2025年9月25日付のFNNプライムオンラインが、
『「アフリカ・ホームタウン」事業撤回をJICAが発表 「誤解から自治体に過大な負担」理事長が記者会見』
と題した記事を報じていました。
以下に、この記事を要約し、JICAの「アフリカ・ホームタウン」は、なぜ、事業撤回することに至ったのか。
JICAのこの事業における失敗理由とどのようにすべきだったのか、考察しました。
《記事の要約》
国際協力機構(JICA)は2025年9月25日、アフリカとの交流を目的とした「アフリカ・ホームタウン」事業を撤回すると発表した。
田中明彦理事長は記者会見で「誤解に基づく反応が広がり、自治体に過大な負担を生じさせた」と説明し、関係自治体に謝罪した。
この事業は、アフリカ諸国と日本の地域を結び、研修事業やインターン受け入れを通じた交流を進める構想で、2025年8月には4市を「ホームタウン」に認定していた。
しかしSNS上では「移民受け入れ促進につながる」といった情報が拡散し、批判が集中。国内外の報道も誤解を助長し、住民の不安が高まっていた。
田中理事長は「JICAは移民を促進する取組みを行っていないし、今後もその考えはない」と強調する一方、「国際交流の重要性は変わらない」として今後も交流促進を支援していく姿勢を示した。
また外国人の入国・滞在に関しては従来通り「きめ細やかな管理体制を維持する」と述べた。
JICAは国際協力を通じた交流の拡大を狙ったが、事業の趣旨や責任の所在が十分に伝わらず、国民の不安と反発を招いたことが、今回の撤回につながったといえる。
(記事の要約、ここまで)
《筆者の考察》
JICAの「アフリカ・ホームタウン」事業が撤回に至った最大の理由は、「移民受け入れ」への国民の不安を招いたことだ。
公式には帰国前提のインターン交流であったが、過去の技能実習制度で大量の失踪者が発生し、一部が不法就労や犯罪に関与している現実が国民に強い警戒感を与えていた。
そのため「また同じ事態になるのでは」という懸念が噴出した。
さらに「ホームタウン」という名称や、自治体を一方的に認定する手法が誤解を増幅させた。
住民からすれば、突如として自らの地域が「外国人受け入れ拠点」に指定されれば、生活や治安への影響を想起して不安を抱くのは当然である。
JICAは広報や説明を軽視し、地域住民の合意形成を欠いたまま事業を進めた点が致命的だった。
また制度設計にも大きな欠陥があった。
JICAは「外国人を呼び込む主体」であるが、来日後の行動や滞在管理には直接の責任を負わない。
責任の空白が残ったままでは、住民は不安を拭えない。
JICAは「管理は行政」と割り切るのではなく、受け入れに伴う責任の一部を担い、帰国保証や監視体制の具体策を提示すべきであった。
事業の失敗は、SNS時代における情報発信力の軽視にも起因する。
誤解や憶測が拡散してから火消しに回るのでは遅い。
事前に透明性ある情報提供と丁寧な説明を行い、住民の声を取り入れた制度設計をすべきであった。
プロセスや趣旨を公開し、国民に理解を得る努力を怠ったことが、最大の失敗要因といえる。
では、どうすべきだったか。
第一に、日本国内に人材を呼ぶのではなく、日本側がアフリカに人材を派遣し、現地で技術供与や人材育成を行う方法が望ましい。
これにより移民リスクを減らし、双方に利益をもたらすことができる。
第二に、どうしても受け入れる場合は、帰国前提の契約や保証金制度などを設け、不法滞在を防ぐ仕組みを整備する必要がある。
第三に、地域指定の方法も住民参加型とし、自治体が自ら手を挙げる仕組みにすれば、反発は抑えられる。
結論として、今回の撤回は「国際交流」と「移民受け入れ」の境界が曖昧なまま進めたことによる当然の帰結である。
国民の信頼を得るためには、透明な制度設計、責任の明確化、そして現地支援を軸とした交流モデルへの転換が不可欠である。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ978号より)
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