2026年9月19日付の「東京商工リサーチ」が、
『「お弁当屋さん」の倒産、2年連続で過去最多へ ~ コメ価格下落と消費税引き下げもコスト高 ~』
と題した見出し記事を報じていました。
以下に、この記事を要約し、お弁当屋さんの倒産が増加している背景と消費者への影響について、考察しました。
《記事の要約》
「お弁当屋さん」の倒産が急増している。東京商工リサーチによると、2026年1~8月の倒産は83件に達し、過去最多だった2025年通年の89件を上回るペースで推移している。
特に資本金1000万円未満の小・零細事業者が67.4%を占め、経営体力の弱い店舗ほど厳しい状況に追い込まれている。
最大の要因は相次ぐコスト上昇だ。弁当にはコメだけでなく、肉、野菜、小麦粉、食用油など多くの食材が必要で、容器などの包装資材、電気・ガス、人件費も上昇している。
一方、値上げすれば「安く手軽に食べられる」という弁当の魅力が薄れ、外食との価格差も縮まる。
価格を据え置けば利益が減り、値上げすれば客離れを招きかねないという難しい状況だ。
競争も激化している。従来の弁当専門店だけでなく、コンビニやスーパー、宅配サービス、キッチンカーに加え、ドラッグストアも総菜販売を強化している。
大量仕入れやセントラルキッチンで効率化できる大手に対し、小規模店はコスト削減に限界がある。
8月には高級海苔弁当で知られた「海苔弁いちのや」の運営会社が事業を停止。
原材料費や人件費、出店費用などが資金繰りを圧迫した。
5月には深川めしで知られた「深川太郎」の運営会社も破産開始決定を受けた。
地元で長く愛され、人気や知名度があっても生き残れるとは限らない。
弁当店は今、「おいしさ」と「手頃な価格」に加え、持続可能な採算をどう確保するかという難題に直面している。
(要約、ここまで)
《筆者の考察》
弁当店の倒産が増えていると聞けば、「弁当を買う人が減ったのか」と考えがちだ。
しかし実態はむしろ逆である。日本惣菜協会によると、2025年の惣菜市場は前年比3.7%増の11兆7075億円。単身・共働き世帯の増加や高齢化を背景に、中食への需要は根強い。
それなのに倒産が増える理由は、「売れても利益が残りにくい」からだ。
第一は原価高である。
コメ、肉、野菜、油に加え、容器、光熱費、物流費、人件費まで上昇した。
普通の飲食店なら100円、200円の値上げも可能だが、弁当には「安く、手軽に食べられる」という強い価格期待がある。
500円の商品を600円、700円へ上げれば、消費者はスーパーの総菜やコンビニ、自炊、場合によっては外食と比較する。
値上げできないのに原価だけが上がる「価格転嫁の壁」がある。
第二は競争相手の増加だ。
コンビニやスーパーだけでなく、ドラッグストア、宅配、キッチンカーまで食事需要を奪い合う。
大手なら大量仕入れ、集中調理、自動化によってコストを下げられるが、小さな弁当店には同じ戦略が取りにくい。
第三は需要そのものの変化である。
かつて仕出し弁当を支えた町内会、学校行事、法事、職場の会議など「大人数で同じ弁当を食べる機会」が減った地域もある。
一方、消費者は少量、多品種、好きな時間に買える商品を求めるようになった。
昔ながらの商売の仕組みと需要がずれてきた面も見逃せない。
そして消費者にも影響は及ぶ。
まず弁当価格が上がる。さらに地域の個人店が消えれば、選択肢は大手チェーン、スーパー、コンビニへ集中する。
高齢者や単身者にとって、近所の弁当店は単なる飲食店ではなく、日常の「食のインフラ」でもある。地域独自の味や仕出し文化が失われる問題もある。
生き残るには、単純な安売り競争から離れる必要がある。
予約販売による食品ロス削減、法人・高齢者向け宅配、地域食材を使った高付加価値商品、メニューの絞り込み、仕入れの共同化など、「何でも売る」から「利益を残せる商品を確実に売る」経営への転換が重要になる。
ISO思考で考えれば、売上だけを見るのではなく、原材料、廃棄、人員、エネルギー、販売数量までプロセス全体を見直すことだ。
街のお弁当屋さんを守る鍵は、昔の価格を守ることではない。
無理なく作り続けられ、消費者も納得して買い続けられる価格と仕組みをつくることなのである。
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