2026年9月17日付の「BBC NEWS JAPAN」が、

『長身の選手がベッドで「足を伸ばせない」、日本のコンテナ型宿舎に批判 アジア大会』

と題した見出し記事を報じていました。

 

以下に、この記事を要約し、なぜ、国際大会であるアジア大会で、このように、長身選手の宿舎のベッド利用に対する考慮がされなかったのか、東京五輪をはじめ、これまで日本で開催されてきた国際スポーツ大会のノウハウがなぜ、生かされなかったのか、今後、日本国内で開催される国際大会への教訓はなにか、について考察しました。

 

《記事の要約》

2026年9月19日に開幕する第20回アジア競技大会(愛知・名古屋)を前に、選手らが滞在する宿泊施設をめぐり、不満や懸念が相次いでいる。

 

大会には当初想定を上回る約1万7000人規模の選手・関係者が参加する見通し。主催者は専用の選手村を建設せず、ホテルのほか、名古屋港のクルーズ船や約2000人を収容するコンテナ型の仮設宿泊施設などを活用して対応する。

 

しかし、韓国バスケットボール協会のチョン・ジェヨン副会長はAFP通信に、今回の宿泊環境を「歴代最悪」と批判。

身長2メートルを超える選手がベッドで十分に足を伸ばせないと訴えた。

選手からは配管から水が漏れて室内が水浸しになったとの訴えも出ている。

記録的な大雨では仮設宿舎から一時避難する事態も起きた。組織委員会は不満や懸念を認識し、24時間対応の窓口を設けるなど改善を進めている。

 

大会では当初、名古屋競馬場跡地にメイン選手村を整備する計画だったが、建設資材や人件費の高騰などを背景に、2023年に計画を変更。

ホテルなど既存施設を活用する方針へ転換した。愛知県は選手村を整備しないことで大幅な経費削減を図ったとしている。

 

一方、東京2020大会では長さ210センチのベッドに、長身選手向けの20センチ延長部品まで準備されていた。

国際大会で蓄積された経験を、なぜ今回の宿泊施設に十分反映できなかったのか。大会運営の検証課題となりそうだ。

(要約、ここまで)

 

《筆者の考察》

身長2メートルを超えるバスケットボール選手が「ベッドで足を伸ばせない」。

一見、備品選定の単純なミスに見えるが、国際大会の運営という視点では重い問題である。

 

なぜなら、日本には経験があるからだ。東京2020大会では選手村に1万8000床を用意し、ベッドは長さ210センチ、さらに高身長選手向けに20センチの延長部品を準備していた。

マットレスも選手の体形に合わせて調整できた。パラリンピアンへのアクセシビリティも含め、選手の多様性を前提に設備を設計していたのである。

 

今回の問題を「担当者が長身選手を想像できなかった」で終わらせるべきではない。

背景には大会計画そのものの変更がある。

当初予定したメイン選手村は、建設費高騰などから2023年に整備を断念。

ホテル、クルーズ船、仮設宿泊施設を組み合わせる方式へ転換した。さらに組織委員会は開催都市契約に基づき最大1万5000人分を準備してきたが、最終段階ではそれを上回る規模への対応を迫られた。

 

つまり「コスト」「人数」「施設」「時間」という複数の制約が重なった。

しかし、だからこそリスク管理が必要だった。

 

国際大会なら、競技別に選手の身長・体重、車いす利用、食事、宗教、性別、プライバシーなどを洗い出し、「通常仕様では対応できない人」を事前に特定する必要がある。

バスケットボールやバレーボールに2メートル級の選手がいることは予測困難な特殊事情ではない。

 

さらに問われるのが「組織の知識」の継承だ。

東京五輪を経験した人材や設計・調達仕様、失敗事例を、次の大会が検索・利用できる「大会運営知識データベース」として残していたのか。個人の経験で終われば、組織が変わるたびに同じ失敗を繰り返す。

 

今後の教訓は明確だ。

1)過去大会の知見を標準仕様として蓄積する

2)選手の多様性を設計条件にする

3)モデルルームを実際の長身選手らに事前評価してもらう

4)参加人数の上振れや豪雨などを想定した代替策を準備する

5)開幕直前ではなく早期に不具合を是正する

という多重防護が必要である。

 

ISO思考でいえば、「設備を用意した」ことが目的ではない。

選手が安全かつ良好な状態で競技に臨めるという結果を実現できたかが有効性である。

ベッド一つにも、大会運営の成熟度は表れる。

(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ1029号より)
 

 

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