何処か見当もつかぬ田舎の
駅舎もない無人駅。
古い枕木加工の手作りベンチに
邪気無く座り込んで
何時来るとも判らぬ気動車
微妙に膨れながら待つちびデブ。
確かに記憶にある景色なんだが
其れが何時何処だったかが思い出せぬ。
過去の遺失物係の窓口に行き
行方を尋ねてみようか、とも思う。
不思議なことに殉愛の
何処か甘い疵(きず)の記憶は
夏の匂いと眩しさと草いきれが纏わりつく。
少なくとものすじいの場合は、かも知れんが・・
冬の記憶は温いがもっと痛みが強い。
色んな意味で迷い追い詰められて居たからか。
時が決して思い通りに遡及せぬことは・・・
此の世で一番の救いで、また業罰かもな