7月28日にアーティゾン美術館「空間と作品」展に行ってきた。
その4からの続きである。

 

その4は額縁がクローズアップされていたが、こちらは表装、表装に使われる裂地をクローズアップ。

 

酒井抱一・鈴木其一 「夏図(十二ヶ月図の内)」(絹本著色 江戸時代・19世紀)

 

 

江戸琳派ファンの私にとって、中の絵が酒井抱一、表装部分の絵が鈴木其一という夢のコラボレーション作品である!

 

 

この舌を出しているのは龍?

 

 

これは抱一の兜に、描表装で其一の菖蒲で、何だか凄い。

 

 

これは素敵!同じモチーフを中と外で違う絵師が描くとは。

 

 

「鳥獣戯画断簡」 (紙本墨画 平安時代・12世紀)

 

 

おお。こちらにも「鳥獣戯画」があったのか…。

2021年4月の東京国立博物館「国宝 鳥獣戯画のすべて」展の図録を引っ張りだして見てみた。

 

「国宝 鳥獣戯画のすべて」図録には、アメリカの個人が所蔵し、もとは高松家に所蔵されたことから「高松家旧蔵本」と呼ばれているとあった。

 

この図録には、断簡や模本も使っての「復原案」が掲載されており、こちらの断簡もしっかり掲載。

 

まず、「益田家旧蔵本」と言われる断簡で、烏帽子を被った猿が鹿に乗り、ウサギが狐に乗っているシーンがあり、次にこの2匹がレースをしている様子が描かれている。

 

レースの様子を見ると猿がウサギの耳を引っ張って走行妨害をしているようだ。

反則!?

 

復原案では、その「益田家旧蔵本」の次に、この「高松家旧蔵本」が続く。

 

 

右に、痛そうな顔をしている烏帽子を被った猿が描かれている。

ウサギの耳を引っ張る反則をしたせいで、鹿から落ちたのではないかと図録の解説に書かれていた。なるほど。

 

この作品は昨年修復されたそうである。

その際に、より絵が活きるように表装を見直したそうだ。

 

 

旧表装はQRコードで見られるようになっており、見てみると中廻しが青字に金色の円形の模様が入っている裂地、一文字はクリーム色で金色の模様が入っている裂地で、全体的に明るい感じ。

今回のほうがかなりシックに思った。ふむふむ。なるほど。

 

 

青木木米 「秋渓渡橋」 (紙本墨画淡彩 江戸時代・19世紀)

 

 

これはユニークな表装である。裂地1種類である。

青木木米といえば、昨年2023年2月のサントリー美術館「没後190年 木米」展を思い出す。陶工であり画家の木米、こちらも良い感じの味が出ている。

 

 

 

中国 景徳鎮窯 「五彩龍神仙文小鉢」 (磁器 明時代万暦年間・1573-1619)

 

 

この共箱が…よく見るととても凝っているというか。

蓋の下?これは蓋の一部か?違う木材が使われているような。

 

 

風呂敷の布地も素敵である。

 

 

薩摩・竪野窯 「薩摩肩衝茶入 銘『松波』」 (陶器 江戸時代・17世紀初頭)

 

 

仕覆には興味津々。

こちらの共箱も蓋の部分がユニーク。モダンな感じもする。

 

 

豊臣秀吉 「書翰」 (紙本墨書 安土桃山時代・16世紀)

 

 

解説によると、一文字と風袋に「あちこちに継ぎがあります」とある。

単眼鏡でよく見たが・・・・

 

 

風袋のこの部分の継ぎは良く分かったが、「あちこち」まで探せなかった。

継ぎをしてまで使ったのだから、貴重な裂地だったのだろう。

 

 

とてもセンスのある表装。

 

「空間と作品」展。大変見ごたえがあった。

 

解説がとても良かった。

そして、さらに読みたい人向けに、続きはQRコードにより、自分のスマートフォンで(ゆっくり椅子に座りながら)解説が読めたり、図、写真なども見られた。

 

イスなども十分にあったし、応挙の襖絵の前の畳にも座れるし…

3時間以上も鑑賞していた。

実はもっと見ていたかったのだが、お腹が空いてしまって断念。

 

もう一度行くならば、ミュージアムカフェでランチの予約をして、腹ごしらえを済ませ、それから鑑賞したいと思う。