刑事事件の場合まず要件を挙げ、次にその要件に証拠を当てはめ、すべて当てはまった場合のみが有罪になると私は理解していますのでこの考え方に従って話を進めていきます。


公職選挙法235条1項

当選を得又は得させる目的をもつて公職の候補者若しくは公職の候補者となろうとする者の身分、職業若しくは経歴、その者の政党その他の団体への所属、その者に係る候補者届出政党の候補者の届出、その者に係る参議院名簿届出政党等の届出又はその者に対する人若しくは政党その他の団体の推薦若しくは支持に関し虚偽の事項を公にした者は、2年以下の禁錮又は30万円以下の罰金に処する。」


あらかじめ、申し上げておきます。

「ドン・キホーテ」の件はスルーです。

そもそも、事実関係に争いようがありませんから書く意味がないと思っています。

(改正前の法律がわからず細かい議論ができないためという理由もあるのですが…)


今回公職選挙法違反疑惑の件で問題になっているのは上記赤字の部分だと思われます。

要件は

1.当選を得る目的であった。

2.候補者の~に関し虚偽事項を公にした。

の2つでしょう。

法律だけみるとすごく単純です。

ここで重要なのは「有権者が虚偽の公表をどのように受け取ったか」を法は要求していないという点です。

テレビや新聞などで「有権者がどのように思ったかがポイントになる」といった類のコメントをしている人間もいるようですが、まったく無駄な法の拡大解釈であり、私はこの意見には真っ向反対です。


1.については、問題になっているのは「完全無所属」であり、選挙期間中積極的にビラまでまいてこれをアピールしていたのだから「当選を得る目的」であったことは否定のしようがないところでしょう。


2.が論点です。


が、少々長くなってきたのでまた次回。


*要件は、法律から直接又は反対解釈により、若しくは判例から持ってくることになるのでしょうが、残念ながら私の判例付六法には235条の判例は記載されておりませんので法律から直接判断しております。

前回の続きです。


公職選挙法235条1項

当選を得又は得させる目的をもつて公職の候補者若しくは公職の候補者となろうとする者の身分、職業若しくは経歴、その者の政党その他の団体への所属、その者に係る候補者届出政党の候補者の届出、その者に係る参議院名簿届出政党等の届出又はその者に対する人若しくは政党その他の団体の推薦若しくは支持に関し虚偽の事項を公にした者は、2年以下の禁錮又は30万円以下の罰金に処する。」


の、「候補者の~に関し虚偽事項を公にした。」の部分に入っていきます。

すでに報道されている通り、問題なのは「完全無所属」の完全の部分です。

報道機関によっては「無所属」と記載するところもありますが、「無所属」が虚偽記載に当たらないのはすでに議論されている通りです。

無所属」と報道しているのは何らかの思惑あってのことであろうと思わざるをえません。


○「無所属」…所属政党証明書を選管に提出していない者。

「政党に所属政党証明書を申請して発行してもらって公認になる」(浅野史郎元宮城県知事の発言より)ということであるから、単純に「公認候補ではない者」と考えればよいと思われます。


○「完全無所属」…法律上で定義はなく造語


まず、「無所属」と「完全無所属」が同義であるか否かという議論が必要ですが、森田知事一派が、「政党推薦無所属」と「完全無所属」が異なるというビラをまいており、「政党推薦無所属」と「完全無所属」が完全に一致するものではないことは明らかです。


無所属政党推薦無所属≠完全無所属


ということになりますが、「無所属」と「完全無所属」の包含関係は分かりません。

従って「完全無所属」を定義することが必要になります。


既述の通り「完全無所属」に法的定義はありません。

かといって、受け取る側の解釈に任せるのは恣意的解釈に繋がり好ましくありません。

「完全無所属」を、「政党はもちろんあらゆる組織に所属していない」と解釈する者もいれば、「公認・推薦がないだけ」と解釈する者もいるからです。


私は、「完全無所属」の定義を森田知事が選挙期間中にまいたビラに求めようと思います。

1.森田知事自身の定義を用いることにより 恣意的解釈を排除でき、

2.明確に証拠として残っているビラを用いることにより「言った、言わない」の曖昧さを排除できる

と考えるからです。


また選挙期間中の主張と現在の主張が異なるならば、禁反言の原則から言っても、この主張は認められないでしょうから定義として最も適切であると考えられます。


ということで、いささか長くなりましたので、定義はまた次回です。

前々回の続きたる前回の続きです。


完全無所属」とは?

