どういうわけか、中国共産党に関する作品は、80年代に中嶋嶺雄氏の作品を多数読んで以来ご無沙汰だ。英文となるとその数はほんの数冊だけだろうか。どういうわけか、僕は英米の中国研究者がもつ独特の癖が気になってしまうのだ。
本書は、タイトルにひかれて読んだようなものだ。タイトルは一見して、Edgar Snowの悪名高い作品、「Red Star over China」をもじったものだろう。中身は、中国共産党(CCP)の創設以来、中華人民共和国の建国までの歴史を扱ったものだ。いうまでもなく、著者はpanda huggerともいうべき一連の学者ではない。そしてCCP自体により編纂された内部資料を基にした作品だ。
だが、読後感はいまいちなのだ。CCPの党内権力闘争、国民党(KMT)との錯綜した関係、そしてあまり触れられていないソ連との深い関係など参考になった。ただいくつか気になる点が。まず、著者は日本語は読めないようで、日本との関係については、他の作品に二義的に依拠する部分が多く、一面的な角度からの描写に終始し、この日本とCCPの闇ともいうべきかかわりには接近できていない。また、本書は、当時の中国現地の英字紙の記事に依拠する部分が多く、この英字紙の信頼性にはその質とデータに関しては、大きな疑問が残るのは言うまでもない。日本の状況をJapan Timesの記事から分析するようなものだ。
確かに、CCPの存在は限りなく小さく、その歴史のほとんどは、KMTに対するローカルなゲリラ活動の域を出ていなかった。そのような存在のCCPがなぜ、KMTとの内戦を経て、PRCの建国にこぎつけたのか、その謎の解明はわかりやすくなされてはいない。CCPの有無を言わさぬ残酷でニヒリスティックで機会主義的な戦略と宣伝戦術、決定的な戦いの拒否、ソ連からの金銭並びに軍事的な援助、さらにはアメリカのKMTに対する援助の不十分さが挙げられている。どれもその通りだろう。だがすべて既知の経緯だ。
おそらく、本書には全体としてのまとまりとソ連の戦略に対する理解が欠けている。特に、日本の降伏後繰り広げられた中国北東部での内戦の部分がわかりにくい。そして毛沢東に代表される中国人のニヒリズムとその恐ろしさが描かれていない。結局のところ、この20年以上にもわたる現代史が臨場感を持って迫ってくることはない。著者にはほかにも著作があるが、おそらく読むことはないだろう。

