talebの久しぶりの新刊です。taleb節は健在です。人を食ったところは本書では若干抑えられていますが、positive thinking 満載のhow-to本とは対極を行く、silver ruleやvia negativaのいつもながらの作品です。ひと月ほどかけて読了しましたが、ちょっと時間をかけ過ぎた見たい。とはいえ、amazonに以下のreviewを投稿しました。
talebの新作です。前作Antifragile: Things that Gain from Disorderのとは異なり、ちょっと前のThe Bed of Procrustes: Philosophical and Practical Aphorisms (Incerto)スタイルに似ているようです。繰り返しになるけどシオランを読んでいるようです。そう格言集に近いのかな。アメリカの文脈でいうとhow-to本に分類されてしまいますが、ただしアメリカ流のpositive thinkingやgolden ruleの押し付けではなく、talebらしくvia negativaやsilver ruleの集合なんですわ。もっともこれは著者のpersonalityや育ちのみに由来するのではなく、巻末のtechinal appendixに示される彼自身の研究に基づいているのですけど。
それぞれの「格言」は深いインプリケーションを持つものです。bob rubin trade, scientism, minority rule, intellectual yet idiot (IYI), virtue merchandisingなどに代表される切り口は、どれも現代社会の本質を鋭くえぐっています。ただ本書はどうも全体のまとまりに欠けるようです。これはタイトルのskin in the game という言葉の豊潤な意味がどうも捉えきれないのかもしれません。いつものように聖書も含めた様々な古典がこのskin in the gameの議論のために援用されるのですが、どれもなじみがあまりない古典なのです。そして議論は宗教にまで伸びていくのです。
一方で、議論の中で繰り返し援用される概念は、最近のThe End of Theory: Financial Crises, the Failure of Economics, and the Sweep of Human Interactionとかなりoverlapするのです。ergocity, emergent, heuristic, computational impossibilityそしてuncertaintyなどの概念は両者に共通しており、結局のところリスク管理の議論をその根源にまでさかのぼって誠実に詰めていくとこれらの概念にたどり着くようです。
さて結論からいうとこの本の正確な理解には再読が必要です。著者の作品はどれもが不思議な混合物なのです。一度目は全体を通して途切れることなく読み通し、そのイメージが強く残っているうちに、今度は丁寧に最初から読み直す。問題は本書の正確な理解にはつまるところ、technical appendixを理解できるほどの数学的な基礎が必要な点なんだな。