森田知事の選挙期間中のビラにその要件を求めようということは前回述べたとおりですが、そのビラが手元にありません。

ネットで検索していたところ植草一秀氏のブログ

 「植草一秀の『知られざる真実』」  にそのビラの一部が掲載してありましたので参考にさせていただきました。

植草氏も他の方から提供を受けたとのことで、あわせてその事実も記載しておきます。


このビラによると

中央の政党間の争い・政局を県政に持ち込まず、持ち込ませず、県民ひとすじ、県民本位、県民第一の千葉県政をつくろう!」とあり、「完全無所属と政党推薦無所属の相違」を列挙しております。


「『完全無所属』だから…

a.マニフェスト…『候補者自ら千葉県政への熱い想いを込めて作成』

b.選挙運動の顔…『候補者だけが頼り 候補者の熱い想いを一人でも多くの県民に伝える選挙運動を展開』

c.もし当選できたら…『総選挙や中央の政党間の争いに巻き込まれず、県民第一の県政に専念』

することができる。」といった内容です。


これより、「完全無所属」の要件は


「1.いずれの政党からも公認されていない。…『無所属』であるための要件

2.いずれの政党からも推薦を受けていない。…『政党推薦無所属』と明確に区別している点より

3.政党の影響を受ける立場にない。…『中央の政党間の争い・政局を県政に持ち込まず、持ち込ませず』、『総選挙や中央の政党間の争いに巻き込まれず』としている点より」

であると推定することができると私は考えます。

推定と書いたのは3.について解釈を加えているからです。

異なる解釈をすべきであるとする意見はあると思いますが、3.を削除し「完全無所属」とは、1.と2.だけであるとするとことは二枚舌を認めることになり、著しくバランスを欠く解釈であることから認めるべきではないと考えます


(当然ビラに書かれたすべてが要件ですから上記a.やb.も要件ですが、証明が困難ですから要件から外しております。)


長くなりました。

次回は当てはめです。


*ビラの内容を全体的に掲載していることから著作権問題が気になる方もおられるかと思います。

これは法定ビラであり禁転載の記載もないことから著作権法第13条に準ずるもの考えておりますが、念のため引用であることを明記していることにより問題はないと考えております。。


** 「文字」の打ち消し線については次回の記事を参照してください。

前々々回の続きたる前々回の続きたる前回の続き…長くてすみません。


前回、選挙期間中の森田知事側のビラにより、「完全無所属」の要件を

1.いずれの政党からも公認されていない。

2.いずれの政党からも推薦を受けていない。

3.政党の影響を受ける立場にない。


であると定義しました。

1.と2.について虚偽の公表はありません。

問題になるのは3.です。


そして、事実は森田知事が選挙期間中はもちろん当選後も「自由民主党東京都衆議院選挙区第二支部の支部長」であったということです。


当然自民党員ということになります。

そこで、自民党党則 第3条の3

党員は、次の各号に掲げる義務を有する。

 党の理念、綱領、政策及び党則を守ること。
 各級選挙において党の決定した候補者を支持すること。
 積極的に党活動に参加すること。
 党費を納めること。


ごめんなさい

今気づきました。

要件挙げるまでもありませんでした


ビラには

a.マニフェスト…『候補者自ら千葉県政への熱い想いを込めて作成』

b.選挙運動の顔…『候補者だけが頼り 候補者の熱い想いを一人でも多くの県民に伝える選挙運動を展開』

c.もし当選できたら…『総選挙や中央の政党間の争いに巻き込まれず、県民第一の県政に専念』

とあり、逐一比較するまでものなく党則に矛盾しています。


一方で党則にある党員の義務を果たしていないならば、「完全無所属」であると言える立場もあろうかと思います。


そこで党則第93条

党員が次の各号のいずれかに該当する行為をしたときは、党規律規約の定めるところにより、処分を受けるものとする。

一 党の規律をみだす行為
二 党員たる品位をけがす行為
三 党議にそむく行為


では、「党議にそむく行為」とは何か?

