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武満徹・音楽創造への旅
4,320円
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逆説的な意味で「幸運」な時代
こんな作品が出てたんですな。小さな文字で700ページ。立花氏の作品は、昔は「日本共産党の研究」や「革マルvs. 中核」等の作品は読みましたが、その後はどうも彼が選んでくるテーマに興味が持てずにだいぶ御無沙汰。武満氏に至っては氏没後に古い映画の音楽のクレジットでよく見るようなったくらいの知識しかなく、その経緯で一枚のdiscを持っているだけ。というわけで本来なら手を出さない作品なんだろうけど、どういうわけか昨年末から読むことと相成った。
僕は音楽のことはわからない。ましてや現代音楽となると。というわけでもっぱら戦後史という観点から読み進めた。そういう意味では非常に面白い。戦中派ともいうべき武満氏がどういう経緯でまったく正式の音楽教育を受けない中で、それも食うにも事欠いた10代後半(1940年代後半)からこの現代音楽という世界に入っていったのか。様々な人(若者から壮年の人物も含めて多数の著名人が登場します)との出会いと新しいメディア(テレビやラジオなどの民間放送や日本映画全盛)の勃興という僥倖のもとで、武満という人物が、一歩一歩その才能を開花させていくプロセスがいきいきと再現され描かれている。いつもの立花氏のスタイルで、本書は武満氏とのインタヴューだけでなく様々な周りの人物への取材により内容が補強されているのだが、武満氏の著作からの引用も膨大になされている。驚いたことに武満氏の著作というのは長年にわたってたくさん存在するのだ。この武満氏の著作からの引用がまた面白い。その時々の氏の真摯な思いと考えが赤裸々に綴られているのだ。そしてそこにはいうまでもなく伝統と破壊という永遠のテーマが潜んでいる。ただ武満氏の活動の根源の秘密についてはいくつかのヒントがちりばめられているものの、立花氏自身うまく整理がつけかねているようだ。

