2026年10月10日付の西日本新聞が、
『「年収2千万円もざら」のミカン農家 「一番なりたくない職業」が…、みやま市で若者50人就農』
と題した見出し記事を報じていました。
以下に、この記事を要約し、ミカン農家の年収が高収入になる理由と今後の日本農業について考察しました。
《記事の要約》
<年収2,000万円も夢ではない ブランドミカンが変える農業の未来>
福岡県みやま市山川町で、ブランドミカン「北原早生」の収穫が進んでいる。
専業農家の北原正光さん(51)は、約2ヘクタールの農地で栽培し、将来的には4ヘクタールへの規模拡大を目指す。
北原さんが家業を継いだのは15年前。
幼い頃は「一番なりたくない職業」だったという。
高校卒業後は会社員になったが、地元で発見された新品種「北原早生」のブランド化が成功し、農業に将来性を感じるようになった。
「北原早生」は糖度の高さと鮮やかな色合いが特徴。
首都圏の百貨店などでも高値で取引され、地域のミカン農業を支える存在となった。
JAみなみ筑後によると、2012年以降、みやま市では40代以下のミカン就農者が50人近くに上り、新規就農者も10人を超える。
JA関係者は「年収2,000万円もざら。頑張り次第で夢がある」と語る。
ただし、金額が売上高か経費控除後の所得かは明らかでない。
一方、みやま市全体では人口減少と高齢化が進む。
2007年の市発足時に約4万3,400人だった人口は約1万人減少し、今年4月の高齢化率は40.15%に達した。
地域文化の継承にも影響が出ている。
300年以上続く伝統芸能「新開能」では、舞台設営を担う住民の高齢化から、昨年より公共施設での上演に変更した。
市は住宅取得への最大55万円の補助や新規就農支援など、移住・定住策を進めている。
しかし、担当窓口が分散し、移住者数の全体像も把握できていないという。
稼げる農業を地域の活力につなげられるか。
雇用創出と移住、子育て支援を一体的に進める行政の実行力が問われている。
(要約、ここまで)
《筆者の考察》
<ミカン農家が年収2,000万円? 「稼げる農業」が日本の地方を変える>
農業は儲からない、後継者がいない。
そんな固定観念を覆すのが、福岡県みやま市のブランドミカン「北原早生」である。
かつて家業を継ぎたくなかった農家が、今では子どもにも勧めたい職業と考えるようになった。その変化は、日本農業の可能性を示している。
高収入を実現できる第一の理由は、価格競争からの脱却だ。
一般的な農産物は市場価格に左右されやすい。
しかし、北原早生は高い糖度と優れた色合いを武器にブランド化に成功。
JAみなみ筑後によれば、2017年には初売りで1キロ平均700円という高単価を記録した。
単に大量生産するのではなく、消費者が高くても買いたい品質を実現したのである。
第二は、生産技術と品質管理だ。
ミカン栽培では、地面にシートを敷いて雨水の浸透を抑える「マルチ栽培」などによって水分を調整し、糖度を高める。
ただし、過度な水分制限は収量や樹勢に悪影響を及ぼすため、経験と技術が欠かせない。
品質を安定させ、規格に合う果実を継続的に出荷することが、高値販売の条件となる。
第三は、経営規模と販売戦略である。
農地を集約して生産量を増やし、需要の高い時期に出荷する。
さらに直販、加工品、観光農園などを組み合わせれば、収益源の多様化も期待できる。
ただし、「年収2,000万円」という数字には注意が必要だ。
農家の売上高が2,000万円でも、肥料、農薬、人件費、機械、設備、借入金利息などの負担がある。
仮に経費率70%なら、農業所得は600万円となる。これは説明用の仮定であり、記事の農家の実績ではない。
農業には自然災害、猛暑、病害虫、価格下落などのリスクもある。
果樹は新品種への植え替えから十分な収穫まで数年を要することもあり、初期投資と資金繰りが重要だ。
さらに傾斜地での収穫や運搬は重労働で、転倒・転落などの安全対策も欠かせない。
今後の日本農業に必要なのは、ブランド化だけではない。
農地の集約、スマート農業、共同選果施設、収穫作業の省力化、輸出拡大などを組み合わせ、所得と労働生産性を同時に高めることである。
一方、みやま市では高収入の農家が増えても人口減少が続いている。
仕事があるだけでは、若者の定住には結び付かない。
住宅、教育、医療、子育て、地域文化まで含めた生活環境の整備が必要だ。
ISO思考でいえば、農業も品質、コスト、納期、リスクを管理する経営活動である。
売上高だけでなく、農業所得、労働時間、後継者数などを指標に、改善を続けなければならない。
日本農業の未来を決めるのは、単に高く売れる農産物を作ることではない。
若者が安心して参入し、長く働き続けられる「稼げる仕組み」を地域全体でつくれるかどうかである。
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