉が衰える」。難しい。
もう一つ。
家賃や通信費、水道光熱費といった、あらかじめ決まった固定費に食費を加えた支出を東京都の単身世帯の平均値である十五万とすると、月収二十万引く十五万で自由に使えるのは五万。しかし、三十万なら、十五万となる。
学生時代を除いて、東京で単身で生活したことがなかったので考えたことがなかったが、東京で1人暮らしをするには15万円は必要なのか。
会社員の滝沢明海は東京でなく埼玉県所沢に住んでいる設定で会社の寮に入って生活費の節約を試みる。
現在、初任給が上げられているニュースをよく耳にするが、なるほどねえと思った。
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京都百万遍の御菓子司「かぎや政秋」の「野菊」。
美しい包装。
一口サイズの落雁。
アーモンドの風味が美味しい。
急がずゆっくりと味わうと、より美味しい。
抹茶との相性も良いと思う。





