2026年9月28日付の毎日新聞が、

『マンション修繕談合で設計コンサルが謝罪 補償の可能性を示唆』

と題した見出し記事を報じていました。

 

以下に、記事を要約し、38社に及ぶマンション談合の背景(※翔設計ルート19社以外を含む)とバックマージンを得ていた設計コンサル会社が主導した談合スキームおよび関与していた組織(ISO認証組織)におけるISO認証機関が取るべき対応とその判断基準について、考察しました。

 

《記事の要約》

関東地方のマンション大規模修繕工事を巡る談合事件で、独占禁止法違反を認定され、公正取引委員会から排除措置命令を受けた設計コンサルタント「翔設計」(東京都渋谷区)が9月28日、記者会見を開き、謝罪した。

 

公取委によると、今回の事件では翔設計とリノシスコーポレーションの設計コンサル2社を中心に、マンション管理組合が発注した計171件、総額300億円を超える大規模修繕工事で受注調整が行われた。

翔設計が関係したのは76件とされる。

 

談合では、設計コンサルが管理組合から得た設計予算などの情報を施工会社側に提供。

施工会社から受注意向を聞き、受注予定者を決めた上で、他社が受注予定者より高い見積価格を提示したり、見積もりに参加しなかったりすることで、予定した会社が受注できるよう調整していた。

 

さらに公取委は、施工会社が工事を受注した場合、工事請負契約額の一定割合に相当する「手数料等」を設計コンサルへ支払っていた事実も確認した。

発注者を支援する立場のコンサルが、受注する施工会社から金銭を受け取る利益相反ともいえる構図が浮かんだ。

 

翔設計は会見で謝罪したものの、談合が始まった時期や手数料の実態については「精査していない」などとして明確な説明を避けた。

原因についても「自覚が足りなかった」と述べるにとどめた。

 

今後は第三者を交えた再発防止委員会を設置し、施工会社との接触ルールや業者選定の透明性を見直す方針。

談合によって管理組合や住民に過剰な負担が生じたことが確認されれば、補償も検討するとしている。

(要約、ここまで)

 

《筆者の考察》

今回のマンション大規模修繕談合で深刻なのは、施工会社同士が単純に価格を相談しただけではない点だ。

発注者である管理組合を支援し、公正な施工会社選定を補助するはずの設計コンサルが、談合の仕組みの中核を担っていた。

 

公取委によれば、設計コンサルは管理組合から得た設計予算などの情報を施工会社へ提供し、受注希望を把握して受注予定者を決定。

他社は指定された見積価格を提示するなどして受注予定者に協力した。

さらに、受注した施工会社から設計コンサルへ工事請負額の一定割合の「手数料等」が支払われていたことも確認された。

 

これは典型的な利益相反構造である。管理組合は専門知識が乏しいからこそコンサルを信頼する。

その情報格差を利用して選定過程そのものが操作されれば、複数社から見積もりを取っていても、競争しているように見えるだけの「形式的な相見積もり」になってしまう。

 

では、関係企業がISO 9001などの認証組織だった場合、認証機関はどうすべきか。

 

重要なのは「独禁法違反企業だから直ちにISO認証取消し」という短絡的な判断をしないことである。

ISO認証は企業の潔白を保証する制度ではなく、そのマネジメントシステムが規格要求事項に適合し、有効に機能しているかを第三者が評価する制度だからだ。

 

しかし今回のように、長期間、多数の案件で、複数企業を巻き込み、営業・見積り・受注決定という本業の中核プロセスで違反が認定された場合は話が違う。

認証機関は通常の定期審査を待つのではなく、事案の重大性を評価し、必要なら短期予告審査などの特別審査を検討すべきだろう。

 

ISO 9001なら、組織の状況、リスク及び機会、顧客要求事項、外部提供者管理、パフォーマンス評価、不適合及び是正処置、マネジメントレビューなどとの関係を追う必要がある。

特に確認すべきなのは「誰がやったか」だけではなく、「なぜ仕組みが止められなかったか」である。

 

判断基準は、

第一に違反の期間・件数・組織的関与

第二にトップマネジメントの関与・認識

第三に内部監査や内部通報が機能したか

第四に原因分析が「自覚不足」で終わらず利益相反や評価・報酬制度まで掘り下げているか

第五に顧客への補償を含む是正処置が実行されているか

第六に再発防止策の有効性が客観的に確認できるか

である。

 

重大な不適合が認められ、有効な是正が確認できなければ、認証の一時停止も選択肢となる。

その後も問題が解消されなければ、認証取消しまで検討する。

一方、法令違反があったという事実だけを根拠に機械的に取消すべきではない。

 

ISO思考で最も危険なのは、「研修をしました」「規程を改定しました」で再発防止を終えることだ。

談合を生み出した利益構造、情報管理、権限、評価制度、監視機能まで変えなければならない。

 

ISO認証の価値が問われるのは、問題のない会社を認証するときではない。

不祥事が発覚したとき、マネジメントシステムの機能不全をどこまで厳しく検証できるかである。
 

 

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