下巻は主人公の出世物語。いくつかの偶然をきっかけとして、主人公は徐々に藩政つまり政治への関わりを深めていくこととなる。つまり異例の出世。そのカギは例の新しい開墾地の開拓だ。江戸から来た測量士の助けにより、開拓は一歩一歩進められていく。そのカギは豪商の金を利用しての開拓だ。今の言葉でいうと民営化というかproject financeだ。
この帰結は、過去の友人である人物との対立を生み出すことになる。この対立は対立する派閥の一掃にまでつながる。これで一応はめでたしめでたしとなるのだが、ここにもう一人の友人から果たし状が送られてくる。つまり本作品の発端に戻るのだ。ここから先を語るとネタバレになるのでこの程度しかかけない。
本書の最後は、主人公の独白で締めくくられる。この独白はどう理解したいいのだろうか。清濁を併せ呑み、たどり着ける場所にたどり着いた。ただどれほど当初の思いが実現できたというのだろうか。政治は可能性の技術といわれるが、可能性の追求の果て(風の果て)に待ち受けていたものは?
読後感としては、地味の一言に尽きる。長編ということもあり、「春秋山伏記」や「義民が駈ける」よりは面白かった。ただ最後まで明らかにされないのは、この果たし状の背景だろうか。どうもこの背景が説得力を持って語られてはいないのだ。またこの果たし状の送り手に関するいくつかの謎もかたられることのないまま終結ということになる。これは本作品の無視できない瑕疵といわざるを得ない。
