サントリー美術館に行ってきた。
久々に「メンバーズ貸し切り特別内覧会 スライドレクチャー」に当選した。
「メンバーズ貸し切り特別内覧会」は休館日に催されるのだ。
「スライドレクチャー」でのメモを記録する。
名品とは何か、迷品とは何か、からスライドレクチャーが始まった。
「迷品」は、造語であり、あまり出品されてこなった作品などを指している。
心が動かされれば「名品」になるのでは?とのことだった。
本展覧会が企画されるきっかけになったのはこちらの作品らしい。
鞠・鞠挟 一組 (江戸時代 18~19世紀)
サントリー美術館内展示2回、他館貸出展示3回
元々は、「なぜか鞠がある」という存在だったようだが、専門家に、状態が良い、形が良い、真ん丸の完全な球形と絶賛され、認識が変わったということだ。
つまり、「迷品」から「名品」へと変化したということか。
又、鞠挟のラック状の形は、かなり特殊らしい。
第1章 漆工 生活を美で彩る
椿彫木彩漆笈 (室町時代 16世紀)
これは、修験者が背負って旅に用いるものだそう。
仙台藩に伝わる品。
鎌倉彫の技法が使われ、花の芯、露の部分は金箔が使われている。
椿は魔除けの意味があるそうだ。
福島県立美術館、福島県・示現寺にそっくりなものがあり、両方とも重要文化財に指定されている。
同じ工房の品だと思われる。
どのように背負っていたのか…。
紐を両肩にかけてリュックサックのように背負うそうだ。
サントリー美術館の品には、上の写真のとおり、穴が開いているだけだったが、
福島県立美術館の品をスライドで見ると、この部分にフックが付いており、紐が付いていた。けっこう細い紐で、肩に食い込まないか…とふと思った。
扉が観音開き、中は3段で具注暦が貼られている
朱漆塗豆子(ずつ) 五口のうち (江戸時代 18~19世紀)
朱漆塗楪子(ちゃつ) 五口のうち (江戸時代 18~19世紀)
サントリー美術館内展示1回、他館貸出展示2回
元々は飲食器で、後に茶器としても使われたそうだ。
「ちゃつ」は鎌倉時代、禅僧が伝えた中国語、「宋音」。
「壒嚢鈔」(あいのうしょう 室町時代中期に編纂された辞典」には、なかなかの長文で記載がある。源氏物語にも登場する古い言葉らしい。
第2章 絵画 おおらかな心で愛でる
十二ヶ月景物図巻 画/土佐光芳 書/櫛笥隆望 二巻 (寛延2年・1749)
余白が多い、あまり主張がない作品とされるが、和歌として見ると…違う味わいがあるようだ。
私はこの作品は、とても好きである。モチーフの配置が良いと思う。
第3章 陶磁 人類最良の友と暮らせば
重要文化財 白泥染付金彩薄文蓋物 尾形乾山 (江戸時代 18世紀)
サントリー美術館内展示19回、他館貸出展示29回、合計48回も展示。
つまり、毎年どこかで展示されている計算になるらしい。
確かに、よく目にするような気がする。
「月」の形?と言われているが、いびつでは?とのこと。
出光美術館の類品を見ても、正方形だったり、しっかり円形だったりする。
これは焼いているうちに歪んでしまったのではないか。
乾山作品には、歪んでいる物は割とあり、採算性を重視していたのではないか、とのこと。
第4章 染織と装身具 装わずにはいられない
平四目紋革羽織(一番組よ組) (江戸時代 19世紀)
サントリー美術館内展示1回(昭和58年・1983)のみ。ほう…。
「よ組」のトップである「頭取」が着用。
「よ組」は威勢が良い、背面に「田」の文字がデザインされており、これは「神田」の「田」。
防火着、明暦の大火(1657)以降に大流行、一般のファッションとしても現代の「革ジャン」のように着用される。
第5章 茶の湯の美 曇りなき眼で見定める
織部唐草梅花文井戸車 美濃あるいは瀬戸 (江戸時代 19世紀)
元は井戸の滑車だったが、窯敷として使われ、現在まで伝わっているとのこと。
第6章 ガラス 不透明さをも愛する
乳白色ツイスト脚付杯 日本 (江戸時代 18世紀)
脚の部分のレース模様の色が淡い。
つまみ脚付杯 日本 (江戸時代 18~19世紀)
こちらの足の部分は何となく団子状になっている。
この2点は、職人が外国の品を見て、何とか真似しようと独自の技法を編み出したそう。
中央の2点が上の2点。両端の作品は外国製。
当時の職人は、この外国製を見て、真似ようと思ったのか。
スライドレクチャーを聴講して、作品の背景を知ると、今まではあまり興味が持てなかった作品もかなり魅力的になった。
いやー、面白かった。