続けてこのシリーズを読んでいる。出版時期でいくと、「Our Man in Camerot」の次は七冊目の「War Game」となるのだが、ちょっと目を通してみたが、どうもなじみがない英国史のテーマだ。さて、どうしようか、というわけで、本シリーズの第二作「The Alamut Ambush」に戻ってみた。

 

この作品は、購入時の1984年に50ページほどは読んだことがあるが、途中で放棄したまま。

 

全体で189ページの短さ。今回あっという間に読み終えての感想だが、このシリーズの中では、珍しく歴史のミステリーが中心に据えられていない作品だ。舞台は、文中の中でエジプトのナセル大統領がまだ存命との言及があるので、1970年の前半と特定することが可能。この時代のディテールが満載の作品。

 

発端は、英国外務省の中東担当の責任者の車が盗まれ、爆弾が仕掛けられ、その処理にかかわった担当者が死亡したことに始まる。この解明にDavid AudleyとHugh Roskillが調査チームに召集されることになる。この中東担当の責任者はDavid Audleyと因縁のある人物。そして、英国の仲介で中東での和平イニシャティブが取られているという微妙な時期と設定されている。

 

短いページながら、当時の中東の微妙な情勢(1967年の第三次中東戦争の三年後)、様々な中東のテロリスト組織(PLO, PFLP)、英国の上層部に根強く存在するアラビストの勢力などが、著者の独特の英語の言い回しで、過不足なく説明されていく。話はその発端から解明までわずか数日で完結する。その中で、この謎にかかわる大掛かりな陰謀が明らかにされていく。今回は現代の謎と歴史の謎が交錯していないので、他の作品と比べると、格段にわかりやすい。

 

読後感としては、中東情勢の不変さといっていいだろう。この作品の舞台となった時期から50年以上が経過しているにも関わらず、この地域の基本的な構図は変わっていない。組織の名前は変われども、テロリスト組織は相変わらず存在している。アラブ諸国の中での利害の対立もそのまま。そしてイスラエルという国家は存在しているものの、その基盤は相変わらず危うい。

 

本書には、Aubleyだけでなく、その後の作品でも少なからぬ活躍をするButlerやRoskillも登場する。そういう意味で、このシリーズは出版時期の順に読むべきだろう。