ケビン・メイニー著、有賀裕子訳、『トレードオフ』、プレジデント社、2010年7月。
物流の世界では、トレードオフと言えば、まず輸送費コストと在庫コスト
の関係が取り上げられる。
例えば小売店舗がバックヤードの在庫を圧縮しようとすると、配送センター
から小売店舗へ頻繁に補充をかけねばならず、トラック配送回数が
増え、さらに少量での配送となるため、配送効率も悪化し、最終的には、
配送コストの増大につながる。
配送回数を減らそうとする場合、逆に、在庫コストが増大する。
そのため物流コンサルタントは、両者にとって程良い結果になるよう
バランスを考えながら、いずれかのコスト削減に努める。
これは物流の世界での話である。一方で経営戦略の世界では、
このトレードオフが、上質さと手軽さの関係となってくる。
ここで言う上質さとは、経験+オーラ+個性であり、手軽さとは、
入手しやす+安さであると定義される。
本書では、企業がビジネスを軌道に乗せられない理由として、
上質さあるいは手軽さのいずれをとるにしてもそれが中途半端
で徹底できないことにあるとしている。
例えばウォルマートは手軽さを志向する企業であったが、
ある時、上質さを追求し始めてしまい、失敗に陥った。
COACHは上質さだけでなく手軽さの二兎を追いかけることで、
ブランド本来のイメージを失うことで、大きな痛手を負った。
経営戦略の世界では、ほどよくいいとこどりをしようとするのは
極めて困難であると筆者は言っている。
「上質さと手軽さの両方を追い求めることは、幻影(ミラージュ)で
あると。」
しかし両者を追い求めて成功をしている企業はいくつか存在する
であろう。いくつかの例外を明らかにし、何故、それら企業は
例外たるかを説明するのも面白いのではないかと思う。
トレードオフを本書では2者択一と訳しているが、はたしてそうなので
あろうか。
少し疑問に思った。
ただそれを差し引いたとしても、本書は読み物としては非常に
面白い。企業が明確なブランドイメージを周囲に植え付けようとする
場合、それをシンプルにすること。そして上質さと手軽さの2つに
大きくまとめて考えてみると面白いこと等、参考になった。