2026年8月20日付の産経新聞が、

『「今の時代、考えられない」日中の作業、見張り員は退避完了の合図 東武日光線事故』

と題した見出し記事を報じていました。

 

この事故については、現在、「列車見張り員(駅近く)と中継見張り員(駅から300m離れている)の意思疎通がなぜできなかったのか」、「作業員が線路内からの待避時になんらかのトラブルがあったのか?」など不明な点が多く、事故原因の真相はわかりません。

 

以下に、この記事を要約し、なぜ、見張り員は退避完了の合図を出したのか、など想定される理由と東武鉄道の再発防止策について、考察しました。

 

《記事の要約》

<退避完了の合図後に4人死亡 東武日光線で何が起きたのか>

 

栃木県鹿沼市の東武日光線新鹿沼駅で20日午前、線路上で除草作業をしていた男性作業員4人が、東武日光発浅草行きの特急「スペーシアX2号」と接触し、死亡した。

事故は、見張り員が列車側に「退避完了」を示す合図を出した後に発生しており、確認や連絡の過程で何が起きたのかが焦点となっている。

 

東武鉄道によると、作業員は新鹿沼駅構内のホーム下付近で除草剤を散布していた。

列車接近を監視する見張りは複数人で行う態勢だったが、事故当時、一部の見張り員との意思疎通ができない状態だったという。

 

それにもかかわらず、現場から離れた位置にいた見張り員が、作業員の退避完了を意味する黄色い旗を掲げた。

列車側も警笛で応答したが、作業員4人は線路内に残っていた。

運転士は直前に危険を察知して非常ブレーキをかけたものの、接触を回避できなかった。

 

通常、見張り員は列車の接近を確認すると作業員に退避を促し、安全な場所への退避を確認してから黄色い旗を掲げる。

退避が完了していないなど危険がある場合には、赤旗などで列車を停止させる手順となっている。

 

鉄道の線路内作業では、列車を進入させない「線路閉鎖」が安全確保の基本的な方法の一つだが、比較的簡易な作業では、見張り員を配置して列車を運行させながら行う場合もある。

 

今回、なぜ退避完了が確認されたことになったのか。見張り員同士の連絡、作業員への退避指示、実際の退避行動などを詳細に検証し、事故に至った連鎖を明らかにする必要がある。

(要約、ここまで)

 

《筆者の考察》

<なぜ「退避完了」の合図は出されたのか 4人死亡事故が問いかける安全管理>

 

今回の事故で最大の疑問は、作業員4人が線路内にいたにもかかわらず、なぜ「退避完了」の合図が出たのかである。

ただし、事故原因は調査中であり、現段階で見張り員の判断ミスと断定することはできない。

 

想定される第一の可能性は、情報伝達の途絶を「退避完了」と誤認したケースだ。

見張り員と中継見張り員との意思疎通ができなかったのであれば、本来は「確認できない=安全ではない」と判断すべき場面である。

しかし、過去の作業経験や時間的切迫などから「いつも通り退避したはずだ」と推測してしまった可能性は検証対象になる。

 

第二は、一度は退避した、あるいは退避を始めた作業員が、何らかの事情で線路内に残った、または戻った可能性である。

道具の回収、作業の終了確認、足元のトラブル、退避場所や経路の問題など様々な仮説が考えられるが、現段階ではいずれも推測にすぎない。

 

第三は、「確認」の定義そのものが現場で曖昧になっていなかったかという問題だ。

目視確認なのか、無線での復唱確認なのか、中継者からの連絡をもって確認済みとするのか。

「誰が、誰を、どの場所で、どう確認すれば退避完了なのか」が実務上徹底されていたかを調べる必要がある。

 

ここで重要なのは、「見張り員が間違えた」で調査を終わらせないことだ。

ヒューマンエラーは重大事故の直接的なきっかけにはなっても、その背後に教育、作業計画、連絡方法、監督、設備、発注者と協力会社の役割分担など複数の要因が潜んでいる場合がある。

 

再発防止では、まず連絡不能なら作業中止・赤旗というフェールセーフ原則を徹底すべきだろう。

さらに、退避確認を一人の判断だけで成立させず、「作業責任者確認+見張り員確認」など複数確認とし、重要な連絡には復唱を義務付ける方法が考えられる。

 

加えて、技術による人間の支援も重要だ。

JR東日本では、作業員全員が受信機を携帯し、列車接近を音声で知らせる無線式警報装置を導入してきたほか、GPSを利用して列車と保守係員が一定範囲まで接近すると通知する仕組みも開発している。

つまり「見張り員が気付く→伝える→作業員が理解する」という一本の安全線だけに頼らず、別系統の防護を重ねる考え方である。

 

そして東武鉄道が検討すべき最も根本的な対策は、そもそも列車を走らせながら線路内で作業する必要があるのかという作業方式の再評価だ。

人が線路内に長時間滞在する作業については、可能な限り線路閉鎖を原則化することも選択肢となる。

 

ISO思考で考えれば、「手順があったか」ではなく、その手順が最悪の一回でも人命を守れる仕組みだったかが問われる。

4人もの命が失われた以上、個人の責任追及だけではなく、人的ミスが一つ発生しても重大事故には至らない「多重防護」へ安全管理を再設計する必要がある。

(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ1025号より)
 

 

【好評発売中!】

『サービス業のISO(設計・環境側面・危険源・気候変動)』(令和出版)2025年4月30日発売
『~マーケット・クライアントの信頼を高めるマネジメントシステム~ サービス業のISO (設計・環境側面・危険源・気候変動の実践ガイド)』 著:有賀正彦 - 令和出版

『できるビジネスマンのマネジメント本』(玄武書房)

https://www.amazon.co.jp/dp/4909566066/

 

【よかったらメルマガ読者登録お願いします♪】↓

(パソコンでアクセスしている方)

http://www.mag2.com/m/0000218071.html

(携帯でアクセスしている方)

http://mobile.mag2.com/mm/0000218071.html

Twitter:https://twitter.com/ariga9001