村上春樹と私 | 読書至上主義

読書至上主義

毎日1冊は本を買ってしまうワタクシの雑感です。

イスラエル最高の文学賞「エルサレム賞」の授賞式に村上春樹が出席した。

滅多に見ることのできない彼の姿をTVで目にしてファンは嬉しい限りだろうが、まさか彼があんな演説をするとは思っていなかったので、本当に思い切ったなと感心しました。

素晴らしいスピーチ。歴史に残るはず。英語のイントネーションはイマイチだが、文章と語彙が熟考され練り込んであるのはさすが。


主人は村上春樹の大ファンである。私は彼の作品にそこまで傾倒していないものの、易しい文章で実は難解なことを書いている人だと思う。最新短編集『東京奇譚集』は面白く読んだ。


昨秋滞在したロンドン。Charing Cross Rd.の有名な書店「Foyles」では、村上春樹が大きくフィーチャーされていたので日本人として誇らしかった。授業で必要なOxfordの英語テキストを買いに行ったのだが、思わず下記の写真を撮影した。春樹の新刊“What I Talk About When I Talk About Running”(邦題:『走ることについて語る時に僕の語ること』)を一緒にレジへ運び、店員に「彼は人気があるのか?」と聞いたら、“Oh, yes! Yoko OGAWA, too.”と笑ってくれた。どうやらイギリスでは、小川洋子も受けているらしい。



読書至上主義-ロンドンの書店に並ぶ村上春樹の本  

ロンドンの書店「Foyles」の棚に並ぶ村上春樹の本



村上春樹とは少し縁がある。

1994年夏の7月~8月末まで、私はマサチューセッツ州のケンブリッジにて、ハーバード大学のサマースクールに参加した。「Introduction to International Relations」の単位を取るため、ハーバードの寮にて生活をした。親友はタフツ大学でサマーを取ろうと私に提案していたのに、私はミーハー心からハーバードに決めてしまった。だって、わざわざタフツへ行く理由がわからなかったからだ。

後に出版された村上春樹のエッセイ『うずまき猫の見つけかた』(あるいは『やがて哀しき外国語』だったかもしれないが)を読んで、ちょうど同じ時期村上春樹は2年程ケンブリッジに住んでいたことを知る。しかも、タフツ大学で教鞭を取っていたらしい……。残念だった。

友人の言うことを聞いていれば、ひょっとしてキャンパスでお会いできたかもしれないのに。

それでも、たった2ヶ月だけとはいえ、村上春樹と同じ街に生活し、同じ空の下、同じ空気を吸っていたことを、とても嬉しく思った。ケンブリッジの街は狭い。Harvard Squareのカフェなんかで、ひょっとしたらすれ違っていたかもしれない。Who knows? Only God knowsだ。


その後、11年の時が流れて2005年の5月末。友人が明治神宮で結婚式を挙げた。招待されたので、久しぶりの東京を訪れた。翌日、青山一丁目から赤坂見附方面へ歩いていたら、通りの向こうに青い帽子を被ってランニングする中年男性を見かけた。それは、村上春樹氏だった。間違いない! 私の心臓が一瞬止まりそうになった。


彼は素晴らしい作家だと思う。彼の文章を読むと、呼吸が気持ちよくなる。あの心地よさに日本人のみならず、多くの外国人がハマっていくのはなぜだろう。

本当に魅力ある作品を書くと思う。