2026年8月18日付のSTV NEWSが、

『「豊作の年に輸入の話を…」 米国産ジャガイモに農家懸念 “解禁”をめぐる動きに関係者は 北海道』

と題した見出し記事を報じていました。

以下に、この記事を要約し、米国産ジャガイモの“解禁”の背景とジャガイモ農家た他の農産物や生産農家への影響について、考察しました。

 

《記事の要約》

<米国産ジャガイモ「輸入解禁」に農家懸念 北海道の生産基盤への影響は>

 

北海道でジャガイモが収穫期を迎える中、米国産生ジャガイモの輸入拡大をめぐる動きに、生産農家から懸念の声が上がっている。

 

羊蹄山麓で収穫されたジャガイモを使った中山峠の名物「あげいも」は、観光客にも人気の商品だ。

蘭越町で約40年間ジャガイモを栽培する下口哲さんも収穫作業に追われているが、豊作の今年、気掛かりなのが米国産ジャガイモの輸入問題だ。

 

現在、米国産の生ジャガイモは病害虫の国内侵入を防ぐため、一定の条件を満たしたポテトチップ加工用などに輸入が限定されている。

米国側は日本に市場アクセスの拡大を求めており、農林水産省は病害虫のリスク評価など必要な手続きを進めている。

 

ジャガイモは土壌を介して広がる病害虫への警戒が欠かせない。

実際、日本では2015年、北海道網走市の一部でジャガイモシロシストセンチュウが国内で初めて確認され、現在も一部地域で緊急防除が続いている。

農林水産省によると、この線虫は土壌中で長期間生存でき、人為的な土壌移動などによって広がる特徴がある。

 

このため生産現場では、農業機械や靴に付いた土を落とすなど、病害虫を畑に持ち込まない対策が続けられている。

下口さんも、輸入品を通じて新たな病害虫が侵入する可能性を心配する。

 

JA北海道中央会も「ジャガイモの生産基盤を損なう米国産ジャガイモの輸入は容認できない」と反発している。

 

一方、輸入拡大の可否は科学的なリスク評価と検疫条件を踏まえて判断されるべき問題でもある。

価格や日米通商関係だけでなく、日本の農業生産を長期的に守れる植物検疫体制を構築できるのか。慎重な検討と分かりやすい情報公開が求められる。

(要約、ここまで)

 

《筆者の考察》

<米国産ジャガイモ「解禁」が問いかけるもの 安さだけでは測れない農業リスク>

 

米国産生ジャガイモの輸入拡大問題は、単なる「国産か輸入品か」という価格競争の話ではない。

背景には、米国側の農産物輸出拡大の要求と、日本側が長年維持してきた植物検疫とのせめぎ合いがある。

 

まず押さえておきたいのは、米国産ジャガイモが現在も完全に輸入禁止というわけではないことだ。

日本は2006年から、指定地域で生産され、検査などの条件を満たしたポテトチップ加工用生ジャガイモについて輸入を認めている。

生産ほ場の調査、シストセンチュウの検査、密閉コンテナによる輸送など細かな条件が設定され、輸入時に対象病害虫や土の付着が見つかれば、荷口全量を廃棄・返送する仕組みになっている。

 

今回の焦点は、こうした限定的な市場アクセスをさらに広げるかどうかである。

 

最大の懸念は植物検疫だ。農林水産省はジャガイモがんしゅ病菌、コロラドハムシ、ジャガイモシストセンチュウ、ジャガイモシロシストセンチュウなどを輸入禁止制度に関係する重要な検疫有害動植物として扱っている。

特にシロシストセンチュウはシストの状態で土壌中に長期間生存できる。

北海道では2015年に初確認され、2026年現在も一部地域で作付け禁止や植物・土壌の移動制限を伴う緊急防除が続いている。

 

ただし、「輸入すれば必ず病害虫が広がり、日本農業が壊滅する」という主張にも科学的根拠はない。

だからこそ重要なのが、病害虫リスクアナリシスによって侵入・定着・被害の可能性を評価し、そのリスクを許容できる水準まで下げられる検疫条件を設定できるかである。

 

もう一つは経済的影響だ。輸入量が増えれば、外食・加工業界には原料調達先の多様化や価格安定という利点が期待できる。

一方、安価な輸入品が業務用や加工用市場に広がれば、国産ジャガイモの価格形成を通じて北海道などの農家所得を圧迫する可能性がある。

豊作時に輸入量まで増えれば、需給緩和が価格下落を加速させる恐れもある。

 

さらに問題はジャガイモだけにとどまらない。

輸入条件緩和が通商交渉によって進む前例になれば、今後、果物、野菜など他の農産物でも市場開放要求と植物検疫の科学的判断をどう両立するかが問われる。

 

食料安全保障とは、単に海外から安く買えることではない。

国内で継続して生産できる農地、人材、技術、種苗、流通網を維持しながら、必要に応じて輸入も活用する「複線化」が重要だ。

 

ISO思考で見れば、輸入を「賛成か反対か」の二択にするのではなく、病害虫、価格、生産基盤、消費者利益というリスクと機会を洗い出し、管理策の有効性を継続的に確認することが本質である。

安いジャガイモを手に入れる利益と、国内生産基盤を失うリスク。

その両方を長期的な視点で評価することこそ、今回の「解禁」問題が日本の農政に突き付けている課題ではないだろうか。
 

 

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