本屋が見かけて面白さうだつたので、これは生徒が読んだら役立つのではないかと思ひ図書館にお願ひして購入してもらひ、まづ自分から読ませてもらつた。

 最近『大全』といふ名のつく本がよく並んでゐる。この本は『大百科』であるが、視点は同じである。幸福感を感じるにはどのやうな習慣を身に着けるとよいかといふことでまとめられたものである。

 心理学といふのは、左に行きすぎたら右に行け、右に行きすぎたら左に行け、といふ学問だらうから、まづその被験者の位置をどう評価するかによつてもアドバイスは異なる。当の心理学者の座標軸によつて被験者の位置づけが異なるのである。したがつて、たとへば本書の110のタイトルは、「自分で決定する」となつてゐて、冒頭には、「人間の幸福度を考えたとき」、「所得や学歴よりも『自己決定』が幸福感に強い影響を与えることがわかりました」と書かれてゐるが、自己決定しないと幸福にならないかといふ問ひは封印されてゐる。「自己決定が幸福感につながる」が絶対的な見解であれば、これほど世の中に占ひが流行つてゐるはずはない。つまりは、程度問題である。その塩梅を加味しながら本書を読めば、ずゐぶんと視界が開けて心にふっと風が吹いてくれる。

 電車で読むには丁度良い内容である。三日間の通勤で読み終へた。

 知らない用語がいくつかあつた。その一つが、「マキシマイザー」と「サティスファイザー」である。さらに前者は「促進系」と「評価系」に分かれ、前者は、「多くの選択肢を徹底的に調べたうえで、ほかの選択肢がよかったかもーーと思いつつも、自らの選択にポジティブな面を見いだせる」人であり、後者は「つねに最高を探しつづけ、選んだ結果に満足できない」人のことだと言ふ。

 一方、「サティスファイザー」とは、「自分なりに満足できる『足るを知る』といったマインドをもつ」人のことである。

 このサティスファイザーのやうな人間になりたいものだが、かういふ人には向上心といふものがないのかもしれないといふバイアスが私にはあつて、結果「評価系マキシマイザー」になつて、いつでも不満を持ち続けるのである。

 なるほど自己分析には納得である。時々は、読み返したくなる書である。

 

 筆者の堀田氏はてつきり心理学者なのかと思ひきや、プロフィールを読んだら言語学者とあつた。しかも専門は「法言語学」とある。さういふ学問があるのにも驚いた。いい本に出合つた。