amazonのサイトを見ていた見つけたこの作品。タイトルからして刺激的。ケインズ氏の革命。
ケインズとは言わずと知れた著名な経済学者。私ですら、彼の一般理論は別としても、「Economic Consequences of Peace」やいくつかの論評は読んだことがある。このケインズを主人公とした小説ということで、さっそく読んでみた。
中身は、なかなかの出来上がりだ。ケインズが1919年のパリ講和会議の席をけって退場する場面から、本書はスタートする。その後のストーリーは、、ケインズと後に彼の妻となるロシア出身のバレリーナ、ロコポヴァを中心として、展開される。だが、本書にはそれに負けずと劣らず、ケインズを取り囲むブルームズベリーグループのメンバーも多数登場する。そしてそれに劣らず、スペースが 割かれているのが、いわゆる高踏派ともいうべきbloomsbury groupの対極に位置づけられる、ケインズのロンドンでの家であるgordon squareで雇われている召使や女中たちだ。どれも実に個性的な人物たちだ。さらには、当時の英国が国策としていた金本位制への復帰をもくろむ政財官界の著名人が多数登場する。第一次大戦後の英国の経済政策をめくる論争も、わかり易い形で本書では取りあげられている。
この多様な公私の人間関係が、この作品の醸し出す独特の雰囲気を特徴づけている。ケインズの交際範囲は実に多岐にわたっている。この多岐にわたる交際範囲こそがケインズという人物のトータルな魅力なのだろう。ケインズは対立をはらむこの公私の人間関係を壊すことはなく、自身の大事とする価値を実現しようとして、様々な公的な活動を繰り広げるのだ。
さて、「ケインズ氏の革命」というのだから、どこが「革命」なのかという疑問が出てくるのだが、彼の師でもあるアルフレッド・マーシャルの古典派経済学との決別が示唆されているが、ケインズ革命と呼ばれる学問上の功績は、この作品が扱う1925年までの時代の後の話だ。作品上では、明確に革命とは述べられていないが、それはおそらくロコポヴァとの結婚による、彼の長い同性愛歴の終了を示唆しているのではと思われる。
本書には続編がある。おそらくそこでは、いわゆる「ケインズ革命」が取り上げられることになるのだろうか。

