4月に読み始めた島崎藤村の「夜明け前」。やっと第一部の下を読了。

 

なかなかページが回らなかったというのが正直な感想。

 

第一部の下は、文久三年から大政奉還までの動乱の時期が扱われる。この馬籠の宿場町もこの動乱の時代の影響を受ける。倒幕や攘夷などの様々な時代の流れが通り過ぎていく。参勤交代は廃止されたとはいえ、この宿場町も影響を逃れることはできない。その流れの交錯の中から、明らかになってきたのは、幕府の権威の凋落と王政復古への流れだ。さらには、主人公の一番の関心事でもある、足元の宿場という制度が維持できなくなってきているのだ。しかし、本書は、一種の高揚感の発露で締めくくられる。「今一度、神武の創造へー遠い古代の出発点へーその建て直しの日がやってきたことを考えたばかりでも、半蔵等の眼の前には、何となく雄大な気象が浮かんだ。」

 

気分の高揚感はわかった。ただ、なぜこの木曽路の山奥の中でまで、これほどまでの気分の高揚が起きたのか、そこの機微を本書から理解することは、難しい。