騒がしい店で会話が続いていても「話せている」とは限らない
騒がしい店でも、会話が続いているなら大丈夫。
そう見える場面でも、実は「話せている」とは限りません。
人気店や雰囲気の良い店なら、多少うるさいのは仕方ない。聞こえなければ、その都度聞き返せばいい。
自分には相手の声が普通に聞こえていて、相手も返事をしているなら、わざわざ席を変えるほどではないと感じることもあると思います。
会話を成立させるための作業が増える
では、なぜ会話が続いているのに「話せている」とは限らないのでしょうか。
騒音の中では、話の内容とは別に「会話を成立させるための作業」が増えるからです。
聞き取れなければ確認する。
聞こえるように声を張る。
聞けなかった部分を前後の話から推測する。
何度も聞き返しにくくなれば、全部は分かっていなくても反応だけ合わせることがあります。
これらは、話題そのものではありません。
まず「聞こえない状態」を立て直し、そのあとでようやく話の内容を受け取る。
店がうるさいと、会話のたびにこの余分な処理が入りやすくなります。
会話を立て直す負担は二人で同じとは限らない
ここで、もう一つ見落としやすい点があります。
会話を立て直す手間は、二人に同じだけかかるとは限りません。
自分には普通に聞こえていても、相手には毎回聞き取り直しが必要なことがあります。
自分から見ると、「相手も返事をしている」「会話は止まっていない」と見える。
ところが相手側では、聞き取れた言葉を拾い、聞こえなかった部分を推測し、会話を止めないように反応を合わせているかもしれません。
同じ店にいても、自分には「普通に話せている店」、相手には「自分で会話を成立させ直し続ける店」になっていることがあります。
聞き返しが減っても、聞こえるようになったとは限らない
そして初期のデートでは、この負担がさらに見えにくくなることがあります。
何度も「聞こえない」と言うと会話を止めるように感じて、相手が「分からなくても合わせたほうが楽」と判断することがあるからです。
最初のうちは「ごめん、もう一回いい?」と聞き返していた相手が、途中からあまり聞き返さなくなる。
ここで、「もう慣れたのかな」「問題なく話せるようになったのかな」と思いやすくなります。
でも、聞き返しが減ったことと、聞こえるようになったことは同じではありません。
毎回会話を止める代わりに、聞こえた単語や表情から意味を推測して、笑ったり、うなずいたりしていることもあります。
外から見れば、会話は続いています。
こちらが一つの話を最後までして、相手も笑って返してくれる。
それでも、その返事が全部聞き取ったうえの反応とは限りません。
ここで分けて考えたいのが、「会話が続いていること」と「会話が成立していること」です。
言葉の往復が途切れていなくても、相手が毎回、聞こえなかった部分を推測したり、分からないまま反応を合わせたりしているなら、二人が同じ内容を共有できているとは限りません。
この違いは、デートでは小さくありません。
会話そのものが、相手を知る材料になるからです。
騒音のせいで相手だけが聞き取りを補い続けると、こちらが話した量と、相手が実際に理解できた量に差が出ます。
すると、本当は環境のせいで十分に聞こえていなかっただけなのに、「なんとなく会話がかみ合わない」「話が合わない」と受け取る余地が生まれます。
見るべきは、会話を立て直す負担が続いているか
ここまでくると、見るべきなのは、店が何となくうるさいかどうかだけではありません。
会話を成立させるための手間が、何度も続いているかです。
- 相手ばかりが聞き返していないか。
- 相手ばかりが何度も声を張っていないか。
- 途中から相手が聞き返す代わりに、内容より反応だけ合わせる形になっていないか。
一度聞き返しただけで、「この店はダメ」と決める必要はありません。
見るのは、一度の聞き返しではなく、会話を立て直す作業が繰り返されているか、その負担が片側に偏っていないかです。
だからといって、「最初から静かな店だけを選べばいい」という話でもありません。
入ってみたら想像以上に騒がしく、聞き返しが続いている。
そんなときに、その環境を当然として会話を押し通すのか、それとも少し調整するのか。
判断するのはそこです。
聞き返しが何度も続いていると気づいたら、席を変えられないか、店内でもう少し静かな場所へ移れないかを一度確認してみてください。
相手にもっと大きな声を出してもらったり、何度も聞き返してもらったりするより、会話を立て直す必要そのものを減らすほうが自然です。
会話のしやすさは、話題や相性だけで決まるものではありません。
相手が毎回、聞こえない部分を自分で埋めなくても、そのまま内容を受け取れる環境があって初めて、二人は話そのものに集中できます。
だから、会話が止まっていないかだけを見ない。
相手が会話を続けるために、何度も聞き取りを立て直していないかを見る。
会話が続いていても、相手が毎回そこを埋めているなら、それだけで「話せている」とは言えません。