読了。
小村雪岱の展覧会で、「おせん」の挿絵作品を鑑賞し、果たしてこの物語は・・・と思っていたところ、
新漢字、新仮名遣いでの本書なら読める!しかも挿絵付き!
おせん 東京朝日新聞夕刊連載版 (著)邦枝完二 (画)小村雪岱
本書は、こんな感じである。
字も大きめだし、挿絵が良かったのは言うまでもないが、物語が非常にテンポ良く、次々と事件が起こり、一気読みしてしまった。
物語は、美人で有名な茶屋の看板娘のおせんの行水シーンを覗き見しようとする若旦那と、それを手引きする浮世絵師春信の彫工である松五郎の様子から始まる。
これって、新聞連載小説だったのよねえ・・・と思いつつ読んだ。
登場人物のキャラクターが濃い!
おせんのストーカーっぽい絵師・春重(浮世絵師春信の弟子という設定)、この人がおせんの爪を集めて煎じて楽しむのだ。
近所の人は、膠を煎じて画材を作っているのだろうと思い、非常に臭いが大目に見ていたようだ。
実は・・・ひええ・・・。
絵は上手いが、ずいぶん変わったタイプの人物に描かれている。
この春重って、実在の人物なのだろうかと、検索してみると・・・。
鈴木春重は、なんと、司馬江漢の青年時代の鈴木春信門下で浮世絵を学んでいたときの名前だそう。
その後、西洋絵画なども学び、日本で初めて腐食銅版画を制作した、などなど。
私、司馬江漢の版画や西洋画を見たことがあるぞ・・・。
おせんの兄は借金まみれで、よからぬことを考え、
おせんファンの若旦那も絵に描いたようなダメンズ。
なんと言っても、絶世の美女であるおせんも「かなり」である。
幼なじみで歌舞伎役者の瀬川菊之丞(この人も実在の人物)にずっと想いを持ち続け、
現在の菊之丞は妻帯者であるが、やはり想いは変わらず、
なんと人形師に菊之丞の「生人形」を作ってもらうほどである。
そして、このおせん。
笠森お仙さんは実在の人物で、浮世絵師の鈴木春信のモデルになっていたことも本書と同じ。
小説は、菊之丞が亡くなるところで終わっていたが、実際の笠松お仙さんは、嫁いで9人の子宝に恵まれたらしい。
ほう・・・。