被写体になったきみは
コンクリートジャングルを彷徨う

アスファルトの海で溺れないように
息継ぎをしながら

コインランドリーから漂う腐臭に
生活を重ねて

機械音と
繰り返されるコマーシャルで
現実を隠して

一日の終わりには
孤独を暖めるように
ひっそりと 泣く

いつまでも被写体のきみは
誰も自分を見ていない事に
まだ気付かない

.

自転車を、知り合いの家に停めて出掛けた。

戻ってくると、その家のおじさんに封筒を渡された。

おじさんはにこにこしながら私が封筒を開けるのを見ている。


封筒に入っていたのは請求書だった。

「勝手に停めたんだ、罰金だ。」

10万円。

おじさんはにこにこしている。

「まったく。このガキ。」

にこにこしながら、説教を始める。


ガキじゃない。

10万だって、払える。

停めた私は悪い。

でもおじさんは笑ってる。

「この。ガキ、ガキめ。」

細かい箇条書がたくさん並んだ請求書を持つ手が震える。

胸と頭が熱くなる。

誰か他にも、払った人はいるのだろうか。

にげたい。


にげたい。


後ろから、怖い顔したおじいさんが走って来た。

おじいさんが何も言わずにおじさんを思いっきり殴ったところで目が覚めた。


夢で良かった。

おじさんが怖すぎて泣いた。









言いたい事が言っていい事とは限らないから黙ろう。言うべき事が言わなくてもいい事になるまで黙ろう。言えない理由が言えなかった理由になったら話そう。
それまで生きてたらね。


明日なんて無くって、今日がずっと続いてるだけ、人生が一日。

明日に期待しよう、今日より良い一日になるように、願ってる、祈ってる、この身一つ。

無神論者の私が縋るのはいつも古い思い出で、それは手を差し伸べてきたりはしない。

この身一つ、器用にもなれない。


この体がバラバラにならないように
関節に記憶を詰める

携帯電話のメモリよりも確かなはずの脳味噌は
どうやらとっくにイカレているみたいだ

方耳のピアス
記憶の中で揺れるだろ
安っぽい金色

関節に 記憶を/軋んだ音が 鼓膜の側で うずくまっている

記憶の中で揺れるだろ

記憶の中で

.

2011.6.12