https://www.amazon.co.jp/gp/customer-reviews/R2Y01P7Q8ZAMFG/ref=cm_cr_dp_d_rvw_ttl?ie=UTF8&ASIN=4124022018

 

さすがにこれは滋賀観光協会お勧めとはならない作品ですわ。

著者の作品は、近江を描いたもの、「湖北の女 (集英社文庫)」、「湖(うみ)の琴 (講談社文庫 み 1-1)」を中心に読んできたため、代表作ともいうべき作品は未読のままでした。やっとのことで手に取ったのが、この「雁の寺(全)」です。京都の禅宗の寺を舞台として描かれたのが、「雁の寺」ですが、その後「雁の村」「雁の森」そして「雁の死」と継続されたものが、相当な時間を経過して大幅な修正を経てまとめられたのが「雁の寺(全)」のようです。
 

「雁の寺」の結末で、その後の展開はすでに暗示されていますが、舞台となる寺を若狭や京都と変え、最後の「雁の死」ではすでに暗示されていたものが明示される形で全編は締めくくられるというわけです。驚いたことに、最後の「雁の死」の舞台となる寺は、近江高島の背後の朽木の寺と設定されているのですわ。

 

全編を通して流れるのは異様なまでの暗さともはや消え去ってしまった過去の習俗です。まだ寺が人々の社会生活の中で重要な役割を占めていた時代を背景としながら、気候、風土、寺そして中心人物の造形のすべてがこの暗さに収斂していくのです。光や太陽や明るさを感じさせるシーンが思い浮かばないのです。登場する女性の運命は時代を反映し、どのケースでも似通った事情を背後に抱えており、悲しいものですがもはや現実感を与えるものではありません。