大法螺釣行記  雪の野々木鼻 1 | バーテンダーは心の名医

大法螺釣行記  雪の野々木鼻 1

     大法螺釣行記

        雪の野々木鼻 早合わせ

 

   「オオ 自由」

    二人 はからずも同時に声をあげた

    愛竿を手に

    自由を勝ち取る為に

    今、解放のクーデターは始まった

 

「人類最古の趣味は釣りだ」

と、我々二人は酒精に犯された朦朧の頭でそう結論づけた。

 確かに収穫という生命保持の信念を持ち合わせながら、ヨチヨチ歩きのチビ太をリリースするという未来への希望というケミッテテックな精神も、我々のジェントルマン魂をくすぐることはくすぐったのではありますが、如何せん最優先事項は、自由 だ。君主実権主義からの独立である。

 でありますが、武器はとらず、竿を取った無血革命だ。

それに釣りとなると、女房どもも一寸は収穫をあてにする。そちらも原始の時代から培った女性のⅮNAというものだ。久々にその原始時代の収穫を待つ女の血が復活するに違いない。なにしろ銭勘定に長けていて亭主の稼ぎとなると妙に殺気立ってくる。

そこで、釣果があって家計が救われるとなると甘くなるに決まっている。なにしろ、山や川や海がお相手ではお姉~ちゃなんか決していない。

 となると、家計が助かり自然相手、これぐらいは許さないことには、女がすたると考えるに違いない。

「増してやネネ君、獲物をひっさげて帰宅してごらんなさいよ。さすがオノコと傅くに違いありませんよ」

「カ、カ、カシズク…」

「そうです。傅きます。結婚当初1、2ヶ月、確かにかすかに傅いていたあの時が帰ってきます。復権の時です。女の弱点は貢ぎ物であり、経済力だ。すべての女はそれに縋っている。それが習性だ。そして、古代から組み込まれている、その一つが収穫だ。

自分も喜び、収穫によって女の泣き所 貢ぎ物 で有無もいわせず傅かす」

「う、うむも言わさず…ですか」

「収穫だ、貢物だ。経済力が女をしたがえる。まあ、2,3号ぐらいは持ってよいというような経済力は持ってないが、収穫なら、釣果なら、女房殿も傅くに違いない」

「………」

「復権、権力を取り戻して、自分だけのうらうらとした時間を獲得する、ならば 

釣りは言うことなしです」

 

 ネネ君は、かっては 剃り込みツーリングクラブ のリーダだった。ですから、運転は実に上手い。だだし、美人がいると、わき見運転 をするのが欠点だ。

「私が代わりに見とくから、君はしかっり運転を頼むよ」

とまあ、私も美人には弱い。

ところが能登では、就職先がなく若い女の子はからっきしだ。それに雪が降ってきた。

「これは、良い釣り場は空いているに違いない」

人っ子一人歩かない能登路に釣果への期待は天井知らずに高まって二人顔まで鬼瓦権造

バリに火照ること頂点となってきた。