党規律規約第9条

党員が次の各号のいずれかの行為をしたときは、処分を行う。

(一部略)

 党議にそむく行為

(イ)  党大会、両院議員総会、総務会、衆議院議員総会又は参議院議員総会の決定にそむく行為


党則は党大会の決定事項であり党則にある「党員の義務」を果たさないことは、党大会の決定にそむく行為ですから、森田知事は処分の対象になります


末端の党員であればお目こぼしもあるかもしれませんが、公然と党大会の決定にそむく行為を行っているのであれば、処分対象を免れることはないと考えられます。

実際に処分が行われるか否かはともかく、そのような動きがないということはあり得ません。


しかし、森田知事を処分という声は自民党から聞こえてきません。

結局森田知事は党員の義務を果たしていたということに他なりません。


つまり、知事は「党員の義務を果たしており」、「完全無所属ではない」ことが、証明できました。

森田知事の「適法発言」は「完全無所属」の要件が「非公認」「推薦なし」のみであると、解釈したものでありますが、既述の通りこの論理は認められません

ビラに記載があるものすべてが要件であり、「自民党員の義務」と「ビラの記載」に矛盾があるということは、森田知事が虚偽の事項を公にしたことに他ならず、公職選挙法違反であることは明らかです。


森田知事が公職選挙法に違反したという判断を私の結論とします

ただし、私はこれをもって逮捕すべきであるとか、辞任すべきと言う気はありません。

おそらく、現在テレビに出ている方で「公職選挙法違反と明言している人はいないのではないのでしょうか?

この記事を読んだ方は報道や有識者の意見と比較し自分で自らの結論を出していただきたいと思います。


次回は、すこしのんびりした内容にしようか、最高裁で判決がなされた痴漢冤罪の件にしようか考え中です。


小沢氏秘書による西松献金の件は、今回ほど単純な話ではなく私自身準備不足のためさらに後日です。

森田知事の迂回献金疑惑(政治資金規正法違反疑惑)に関してもその時に議論することになると思います。


* 「文字」の打ち消し線の部分は要件を挙げるまでもなく違法であるという点に気づいたために打ち消した部分です。

**それにしてもビラの制作者は何を考えてるんでしょうか?

党則見た瞬間、あまりのばかばかしさに椅子からズリ落ちました。

「法に直接明文がない場合、刑事裁判における法解釈は反対解釈が原則であり、類推解釈は認められない。」


自己紹介にも書いておりますが、私は法律初心者です。

少なくとも私は上のように学びましたが、昨今の報道を見ているとこの原則は一切無視されている気がします。

直接明文がなく反対解釈ができない場合は、法の欠缺となり罪刑法定主義の要請により無罪となるはずです。


念頭に置いているのは、小沢一郎氏の秘書である大久保隆規被告の政治資金規正法違反容疑の件です。


いまだに逮捕および起訴の理由がわかりません。


一方で、違法性の要件を満たしている可能性があるにもかかわらず、取調さえなく早くも終息させられそうなものもあります。


森田健作千葉県知事の公職選挙法・政治資金規正法違反疑惑です。


このブログの立ち上げ目的は、この2つの件について私自身の論理展開を示させていただくことにあります。

もし法律に詳しい方のお目にとまることがありましたら、ご意見いただければと思っております。


なお「民主党が嫌いだから小沢けしからん」とか「テンションが気に入らないから森田は許せない」といったたぐいの感情を前面に出したコメントの場合は削除させていただくことがあります。



まず、次回は森田健作氏の件について書こうと思っております。


*大久保被告について政治資金規正法違反「容疑」とし森田知事について公職選挙法・政治資金規正法違反「疑惑」としたのは、前者が起訴されているのに対し後者は起訴されていないことを考慮したものです。

言葉の使い方の正誤はわかりませんが、そのように理解していただきたいと思います。