2026年9月14日付の「TBS NEWS DIG」が、
『「国保逃れ」38社で1万1610人 今年3月から8月末の事業所調査で発覚 厚生労働省』
と題した見出し記事を報じていました。
以下に、この記事を要約し、国保逃れが横行する背景と会社員が加入する健康保険と比較した場合の国保の割高感の理由について、考察しました。
《記事の要約》
国民健康保険料の負担を避けるため、形式的に法人の役員となって社会保険に加入する、
いわゆる「国保逃れ」が全国で広がっていたことが分かった。
厚生労働省は2026年9月14日、今年3月から8月末までに実施した調査で、こうした仕組みを提供していた事業者を38社確認し、利用者は計1万1610人に上ったと発表した。
さらに7社についても同様の事業を行っている疑いがあり、調査を続けている。
問題となったのは、個人事業主やフリーランスなどを一般社団法人の理事などに形式的に就任させる手法だ。
利用者から会費を徴収する一方、法人から少額の役員報酬を支払い、会社員などが加入する健康保険・厚生年金に切り替えさせていた。
国民健康保険は保険料を加入者自身が負担するが、会社員の健康保険や厚生年金は原則として事業主と加入者が折半する。
この差を利用し、高所得の個人事業主などが保険料を大幅に減らすケースが問題視されてきた。
厚労省は今年3月、法人役員として実際に経営へ継続的に関与しているか、報酬が業務の対価として支払われているかなどを確認し、勤務実態のない資格取得を認めないよう通知していた。
今回確認された1万1610人については社会保険の資格が取り消され、ケースによっては過去にさかのぼって国保などの保険料を求められる可能性もある。
厚労省は今後も調査と指導を続ける方針だ。
(要約、ここまで)
《筆者の考察》
「国保逃れ」が1万人を超える規模にまで広がった最大の理由は、制度上の負担差が極めて大きくなり得るからだ。
まず整理したい。
国民健康保険と直接比較すべきなのは厚生年金ではなく、会社員などが加入する「健康保険」である。
ただし、健康保険と厚生年金はいずれも原則として労使折半であり、会社員本人は保険料の半分を負担すればよい。
厚生年金の保険料率は18.3%だが、本人負担はその半分である。
これに対し国保には「会社負担」がない。
しかも保険料は所得に応じた所得割だけではなく、加入者数などに応じた均等割などを組み合わせ、世帯単位で算定される。
自治体によって料率は異なるが、高所得の個人事業主ほど負担は重くなりやすい。
さらに大きな違いが家族だ。会社員の健康保険では、一定条件を満たす配偶者や子どもを被扶養者として加入させても、原則として人数分の健康保険料が追加される仕組みではない。
一方、国保では世帯内の加入者ごとに均等割が計算される。
このため、所得が高く家族がいる自営業者ほど「会社員より負担が重い」と感じやすい。
そこに目を付けたのが今回の仕組みだ。
一般社団法人などの理事に就き、低額の役員報酬だけを社会保険料算定の基礎にすることで、本業で多額の事業所得や議員報酬を得ていても社会保険料を大きく圧縮できる場合があった。
国会でも、年収1350万円のケースで国保負担との差が100万円を超える例が示されている。
もちろん、実態のない役員就任による資格取得は許されない。
今回の資格取り消しは当然である。
しかし、摘発だけで終われば別の抜け道が生まれる恐れもある。
根本対策は二つだ。
一つは、役員としての労務実態や報酬の対価性を厳格に確認し、「形式だけの社会保険加入」を入口で排除すること。
もう一つは、国保と被用者保険の負担格差そのものを検証することである。
制度は、人々に「抜け道を探した方が得だ」と思わせた時点で持続性を失い始める。
違反者を正すだけでなく、正直に払う人が納得できる仕組みに直すことこそ、本当の再発防止ではないだろうか。
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