コンビニたそがれ堂 (ピュアフル文庫)/村山 早紀
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 久々に大号泣の感動作に巡り会いました

 登場人物たちが可哀想で切なくって愛しくって、胸が締め付けられる作品です


 舞台は風早町、コンビニたそがれ堂

 お稲荷さんの赤い鳥居の傍にあるこのコンビニは、大事な探し物をしている人だけが見つけられるお店です

 銀髪に金の瞳、紅白縞の制服を着た、ちょっと美形なお兄さんが店番をしています


 はっきり言ってこのお兄さん、お稲荷様の化身です

 心に痛みを抱えた人の前にお慈悲を与えに現れるのでしょう


 お慈悲を与えられるのは、本当は心優しいのに、ちょっとの手違いで後悔したり、悩んだり、傷ついてしまった人々

 彼らの心根が美しいからこそ、神様の優しさが余計に身に沁みるのです


 この作品は5つの短編から成り立っています

 その中でも私が一番好きな作品は「あんず」

 あんずというのは仔猫の名前です

 生まれて間もない頃に母猫が重い病で亡くなってしまい、今の飼い主のお兄ちゃんが拾ってくれました

 幸せに暮らしていたのも束の間、あんずは自分が母猫と同じ病に罹り余命幾許もないことを予感します

 最後にせめて大好きな飼い主のお兄ちゃんに「ありがとう」を言いたいあんず

 あんずはいつか母猫から聞いた探しているものが何でも見つかる魔法のお店「コンビニたそがれ堂」を訪ねます

 そこで「人間になれる薬」を手に入れ、お兄ちゃんに会いに行くのです

 そこで初めて聞かされるお兄ちゃんのあんずへの想い

 小さい頃に父親を亡くし、長男として家族に心配をかけないよう必死で食いしばってきたお兄ちゃんの心の支えがあんずだったのです

 お互いがお互いの存在に感謝していた生活のことを思うと、胸がいっぱいで、こうやって紹介しながら涙が出てきそうです

 本当に美しいファンタジー

 この本の読んでいる間は、魂の洗濯、癒しの時間です


 さて、この作品を気に入ってくださった方におススメするお話は、香月日輪さんの『妖怪アパートの幽雅な日常①』 です

 この作品はシリーズ物で、ヤングアダルトのレーベルから発売されていましたが(全10巻)、講談社文庫でも刊行しています

 講談社文庫では現在1~2巻が発売中

 「妖怪アパート」は、現実と非現実が交錯したような場所に存在していて、それが「たそがれ堂」に似ているように思います

 また、癒しの物語であるところも共通点です

 『コンビニたそがれ堂』よりはコメディタッチに仕上がっています

 非現実的な場所というところに着目すると、木地雅映子さんの『マイナークラブハウスへようこそ!』 もおススメです

 「マイナークラブハウス」という、弱小部活の部室が集まっているクラブハウスで、破天荒なお祭り騒ぎが繰り広げられるのが魅力です

 というと、完全にコメディのようですが、そのお祭り騒ぎこそが癒しなのです

 部員たちにはそれぞれ思春期特有の悩みを抱えていて、それが物語に深みを与えています

 是非是非ご一読を(^^)