2026年8月11日付の朝日新聞が、

『富士山の死者27人、なぜ男性ばかり? 救急救命医「確かに不思議」』

と題した見出し記事を報じていました。

 

以下に、この記事を要約し、富士山における死者が男性ばかりなのか、また、そのメカニズムについて、考察しました。

 

《記事の要約》

<富士山の遭難死、なぜ男性ばかり? 23年以降27人全員>

 

富士山で遭難して死亡する登山者が、男性に大きく偏っている。

山梨、静岡両県のまとめでは、2023~25年の3年間に死亡した24人は全員男性。2026年も山開きから8月7日までに3人が死亡し、いずれも男性だった。

 

女性登山者も少なくない中、なぜ死者だけが男性に偏るのか。

富士山八合目の救護所で長年活動してきた山梨県立中央病院の岩瀬史明・高度救命救急センター統括部長も「確かに不思議」と話す。

 

ただし、救護所を受診する登山者そのものは男女ほぼ半々だという。

2024年には20代女性が山頂近くで重度の高山病から心停止となったものの、山小屋に設置されていたAEDによって心拍が再開し、救命された例もある。

 

男性死亡者には中高年が多い。

背景として考えられるのが、心臓疾患やCOPDなどの持病、喫煙歴、加齢による心肺機能の低下だ。

富士山頂は3776メートル。高所では酸素分圧が低下し、心臓や肺への負担が大きくなる。

 

さらに問題なのが、睡眠不足のまま遠方から移動し、五合目で十分に高度順応せず登山を始める「無理な登山」だ。

体調を崩して休んでも、「せっかく来たから」と再び登り始める人もいるという。

 

ただ、現時点で「男性だから死亡しやすい」と断定できる統計的根拠はない。

男女別の登山者数、年齢構成、単独登山率などの分母を含めた分析が必要だ。

注目すべきなのは性別そのものより、体力への過信、睡眠不足、持病、無理な日程、そして引き返す判断の遅れである。

(要約、ここまで)

 

《筆者の考察》

<「俺はまだ大丈夫」が危ない? 富士山の死者が男性に偏る理由を考える>

 

2023年以降、富士山で死亡した27人が全員男性という数字は極めて印象的だ。

しかし、ここから直ちに「男性は富士山で死亡しやすい」と結論づけるのは早い。

男女別・年代別の登山者数など分母が分からなければ、本当の死亡率は比較できないからだ。

 

医学的にも、高山病について「男性であること」自体が主要な危険因子とはされていない。

むしろ重要なのは、標高を上げる速さ、過去の高山病歴、運動強度などだ。

標高約3050メートルでは吸い込む酸素の分圧は海面の約69%まで低下する。

3776メートルの富士山では、登るだけで人体は低酸素というストレスを受ける。

 

では、なぜ男性に偏ったのか。

一つの仮説は「生理的リスク」と「行動上のリスク」が重なったことだ。

 

第一に中高年男性では、心血管疾患や喫煙に伴う肺疾患など、本人が自覚していない潜在的リスクを抱えている可能性がある。

高所では低酸素に加えて運動による酸素需要が増し、心拍数や心血管系への負荷も強まる。

高所での運動が、まれながら急性冠症候群や突然死を誘発する可能性も医学文献で指摘されている。

 

第二が「過信」である。

「昔は運動部だった」「まだ体力はある」「ここまで来たのだから頂上まで」という心理が、撤退判断を遅らせる可能性はある。

ただし、これは今回の27人について証明された原因ではなく、あくまで行動面から考えられる仮説だ。

 

第三は睡眠不足と弾丸登山だ。

遠方から夜通し移動し、五合目に着いて間もなく登ると、疲労に低酸素が重なる。

急速に高度を上げた直後の強い運動は急性高山病の発症を増やすことが報告されている。

 

さらに見落とせないのが「下山」だ。登頂はゴールではない。

疲労が蓄積した状態で長い下りが続けば、転倒や滑落の危険も増す。

2026年7月には65歳男性が富士宮ルートで倒れ、頭部から出血した状態で救助された後に死亡しており、警察は転倒した可能性を調べている。

 

対策は単純である。前日は十分眠る。可能なら五合目で体を高度に慣らす。

心臓や肺に持病があれば事前に医師へ相談する。頭痛、吐き気、ふらつき、息苦しさが出たら「休んで再挑戦」ではなく下山を選ぶ。

特に安静時の息苦しさや意識状態の変化は重い高山病の警告徴候である。

 

富士登山で最も危険なのは、弱さではなく「自分だけは大丈夫」という思い込みなのかもしれない。

山では、撤退は失敗ではない。

状況を確認し、リスクを評価し、必要なら計画を変更する。その判断こそ、ISO思考にも通じる最も重要な安全管理である。
 

 

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