イギリスで飲むジントニック、倫敦屋酒場で飲むジントニック | バーテンダーは心の名医

イギリスで飲むジントニック、倫敦屋酒場で飲むジントニック

 商社マンです。

 イギリスで飲むジントニックは、氷の入ったグラスにジンとトニック・ウォーター、

 そして薄切りのレモン・スライスが入ったものでした。

  私はてっきり倫敦屋酒場で頂くライム入りのジントニックがジントニックだと思

 っていたので吃驚しました。フランスで頂いた時もそうでしたが倫敦屋酒場の

 ジントニックは何故ライムなんですか。

        (商社マン)

 実は私のオリジナル・カクテルです。

  ライム入りジンTニック発祥のバーとして世界にも知られていますが、1964年

 の東京オリンピックの時に、選手村総料理長の村上信夫氏が、イギリス領の

 選手たちは紅茶を飲まれるのでレモンの輸入を解禁してほしいと申し出てレモ

 ンの輸入が解禁されました。大阪万博が1970年に開幕され、1971年から外国

 人の来日が増えて洋酒の輸入が解禁されました。万博を契機に各地にホテ

 ルが出来るようになりました。それまでは外国人観光客のの多い 箱根、横

 浜、日光、奈良、佐世保、上高地、軽井沢にホテルがありました。金沢には

 白雲楼ホテルがありました。マッカサー元帥の奥様もお泊りになられました。

  金沢で初めてシティ―ホテル都ホテルが開業したのが1963年、奇しくも私が 

 バーテンダー修業を開始した年です。

  倫敦屋酒場はその6年後の1969年に開業しました。まだ都市型ホテルは都

 ホテルしかありませんでした。

  金沢最初のシテイ―ホテル「金沢ニューグランド・ホテル」の開業は1972年

 

でした。

  1974年になってシトラス(柑橘類)が輸入解禁になりました。

 当時 ライム、グレープフルーツは大変高価なものでした。ほとんどのホテル

 でもポッカ・レモン、ウエルチ・グレプフルール。ジュース、明治屋ライムジュー

 ス・コーデアルを使用していました。生レモンジュースを使ったジンフイズがつく

 れないとバーテンダーじゃないと言われた時代です。

  倫敦屋酒場でリスクを避けた、シトラス抱き合わせ輸入 に合わせライムを

 ケース買いしていました。ところが痛みが早いので何にでもライムを使用して

 いました。当時一個350円から380円というとても高価なものでいろいろのカク

 テルに使用していたところ、ジントニック が大人気となって独り歩きしてしまい

 ました。今でこそ「生ライム入りジントニック発祥のバー」として広く知られるよ

 うになりましたが、経緯は苦肉の策だったのです。

 

  イギリスでは ジー・アンド・ティ―(G&T) とも GTとも呼ばれ親しまれてい

 ます。しかし、レモンスライスは本来のレシピです。ロー(法の国)ですので、私

 の考案したジントニックをお飲みになりたい時は、

 「フレッシュ・ライム・ツイスト プリーズ」

  とおっしゃって頂かなくては、レモンスライスの入った 国際標準のジントニッ

 クしか出ません。

  まあ、オリジナルの名前をつければよかったのですが、混乱を招いたのは私

 の軽率にあります、が、最近アジア諸国でもハワイでも西海岸でも ジントニッ 

 クと言えば生ライムを呈したものがつくられています。

  増々の混乱、伏して陳謝致します。

 しかし、外国人の方々も 生ライム入りジントニック 発祥のバーで飲まれる方

 が多く来店されて、『生ライム入りジントニック』 が世界スタンダード・カクテル

 になったことに バーテンダーとしての誇りを感じている次第です。